腹部CTを読影していると、胃内や大腸内に金属様の高吸収人工物を認めることがあります。

一見すると、誤飲異物、薬剤、坐薬、手術クリップ、義歯、金属片などを考えたくなるかもしれません。

しかし、直近で上部消化管内視鏡や大腸内視鏡、止血処置、ポリープ切除、EMR、ESDなどが行われている場合には、内視鏡クリップを鑑別に入れることが重要です。

今回は、CTで消化管内に高吸収人工物を見たときに知っておきたい、内視鏡クリップのCT所見、使われる場面、鑑別診断、MRI前の注意点について整理します。

内視鏡クリップとは?

内視鏡クリップとは、消化管内視鏡を用いて消化管粘膜や壁欠損部を機械的に把持・閉鎖するためのデバイスです。

英語では endoscopic clip、hemoclip、through-the-scope clip などと呼ばれます。

消化管出血の止血、ポリープ切除後やEMR後の出血予防、ESD後の潰瘍底閉鎖、穿孔部閉鎖、マーキングなど、さまざまな目的で使用されます。

CTでは、消化管内腔または消化管壁近傍に金属様の高吸収構造として描出されます。

内視鏡クリップはどこに留置されるのか

内視鏡クリップは、特定の部位だけに留置されるものではありません。

上部消化管内視鏡であれば、食道、胃、十二指腸に留置されることがあります。下部消化管内視鏡であれば、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸などに留置されることがあります。

内視鏡クリップが使われる主な場面

内視鏡クリップは、以下のような場面で使用されます。

  • 胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化管出血に対する止血
  • 大腸憩室出血など下部消化管出血に対する止血
  • 大腸ポリープ切除後の出血予防
  • EMR後の粘膜欠損部閉鎖
  • ESD後の潰瘍底や壁欠損部の処置
  • 内視鏡治療中の小穿孔や深い壁損傷の閉鎖
  • 病変位置のマーキング

そのため、CTで金属様高吸収を見たときは、直近の内視鏡歴だけでなく、過去の消化管出血、ポリープ切除、EMR、ESD、止血処置などの病歴を確認することが重要です。

CTでの内視鏡クリップの見え方

CTで内視鏡クリップは、消化管内腔または消化管壁に接する金属様高吸収構造として描出されます。

典型的には以下のような見え方をします。

  • 線状、V字状、U字状、Y字状の高吸収構造
  • 複数本が重なると複雑な金属異物のように見える
  • 消化管壁に接していることが多い
  • 軟部条件では形状が分かりにくいことがある
  • 骨条件や広いウインドウ幅では金属様構造として認識しやすい
  • 内視鏡処置部位と一致すれば診断しやすい

内視鏡クリップは小さなデバイスですが、CTでは非常に高吸収に見えるため、見慣れていないと「異物」と誤認されることがあります。

特に複数のクリップが近接している場合、1つの複雑な異物のように見えることがあります。

症例 70歳代女性

S状結腸に高吸収な異物を疑う所見を認めています。

濃度を変えてみるとやはり人工物のようで、4つの線から構成されているように見えます。

これは何でしょうか?

実はこの方、便秘の精査で大腸内視鏡(CS)が施行されています。

S状結腸に腺腫性ポリープが指摘され、EMR(内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術)が施行されており、この高吸収の正体は内視鏡クリップであることがわかります。

胃内の高吸収人工物として見える内視鏡クリップ

胃内に金属様高吸収人工物を認めた場合、内視鏡クリップは重要な鑑別です。

胃潰瘍出血、胃腫瘍に対する生検後出血、ESD後潰瘍、ポリープ切除後、胃内病変のマーキングなどで、胃内にクリップが留置されることがあります。

胃内クリップを疑うポイントは以下です。

  • 胃壁に接して小さな金属様高吸収を認める
  • 複数の線状高吸収が近接している
  • 胃潰瘍、胃腫瘍、ESD後などの病歴がある
  • 胃壁肥厚や潰瘍性病変の近傍に位置する
  • 誤飲異物のように胃内腔中央を自由に移動している印象ではない

