腹部CTを読影していると、胃内や腸管内に高吸収域を認めることがあります。
一見すると消化管出血や異物を疑う所見ですが、実際には内服薬がCTで高吸収として描出されているだけのこともあります。
本記事では、CTで見える内服薬の特徴と、胃内高吸収を出血・異物と誤らないためのポイントをまとめます。
先に結論:CTで見える内服薬と胃の中の白い影
- 錠剤やカプセルはCTで白く(高吸収に)写ることがあり、胃の底にたまる・点状・錠剤の形に見えます。大量服薬(急性薬物中毒)の手がかりになることもあります
- 胃や腸の中の白い影は、内服薬のほか、消化管出血・経口造影剤の残り・食べ物・異物(PTPシートなど)でも見られます。単純CTの段階からある白さは薬や異物、造影後に新たに出てきて広がる白さは活動性出血を考えます
- 判断には服薬歴・症状(吐血・黒い便)と、単純CTと造影CTの比較が大切です
CTの「高吸収域」とは?
高吸収域とは、CTで周囲よりCT値が高く、白く写る部分のことです。骨や石灰化、金属、造影剤、固まった血液などが高吸収域として見えます。反対に、水や脂肪、空気のように黒っぽく写る部分は低吸収域と呼びます。胃や腸の中に高吸収域があるときは、次のような原因を考えます。
| 原因 | 単純CTでの見え方 | 造影CTでの変化 |
|---|---|---|
| 内服薬 | 点状・粒状・錠剤の形、胃の底に沈む | 造影で新たに増えない |
| 消化管出血(血のかたまり) | 内容物がやや白く見えることがある | 活動性出血では造影剤が腸管内に漏れ出し、時間とともに広がる |
| 経口造影剤・バリウムの残り | 腸管内に広く強い高吸収 | 変わらない |
| 異物(PTPシート・魚骨・金属) | 特徴的な形、壁への刺入 | 変わらない(周囲の炎症は造影される) |
CTで内服薬は見えるのか?
結論からいうと、内服薬はCTで見えることがある。
錠剤やカプセルは水分が少なく、圧縮されているため、胃液や腸液より高吸収に描出されることがある。特に内服直後や大量内服時には、胃内に薬剤が残存し、点状・粒状・沈殿状の高吸収域として認められることがある。
急性薬物中毒では、胃内底部に沈殿する高吸収域が、過量服薬を示唆する所見として報告されている。
内服薬による胃内高吸収の見え方
内服薬による高吸収は、以下のようなパターンで認められる。
- 胃底部に沈殿する高吸収域
- 胃内容物に混在する点状・粒状高吸収
- 錠剤状・円形の高吸収構造
- 腸管内に移動した小結節状高吸収
薬剤の種類、内服量、内服から撮影までの時間、胃液内での溶解性によって、CTでの見え方は変化する。
胃内高吸収を見たときの鑑別
胃内・腸管内の高吸収域を見た場合、以下の鑑別を考える。
単純CTで胃内に高吸収域を認めるだけでは、内服薬、出血、異物の鑑別が難しいことがある。形状、分布、造影相での変化、臨床症状、内服歴を合わせて判断する必要がある。
消化管出血との鑑別
胃内高吸収を見たときに重要なのが、消化管出血との鑑別である。
出血では、単純CTで胃内や腸管内に高吸収内容物を認めることがある。また、造影CTでは活動性出血が造影剤の血管外漏出として描出される。
一方、内服薬による高吸収は、錠剤状・点状・沈殿状に見えることが多く、造影相で新たに増強されるわけではない。
特に造影CTでは、単純相から存在する薬剤由来の高吸収を、活動性出血による造影剤漏出と誤認しないことが重要である。消化管出血を疑うCT angiographyでは、薬剤による腸管内の高吸収が急性出血と誤認されるだけでなく、活動性出血による造影剤の漏出を覆い隠してしまうこともある。
異物との鑑別
錠剤が形を保ったまま胃内や腸管内に残っている場合、異物と誤認されることがある。
単なる内服薬であれば、多くは胃内腔・腸管内腔に存在し、周囲炎症や穿孔所見を伴わない。
一方、魚骨、PTPシート、金属片などの異物では、壁への刺入、周囲脂肪織濃度上昇、遊離ガス、膿瘍形成などを伴うことがある。
急性薬物中毒での注意点
原因不明の意識障害患者では、急性薬物中毒が鑑別に入る。
過量服薬例では、単純CTで胃内に100HUを超える高吸収域を認めることがあり、特に胃底部の沈殿状高吸収は過量服薬を示唆する所見とされている。胃洗浄を受けていない過量服薬11例では全例でこの所見があり(対照群は19.7%)、胃底部の高吸収の沈殿による過量服薬の特異度は98.5%だった(Yanagawa 2011)。
ただし、胃内高吸収を認めないからといって薬物中毒を否定することはできない。薬剤がすでに溶解している場合や、胃から腸管へ移動している場合には、CTで明瞭に見えないこともある。
透析・高カリウム血症の薬で見える高吸収(炭酸ランタン・カリウム吸着薬)
- 炭酸ランタン(リン吸着薬):慢性腎臓病・透析の患者で使う炭酸ランタンは、X線・CTで非常に白く写ります。系統的レビュー(33文献)では、写った場所は腸管が73%、胃が21%、食道などの上部の通り道が6%で、腸管では多数の散らばった粒状、食道などでは丸い1個の異物のように見えました。造影剤の残りや異物と誤認されることが多く、不要な検査につながっていました(Kampmann 2022)。食道の異物と間違えられた報告もあります(Lewis 2025)。透析患者の消化管の強い高吸収を見たら、まず服薬歴を確かめます。
- カリウム吸着薬:高カリウム血症に使うジルコニウムシクロケイ酸ナトリウムはX線で写る薬で、胃壁に貼りついて11日間胃内に残った例が報告されています(Yoshinaga 2025)。炭酸ランタンと一緒に飲んでいて、腸管内容が広く白く写った例もあります(Hudowenz 2025)。
- 陽イオン交換樹脂の合併症:ポリスチレンスルホン酸ナトリウムやカルシウムなどの陽イオン交換樹脂は、腸管壊死や穿孔の原因になることが報告されています(Goutorbe 2011, Piron 2018)。腸管内の高吸収とあわせて、腸管壁の造影不良や遊離ガスがないかも確認します。
読影時のチェックポイント
- 単純CTか造影CTか
- 単純相から高吸収域が存在するか
- 造影相で濃度上昇や形状変化があるか
- 胃底部に沈殿しているか
- 錠剤状・粒状・円形の形態を残しているか
- 吐血、下血、貧血などの臨床所見があるか
- 過量服薬や意識障害の可能性があるか
- 内服薬、経口造影剤、下剤、制酸薬の使用歴があるか
- 周囲炎症、穿孔、遊離ガスを伴うか
症例 70歳代女性 スクリーニング

胃内に楕円形の高吸収域を認めており、その周囲には淡い高吸収の分葉状構造を認めています。
出血や異物ではなく内服した錠剤およびその一部溶解している状態です。
症例 70歳代男性 スクリーニング

先ほどの症例よりも、錠剤の形がほぼそのまま残っていることがわかりますね。
