顎骨骨髄炎は、顎骨に生じる炎症性病変の総称であり、感染を主体とするものと、薬剤や放射線などに関連した非感染性病変に大別されます。

臨床的には歯性感染、抜歯後感染、外傷、放射線治療歴、骨吸収抑制薬やデノスマブ投与歴などの情報が極めて重要であり、画像診断では骨破壊、骨硬化、腐骨、皮質骨穿孔、骨膜反応、周囲軟部組織炎症、骨髄信号変化の評価が重要となる。

顎骨骨髄炎は大きく感染性骨髄炎非感染性骨髄炎に分類される。

感染性骨髄炎には急性化膿性骨髄炎と慢性化膿性骨髄炎が含まれ、非感染性骨髄炎には薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)、放射線性顎骨壊死(ORN)、びまん性硬化性骨髄炎などが含まれる。画像所見はしばしば重複するため、臨床情報と画像所見の統合が診断の鍵となる。

顎骨骨髄炎の分類

感染性骨髄炎

  • 急性化膿性骨髄炎
  • 慢性化膿性骨髄炎

非感染性骨髄炎

  • 薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)
  • 放射線性顎骨壊死(ORN)
  • びまん性硬化性骨髄炎

感染性顎骨骨髄炎のCT、MRI画像診断のポイント

CT所見

CTは顎骨骨髄炎において骨構造を評価する最も重要なモダリティ。

特に皮質骨破壊、骨融解、腐骨、骨膜反応、病的骨折、骨外膿瘍などを評価するのに優れている。

  • 骨融解(osteolysis)
  • 皮質骨破壊
  • 腐骨(sequestrum)
  • 骨膜反応
  • 骨硬化
  • 骨肥厚
  • 病的骨折
  • 周囲軟部組織炎症

慢性化膿性骨髄炎では骨融解と骨硬化が混在する像が特徴的であり、骨硬化内部に腐骨や限局性骨融解を伴う場合は慢性骨髄炎を強く疑う所見となる。

MRI所見

MRIは骨髄炎の早期診断および炎症活動性の評価に優れている。典型的には病変部骨髄はT1強調像で低信号、T2強調像やSTIRで高信号となる。

  • T1低信号(正常脂肪髄の消失)
  • T2/STIR高信号(骨髄浮腫)
  • 造影後増強(炎症活動性)
  • 周囲軟部組織炎症

ただし腐骨や皮質骨破壊の評価はCTが優れているため、顎骨骨髄炎の画像診断ではCTとMRIの併用が望ましい。

MRONJの画像診断のポイント

薬剤関連顎骨壊死(MRONJ:Medication-related osteonecrosis of the jaw、読み方はムロンジェイ)はビスホスホネート製剤やデノスマブなどの骨吸収抑制薬に関連して生じる顎骨壊死である。

これらの薬剤を用いた骨粗鬆症および骨転移に対して治療中の患者に見られるケースが多い。

CTでは以下の所見がみられる。

  • びまん性骨硬化
  • 骨融解
  • 腐骨形成
  • 皮質骨破壊
  • 病的骨折
  • 下歯槽管周囲変化

MRONJでは明らかな骨融解がCTで目立たない場合もあり、骨硬化や骨梁の不整など微細な骨構造変化に注意する必要がある。

症例 50歳代女性 多発性骨髄腫。右上顎歯槽突起からの排膿を伴う歯周炎。

引用:radiopedia

右上顎歯槽突起に、境界明瞭な骨溶解領域を認め、領域内には分離した骨片を認め、腐骨(bony sequestrum)と考えられます。

また骨全体に、混合性(溶骨性+硬化性)の骨病変が多発散在しています。

薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)と診断されました。

(本症例では患者は多発性骨髄腫を有しており、ボルテゾミブ(bortezomib)を週1回投与されています。また、ビスホスホネート製剤(ゾレドロン酸:zoledronic acid)の静脈投与歴があり、これらはMRONJと強く関連する薬剤です。またMRONJは下顎骨に多いですがこの症例は上顎骨に主に病変を認めています。)

放射線性顎骨壊死(ORN)の画像診断

放射線性顎骨壊死(ORN:osteoradionecrosis)は頭頸部放射線治療後に生じる骨壊死である。画像上は感染性骨髄炎やMRONJと類似するが、放射線治療歴が重要な手掛かりとなる。

  • 骨融解
  • 骨硬化
  • 腐骨形成
  • 皮質骨破壊
  • 病的骨折
  • 骨断片化(fragmentation)

症例 60歳代女性

引用:radiopedia

左下顎後方部を中心とする骨溶解性病変を認め、歯槽骨の破壊を伴っています。

骨髄腔は拡大し、皮質骨の菲薄化がみられ、外側では皮質骨の破綻を認め、正常骨髄は低吸収物質に置き換えられています。

放射線性顎骨壊死(ORN:osteoradionecrosis)と診断されました。

びまん性硬化性骨髄炎

びまん性硬化性骨髄炎は慢性非化膿性炎症であり、主として下顎に生じる。CTでは骨硬化が主体となる。

  • びまん性骨硬化
  • 骨皮質肥厚
  • 骨梁粗造化

CTとMRIの使い分け

モダリティ 評価項目
CT 骨破壊、腐骨、骨膜反応、骨硬化、病的骨折を三次元的に評価できる。
MRI 骨髄浮腫、炎症活動性、軟部組織炎症などを評価できる。

実臨床ではCTで骨構造を評価し、MRIで骨髄炎の活動性と軟部組織炎症を評価するという役割分担が重要である。

 

参考文献:

  1. Ruggiero SL et al. Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw—2022 Update. AAOMS Position Paper.
  2. Baba A et al. Imaging modalities for drug-related osteonecrosis of the jaw. Jpn Dent Sci Rev. 2019.
  3. Muraoka H et al. Diffusion-weighted imaging in mandibular osteomyelitis. Magn Reson Med Sci. 2023.
  4. Miyamoto I et al. Imaging study of osteoradionecrosis of the jaw. J Clin Med. 2021.

 

 

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