小腸イレウス
- 小腸イレウスは閉塞機転が存在する機械性イレウス(90%)と、存在しない麻痺性イレウス(10%)に大きく分かれる。
- 機械性イレウスはさらに血行障害のない単純イレウスと、血行障害のある複雑(絞扼性)イレウスに分かれる。
機械性イレウス(閉塞)
機械性イレウスの原因
- 癒着(最多):術後に多い。
- 異物:胆石、腸石、食餌、宿便による。
- 炎症:腸炎、膿瘍など
- 虚血:ヘルニア嵌頓、腸捻転、腸重積など
- 間欠的な腹痛、悪心、嘔吐、排ガス・排便停止、腹部膨満といった症状で発症する。
- 腹部聴診で金属音(metallic sound)を聴取する。
- 立位単純レントゲンにて、多数の腸管ガスおよびniveau像を認める。
- 治療は9割は内科的治療で治療する。イレウス管による減圧。輸液、抗生物質。
機械性イレウスの画像診断
- まずイレウスを認めたとき、原因として癒着(最も多い)の可能性を考える。
- 癒着の80%以上が術後癒着、次いで15%程度が炎症によるもの。
- 腹部の瘢痕下や腸の術創部、炎症病巣などに認められ、回腸に多く存在する。
- 他の閉塞起点を伴わない腸管のcaliber changeが主たるCT所見。
- 癒着性索状物によりclosed loop obstructionを生じ、絞扼を来すこともある。
- 癒着性索状物は腸間膜間に付着する索状物であり、腸閉塞の原因で頻度の高いものの1つである。ただし、癒着性索状物はCTで見えないことが多く、診断の確定は難しい。
- 腹部の瘢痕下や腸の術創部、炎症病巣などに認められ、回腸に多く存在する。
- 腹部手術歴のない患者にも索状物による閉塞腸管ループを生じることあり注意を要する。
- 他、ヘルニア(2番目に多い)、腸重積、炎症(腫瘍、膿瘍など)、異物、食餌などが原因となる。ヘルニアには内ヘルニア、外ヘルニアがある。大半は外ヘルニアである。
- 腫瘤自体以外による腸管内腔の狭小化・閉塞以外にも随伴する線維化による腸管内腔の狭小化により腸閉塞を来しうる。最も頻度が高いのは癌性腹膜炎で、CTでは多発する拡張-非拡張腸管移行部と腸管壁の結節(播種巣)が描出される。
- 食餌性イレウスの原因はコンニャク、餅、昆布が多く、餅や昆布はCTで高吸収となる。
- 緊急手術になることはない。絞扼(捻転による虚血)、穿孔を伴う場合は直ちに手術。
麻痺性イレウス
麻痺性イレウスの原因
- 腹膜炎:膵炎、胆嚢炎、憩室炎、虫垂炎などによる。
- 腹腔内出血
- 薬剤性:麻薬、抗精神薬など。
- 代謝性:低K血症、尿毒症など。
- 神経性:術直後、脊髄病変など。
- 偽性腸閉塞症
- 聴診にて腸の蠕動音が消失する。
- 原疾患の治療が基本。イレウスに対しては単純性イレウスどうように保存的に治療する。
腸管異物によるイレウス
- 外来性異物
- 食餌性イレウス(food ileus)
- 入れ歯など異物。
*小児、高齢者、精神疾患を有する患者などの偶発的事故による。複数個の異物を飲み込んでいる場合もあり。 - 胆石イレウス(gallstone ileus)
- 腸結石症(enterolithiasis)
- 宿便(coprostasis)
※爪楊枝など木片の誤飲物は、誤飲後、2-3日で水分の吸収に伴いCT値が上昇すると報告されている。より高吸収になり明瞭となる。
症例 80歳代女性 異物誤飲(PTP包装シート)による小腸イレウス
胆石イレウス
・高齢女性に多い。
・閉塞部位に胆石が認められれば診断は容易だが、石灰化のないコレステロール結石は診断に苦慮することもある。
・瘻孔を形成する部位は、胆嚢-十二指腸が60%程度で、ほかには総胆管-十二指腸、胆嚢-大腸などがある。
・イレウスに加えて、虚脱した胆嚢や胆嚢内のガス、胆管気腫を認めた場合には、本疾患を疑い閉塞部の結石を探すべきである。
宿便によるイレウス
・高齢者や衰弱患者が弛緩性便秘を米し、蓄積した糞便が硬く増大し、腸管を閉塞することがある。
・便塊はガスを含んだやや高濃度の腫瘤としてみられることが多い。
参考)イレウス解除の判定
- 排ガス、排便の出現
- 腹部X線で小腸ガスの改善&大腸ガスの増加
- イレウスチューブからの吸引の減少 (200ml/day程度)