こちらも内服薬が胃内に見えている状態です。
胃内高吸収・消化管出血のCTでよくある疑問(Q&A)
Q. 消化管出血は単純CTでわかりますか?
A. 胃や腸の中に血のかたまりがあると、単純CTでやや白く見えることがあります。ただし薬や食べ物でも似た見え方になるため、出血しているかどうか、どこから出ているかの判断には造影CT(CT angiography)が使われます。下部消化管出血では、CT angiographyが最初に行う検査の一つとして受け入れられています(Artigas 2013)。単純CTは、もともと白い薬や異物を造影剤の漏れと間違えないための比較に役立ちます。
Q. 胃の中が白く写っていると言われました。心配ですか?
A. 多くは飲んだ薬や食べ物、検査で使ったバリウムなどの残りです。吐血や黒い便、ふらつきなどがあるときは出血の可能性もあるため、早めに医療機関を受診してください。
出典
- Yanagawa Y, Nishi K, Imamura T, Sakamoto T. Usefulness of Computed Tomography in the Diagnosis of an Overdose. Acta Medica Okayama. 2011;65(1):33-39.
- 西紘一郎ほか. In vitroにおける胃内薬剤のCT値検討. 中毒研究. 2011;24:217-221.
- 柳川洋一ほか. 急性薬物中毒症例の単純CT上の特徴―胃内底部の高吸収域について―. 中毒研究. 2011;24:215-216.
- Sieron DA, et al. Computed tomography imaging for the characterisation of drugs with radiation density measurements and HU spectroscopy. Swiss Medical Weekly. 2018.
- Sin FNY, et al. Medications as causes of intraluminal hyperdensities: what radiologists need to know. Eur J Radiol. 2012;81(7):1652-1656.
- Sandgren K, et al. A Degrading Potassium Tablet Mimicking Active Gastric Bleeding in a Patient with Small Bowel Obstruction. Case Reports in Radiology. 2020.
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参考文献
- Yanagawa Y, Nishi K, Imamura T, et al. Usefulness of computed tomography in the diagnosis of an overdose. Acta Med Okayama. 2011;65(1):33-39. PubMed
- Sin FN, Tsang JP, Siu KL, et al. Medications as causes of intraluminal hyperdensities: what radiologists need to know. Eur J Radiol. 2012;81(7):1652-1656. PubMed
- Wells ML, Hansel SL, Bruining DH, et al. CT for Evaluation of Acute Gastrointestinal Bleeding. Radiographics. 2018;38(4):1089-1107. PubMed
- Artigas JM, Martí M, Soto JA, et al. Multidetector CT angiography for acute gastrointestinal bleeding: technique and findings. Radiographics. 2013;33(5):1453-70. PubMed
- Kampmann J, Hansen NP, Ørsted Schultz AN, et al. Lanthanum Carbonate Opacities-A Systematic Review. Diagnostics (Basel). 2022;12(2). PubMed
- Lewis KC, Long MD, Green EW. Radiopaque Medication Mimicking Esophageal Foreign Body: A Case of Lanthanum Carbonate Misidentification. Am J Gastroenterol. 2025;120(10):2232. PubMed
- Yoshinaga M, Adachi H, Choi K, et al. Prolonged Gastric Retention of Sodium Zirconium Cyclosilicate: A Case Report. Cureus. 2025;17(10):e95106. PubMed
- Hudowenz O, Stroeder J, Nitschke M. Radiopaque intestinal contents due to simultaneous ingestion of lanthanum carbonate and sodium zirconium cyclosilicate: a nephrology image. J Nephrol. 2025;38(5):1517-1518. PubMed
- Goutorbe P, Montcriol A, Lacroix G, et al. Intestinal Necrosis Associated with Orally Administered Calcium Polystyrene Sulfonate Without Sorbitol. Ann Pharmacother. 2011;45(2):e13. PubMed
- Piron L, Ramos J, Taourel P. Colonic perforation associated with sodium polystyrene sulfonate (Kayexalate) use. Diagn Interv Imaging. 2018;99(7-8):507-509. PubMed
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