先に結論:基靭帯・仙骨子宮靭帯のMRI解剖
- 基靭帯(子宮頸部の両側の支持組織)は子宮頸部の外側の血管を含む脂肪組織として、仙骨子宮靭帯は子宮頸部の後ろから仙骨へ向かう帯状の構造として見えます
- 基靭帯は冠状断、仙骨子宮靭帯は横断像で追いやすく、直接見える血管と推定する支持組織を分けて考えるのがポイントです
- 子宮頸癌の傍組織浸潤や深部子宮内膜症の評価に重要な解剖です
- 基靭帯は横子宮頸靭帯・Mackenrodt靭帯とも呼ばれ、仙骨子宮靭帯と子宮仙骨靭帯は同じ構造です
骨盤MRIで基靱帯と仙骨子宮靱帯を探すときは、基靱帯は子宮頸部外側の血管を含む支持組織、深部仙骨子宮靱帯は子宮頸部・上部腟の後外側から後方へ向かう帯状構造として捉えると位置関係を理解しやすくなります。
ただし、どちらも膝の靱帯のような明瞭な1本のひもではありません。Chenらの正常女性のMRI研究をもとに、実際の原図と独自模式図を対応させて解説します。ここでいう頸部は子宮頸部です。
基靱帯と仙骨子宮靱帯の基本解剖
基靱帯(cardinal ligament)と仙骨子宮靱帯(uterosacral ligament)は、子宮頸部・上部腟を骨盤壁につなぐ支持構造です。腟頂部を支えるLevel I supportの重要な要素ですが、骨盤底筋などと協働するため、両靱帯だけですべての支持を担うわけではありません。
組織には動静脈・静脈叢、神経、リンパ管、疎性結合組織、平滑筋、脂肪などが含まれます。整然と並んだ密な線維からなる骨格系靱帯とは異なる、腸間膜に似た「内臓の靱帯」です。特に基靱帯は血管周囲の支持組織という性格が強く、独立した線維性の帯として切り分けられるものではありません。[1,2]
子宮を支える靱帯の一覧
| 名前 | 別名 | どこからどこへ | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 基靱帯 | 横子宮頸靱帯、Mackenrodt靱帯、cardinal ligament | 内腸骨動脈の起始部の周囲から子宮頸部・腟へ | 血管を包む鞘のような組織で、頭側の血管部分と尾側の神経部分に分けられる。はっきりした結合組織の帯はない |
| 仙骨子宮靱帯 | 子宮仙骨靱帯、uterosacral ligament | S2〜S4の高さ付近から子宮頸部の後縁・腟上部の後壁へ | 表層と深部があり、深部には自律神経線維が多い |
| 円靱帯 | 子宮円索、round ligament | 子宮底の外側から鼠径管を通って大陰唇へ | 子宮を前に傾けた位置に保つひも状の構造 |
| 広間膜 | broad ligament | 子宮の両側から骨盤側壁へ | 子宮の左右を覆う腹膜のひだ。基靱帯はその基部の組織として記載されてきた |
基靱帯・仙骨子宮靱帯の記載はRamanahらの文献レビュー(2012)によります。この構造には8つの呼び名が提案されてきたとされ、文献ごとに用語が異なる点に注意が必要です。[2]
基靱帯・子宮傍組織・頸部傍組織は同じ?
用語の範囲は解剖学、画像診断、婦人科手術で必ずしも一致しません。画像診断で子宮傍組織(parametrium)を広く用いる場合、子宮体部だけでなく頸部周囲の組織も含むことがあります。
一方、尿管を境に、子宮動脈・表在性の子宮静脈を含む頭側の組織をparametrium、深子宮静脈や神経を含む尾側の組織を頸部傍組織(paracervix)と区別する用法があります。本記事の「基靱帯」はChenらがMRIで設定した血管中心の支持組織を指し、parametrium全体と無条件に同義にはしません。[2–4]
Figure 1:深部仙骨子宮靱帯はMRI横断像でどこに見える?