胃内の高吸収構造では、薬剤、食物残渣、誤飲異物、内視鏡クリップなどの鑑別があります。

形状だけで判断せず、胃壁との関係、内視鏡治療歴、周囲所見を確認することが大切です。

大腸内の高吸収人工物として見える内視鏡クリップ

大腸内に高吸収人工物を認めた場合も、内視鏡クリップを鑑別に入れます。

大腸内クリップが見られる代表的な状況は以下です。

  • 大腸ポリープ切除後
  • 大腸EMR後
  • 大腸ESD後
  • 大腸憩室出血に対する止血後
  • 大腸粘膜損傷や小穿孔の閉鎖後
  • 病変マーキング後

大腸内クリップでは、腸管壁に接して金属様高吸収を示すことが多く、複数本がまとめて留置されていることがあります。

病歴が不明な場合、誤飲異物、経肛門的異物、坐薬、薬剤、術後クリップなどと紛らわしくなるため注意が必要です。

消化管内高吸収人工物の鑑別診断

胃内や大腸内に高吸収構造を認めた場合、内視鏡クリップ以外にも複数の鑑別があります。

1. 内視鏡クリップ

消化管壁に接する線状・V字状・U字状・Y字状の金属様高吸収として見えます。内視鏡治療歴が最も重要な手がかりです。

2. 誤飲異物

義歯、魚骨、PTP包装、金属片、爪楊枝などが消化管内に見えることがあります。穿孔、周囲脂肪織濃度上昇、膿瘍、遊離ガスを伴わないか確認します。

3. 経肛門的異物

直腸やS状結腸では、経肛門的に挿入された異物も鑑別になります。形状、サイズ、位置、腸管損傷の有無を確認します。

4. 薬剤・錠剤

内服薬や坐薬が高吸収として見えることがあります。錠剤は点状・円形・楕円形のことが多く、金属クリップのような複数の線状構造とは異なる場合があります。

5. 坐薬

直腸内に高吸収または軟部濃度の異物様構造として見えることがあります。撮影直前の坐薬使用歴が重要です。

6. 手術クリップ・縫合材料

消化管内ではなく、腸管外の術後部位にあることが多いです。腸管内腔にあるのか、腸管外にあるのかを確認します。

7. 尿路結石・静脈石

骨盤内高吸収として紛らわしいことがあります。ただし、尿管走行や静脈周囲に位置し、腸管内腔とは連続しません。水腎症や尿管拡張の有無も確認します。

内視鏡クリップと誤飲異物を見分けるポイント

内視鏡クリップと誤飲異物は、どちらもCTで高吸収構造として見えるため、病歴がないと紛らわしいことがあります。

見分けるためには、以下の点を確認します。

  • 直近に上部内視鏡、大腸内視鏡、止血処置、EMR、ESD、ポリープ切除があるか
  • 高吸収構造が消化管壁に接しているか
  • 複数の線状構造が一定の形でまとまっているか
  • 内視鏡治療部位と位置が一致するか
  • 消化管穿孔や周囲炎症所見がないか
  • 誤飲や経肛門的挿入を疑う病歴がないか

特に、内視鏡治療歴がレポート依頼情報に記載されていない場合、画像だけで異物と誤解されることがあります。

そのため、胃内や大腸内に金属様高吸収を見た場合は、「最近、内視鏡治療や止血処置が行われていないか」を確認することが重要です。

内視鏡クリップはいつまで残るのか

内視鏡クリップは、一般に永久留置を目的としたものではありません。

多くは時間経過とともに自然脱落し、便とともに排泄されます。

ただし、脱落までの期間は、クリップの種類、留置部位、把持された組織の状態、留置本数などにより異なります。

数日から数週間で脱落することが多い一方で、文献上は長期間残存する例も報告されています。

したがって、CTで消化管内にクリップを認めた場合、直近の内視鏡治療後であれば自然な所見として説明しやすいですが、処置から時間が経っていても完全には否定できません。

内視鏡クリップとMRIの注意点

CTで内視鏡クリップを認めた場合、MRI検査の可否が問題になることがあります。

現在使用されている多くの内視鏡クリップは、条件付きでMRI可能とされるものがあります。一方で、製品や時期によってMR適合性が異なるため、画像だけで一律に判断するのは危険です。

MRI前には、以下を確認します。

  • 使用されたクリップの製品名
  • 留置された時期
  • 腹部単純X線やCTで残存しているか
  • 添付文書やMR適合性情報
  • 施設のMRI安全管理基準

重要なのは、「内視鏡クリップがあるから一律にMRI禁忌」と決めつけないことです。

一方で、製品名が不明な場合や古いクリップが疑われる場合には、施設基準に従って慎重に確認する必要があります。

出典

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