原著Figure 1を開く:実際のMRI横断像と図説(PMC)

原著Figure 1は、左上から尾側→頭側へ5 mm間隔で配列した横断像です。撮像条件はスライス厚4 mm、ギャップ1 mmであり、「5 mm厚のスライス」という意味ではありません。各画像の数値は恥骨弓靱帯を基準とする位置です。Bは膀胱、Vagは腟、Cxは子宮頸部、Rは直腸を示します。
まず前方の膀胱、その後方の子宮頸部または上部腟、さらに後方の直腸を確認します。深部仙骨子宮靱帯は、子宮頸部の後外側・外側腟円蓋付近から直腸の外側を通り、後方の骨盤壁へ向かう構造です。直腸前面の正中を単純に直線で結ぶ構造として塗らないことが大切です。
破線の輪郭は、著者が深部仙骨子宮靱帯として追跡した領域を示します。赤点は腟・子宮頸部側と、仙棘靱帯・尾骨筋側に設定した付着部の中心です。これらは3D解析のためのランドマークであり、赤点そのものが別の臓器や血管を示すわけではありません。
後方では仙棘靱帯・尾骨筋の上を覆うように連続する位置関係が重要です。「仙骨子宮靱帯」という名前から、すべての症例で仙骨に直接付着する明瞭な索がMRIで見えると考えないようにします。健常女性のMRIを解析した別の研究でも、仙骨子宮靱帯は解析できた70例中61例(87%)で同定でき、骨盤側の付着点の82%は仙棘靱帯・尾骨筋複合体の上にあり、仙骨上は7%にとどまりました。名前から想像されるよりも付着部のばらつきが大きいことを示す結果です。[6] 上の模式図は後方の関係を投影しており、すべての構造が同一スライスに出現する図ではありません。[1]
表層成分と深部成分の違い
仙骨子宮靱帯には表層の線維性成分と、腹膜下の深部成分があります。深部には神経・血管などを含む組織があり、Chenらの研究でMRI上追跡したのはこちらです。腹腔側から子宮を牽引したときに見える薄い表層成分は、部分容積効果などのためMRIで一貫して追跡するのが難しく、原著の測定長を靱帯全体の長さと読み替えることはできません。[1,2]
Figure 2:基靱帯はMRI冠状断でどこに見える?
原著Figure 2を開く:実際のMRI冠状断と図説(PMC)

Figure 2も5 mm間隔の連続画像ですが、こちらは冠状断です。中央の子宮頸部・上部腟から外側の骨盤側壁へ広がる血管と周囲組織に注目します。
著者は、内腸骨血管の前方枝を軸とする網目状の組織として基靱帯を同定し、骨盤側の基準点を仙腸関節付近の大坐骨孔上縁に設定しています。輪郭線は解析対象とした基靱帯領域、赤点は骨盤側の起始と子宮頸部・腟側の付着部のランドマークです。[1]
子宮動静脈はこの支持組織を理解する手がかりですが、基靱帯=子宮動脈1本ではありません。静脈叢、結合組織、神経、リンパ管などを含む立体的な網目として捉えます。MRIで個々の神経・リンパ管をすべて直接見分けられる、という意味でもありません。[1,2]
基靱帯は子宮頸部から水平に外側へ伸びるだけでなく、骨盤側の頭側へ広がる成分が大きい構造です。冠状断では左右と頭尾方向を同時に見られるため、この走行を理解するのに適しています。ただし、湾曲した組織全体が1枚の冠状断だけに収まるとは限りません。
図説の「ventral to caudal」について
PMC掲載の原著図説には「ventral to caudal」と記載されています。ventralは前方、caudalは尾側で、異なる軸の用語が組み合わされています。通常、冠状断の連続スライスの位置は前後方向に変化するため、配列方向の説明としては不自然です。
「ventral to dorsal」の誤記である可能性はありますが、原著本文・図・図説からは訂正を確定できません。本記事では原文を勝手に置き換えず、5 mm間隔の連続冠状断として説明します。図説では左上が−0.5 cm、0の画像が子宮頸部の位置とされています。[1]
3D解析でわかる両靱帯の走行の違い
原著は正常な骨盤臓器支持を有する無症状女性20人(平均年齢58±10歳)の仰臥位・安静時MRIを解析した予備的研究です。角度は起始・付着部の中心を結ぶ作用線と、撮像台に平行な頭尾方向の体軸との関係を示します。MRI上の曲がった帯の局所角度や、横断像だけで測った角度ではありません。
| 測定項目 | 基靱帯 | 深部仙骨子宮靱帯 |
|---|---|---|
| 体軸との角度 | 18.1±6.8° | 92.5±13.5° |
| 近似曲線長(左) | 55±12 mm | 24±9 mm |
| 近似曲線長(右) | 58±10 mm | 31±10 mm |
| 直線距離(左) | 47±7 mm | 23±9 mm |
| 直線距離(右) | 48±10 mm | 30±7 mm |
基靱帯の作用線は体軸に比較的平行で、深部仙骨子宮靱帯は後方へ向かいます。曲線長と直線距離は別の測定値です。これらは研究対象と解析方法に依存する値で、個々の患者の正常・異常を判定する基準値や、手術で牽引した際の長さとしては使えません。[1]
MRI横断像では実際にどこを色付けする?
基靱帯:直接見える血管と、推定する支持組織を分ける
子宮頸部を同定したうえで、その外側にある子宮動静脈などの血管と周囲の支持組織を確認します。冠状断と連続スライスを併用し、骨盤側壁との連続性を確かめます。
直接確認できるものは、撮像条件に応じて描出される血管、子宮頸部・腟壁、脂肪内の軟部組織などです。基靱帯として着色する広がりは、これらの位置関係と解剖学的な走行から設定する概念的な領域です。輪郭を明瞭な靱帯の実測境界として扱ったり、頸部外側の脂肪をすべて一括で塗ったりしないようにします。画像診断文献では基靱帯を独立して直接描出するよりも、子宮血管の位置から推定する説明もあります。[4]
仙骨子宮靱帯:追跡できる帯状組織を中心にする
子宮頸部の後外側、または上部腟の後外側から、直腸外側を通る後方への軟部組織の連続を探します。1枚だけで決めず、隣接スライスを往復して起点と後方への連続性を確認し、血管や直腸壁そのものを取り違えないようにします。
直接追跡できる帯状構造を着色の中心とし、見えなくなった部分は「解剖学的に予想される走行」として別に扱います。見えない部分を仙骨までつないで、全長を同定できたと記載しないことが大切です。概念的な着色には淡色や破線を使い、MRIで確認できた範囲と区別します。
本記事の模式図には実患者のMRI同定結果は含まれていません。正常構造でも描出は撮像面、分解能、臓器の位置などで変わります。見えにくいことだけで欠損や異常と判断する図ではありません。
読影のポイント
- 基靱帯は血管中心の網目状支持組織。冠状断で頭尾方向の広がりを確認する。
- 深部仙骨子宮靱帯は頸部・上部腟の後外側から後方へ。横断像で直腸外側との関係を追う。
- 原著の輪郭と赤点は研究用の追跡領域・ランドマーク。厳密な組織境界とは区別する。
- MRIで直接見えた構造と、解剖学的に推定した範囲を分けて記載する。
関連:深部子宮内膜症の画像診断 / 正常卵巣のMRI画像診断
子宮の靱帯でよくある疑問(Q&A)
Q. 仙骨子宮靱帯と子宮仙骨靱帯は違うものですか?
A. 同じものです。英語のuterosacral ligament(sacrouterine ligamentとも)の訳し方の違いで、仙骨と子宮頸部の後ろをつなぐ支持組織を指します。[2]
Q. 基靱帯と子宮動脈はどういう関係ですか?
A. 基靱帯は内腸骨動脈から分かれる血管を包む組織で、子宮動脈はその頭側の血管部分を通ります。尿管は子宮動脈の下をくぐる所で基靱帯の中を通るとされ、子宮頸癌の手術や傍組織浸潤の評価で大切な位置関係です。[2]
Q. 子宮傍組織(parametrium)とは何ですか?
A. 子宮の両側にある血管・リンパ管・神経・結合組織を含む領域です。範囲の決め方は解剖学・画像診断・婦人科手術で異なり、尿管を境に頭側をparametrium、尾側を頸部傍組織(paracervix)と分ける用法もあります(上の「基靱帯・子宮傍組織・頸部傍組織は同じ?」を参照)。[3,4]
参考文献・画像の出典
- Chen L, Ramanah R, Hsu Y, Ashton-Miller JA, DeLancey JOL. Cardinal and deep uterosacral ligament lines of action: MRI based 3D technique development and preliminary findings in normal women. Int Urogynecol J. 2013;24:37–45. doi:10.1007/s00192-012-1801-4. 原著全文(PMC)(Figure 1・2、Methods、Results、Table 1、Discussionを参照)。
- Ramanah R, Berger MB, Parratte BM, DeLancey JOL. Anatomy and histology of apical support: a literature review concerning cardinal and uterosacral ligaments. Int Urogynecol J. 2012;23:1483–1494. 全文(PMC).
- Ultrasound of the Uterosacral Ligament, Parametrium, and Paracervix: Disagreement in Terminology between Imaging Anatomy and Modern Gynecologic Surgery. J Clin Med. 2021;10:437(用語の区別を参照)。
- MRI anatomy of parametrial extension to better identify local pathways of disease spread in cervical cancer.(MRIでの同定と推定の区別を参照)。
- DeLancey JO. Anatomic aspects of vaginal eversion after hysterectomy. Am J Obstet Gynecol. 1992;166(6 Pt 1):1717-1724. PubMed
- Umek WH, Morgan DM, Ashton-Miller JA, et al. Quantitative analysis of uterosacral ligament origin and insertion points by magnetic resonance imaging. Obstet Gynecol. 2004;103(3):447-451. PubMed
画像について:原著には© The International Urogynecological Association 2012の表示があり、転載・加工を許可するライセンスを確認できなかったため、原図はアップロードせずPMCのFigureページへのリンクを設置しました。掲載した2点は位置関係の理解を助ける独自模式図であり、着色は概念的なものです。
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