腹部CT画像を読影していると

「この人、お尻に石灰化がたくさんあるんだけど・・・」
「臀部皮下の多数の石灰化は何だろう・・・」
「両側の臀部に石灰化肉芽腫ぽいのがたくさんあるけど・・・」

というケースに遭遇することがあります。

このような骨盤部や臀部の皮下脂肪組織あるいは筋肉内に多発する石灰化病変が偶然発見されることは少なくありません。

その中でも代表的かつ頻度の高い良性所見が「注射関連の石灰化(注射肉芽腫:Injection Granuloma)」です。

今回は、注射肉芽腫が形成されるメカニズムと、そのCT画像所見のポイント、および鑑別診断について解説します。

注射肉芽腫(Injection Granuloma)とは

  • 注射肉芽腫は、過去に反復して行われた筋肉内注射あるいは皮下注射に対する組織反応として生じる異物肉芽腫、およびそれに伴う異栄養性石灰化(Dystrophic calcification)である。
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗菌薬、ビタミン剤などの薬液が、本来の目的である筋肉内ではなく皮下脂肪組織に注入されてしまうことで、限局性の脂肪壊死や瘢痕形成を引き起こし、最終的に石灰化を伴う肉芽腫を形成すると考えられている。
  • 特に高齢の患者において、過去(数十年単位の昔)に受けた頻回な臀部注射の既往が背景にあることが多い。
  • 通常は無症状であり、検査時に偶然発見されるインシデンタローマ(偶発腫)の一つとして扱われる。

注射肉芽腫(Injection Granuloma)のCT画像所見のポイント

注射関連の石灰化は、CT画像において以下のような特徴的な所見を呈する。

  • 好発部位:両側(または片側)の臀部、特に外上方四半部(上殿部)の皮下脂肪組織内や、大殿筋・中殿筋の筋膜面に沿って分布することが多い。これは、坐骨神経を避けて安全に注射を行うための標準的な刺入部位と完全に一致する。
  • 石灰化の形態:粗大(Coarse)、斑状、あるいは結節状の多発石灰化として認められる。特徴的な形態として、辺縁のみが石灰化し内部が低吸収値を示す「リング状石灰化(Rim calcification)」を呈することがある。
  • 随伴所見:周囲の脂肪組織の濃度上昇(脂肪壊死の痕跡)や、筋萎縮、瘢痕形成による索状影を伴うことがある。悪性腫瘍に見られるような、周囲への浸潤性発育や骨破壊などは伴わない。

症例 80歳代女性

両側臀部皮下に多数の石灰化結節を認めています。

注射肉芽腫(Injection Granuloma)/注射瘢痕/注射による石灰化肉芽腫を疑う所見です。

症例 70歳代女性

両側臀部皮下に多数の石灰化結節を認めています。

こちらも同様に注射肉芽腫(Injection Granuloma)/注射瘢痕/注射による石灰化肉芽腫を疑う所見です。

症例 50歳代女性

引用:radiopedia

両側臀部皮下に多数の石灰化結節を認めています。

先ほどまでの症例と比べてかなり石灰化が著明で数も多いです。

こちらも同様に注射肉芽腫(Injection Granuloma)/注射瘢痕/注射による石灰化肉芽腫を疑う所見です。

こうした注射により脂肪壊死が生じ、初期には軟部組織腫脹としてみられ、その後、進行性に石灰化していく様子がわかります。

注射肉芽腫(Injection Granuloma)と鑑別を要する疾患

臀部に多発する軟部組織石灰化を認めた場合、注射肉芽腫以外に以下の疾患との鑑別が必要となる。病変の左右対称性や、経時的変化の乏しさが、注射肉芽腫を疑う強力な根拠となる。

  • 膠原病・自己免疫疾患:皮膚筋炎(Dermatomyositis)や全身性強皮症(Systemic sclerosis)などに伴う石灰沈着症(Calcinosis universalis / circumscripta)。皮膚筋炎では筋力低下や特異的な皮疹など、全身性の症状を伴う。
  • 腫瘍状石灰沈着症(Tumoral calcinosis):慢性腎不全などに伴う転移性石灰化。関節周囲に巨大な石灰化腫瘤を形成する。
  • 寄生虫感染症:有鉤嚢虫症(Cysticercosis)などによる筋肉内多発石灰化。通常は長軸に沿った米粒状、あるいは葉巻状の特異な形態を呈する。
  • 軟部腫瘍:石灰化を伴う軟部肉腫(滑膜肉腫など)や脂肪肉腫など。これらは通常、非対称性の単発腫瘤を形成する。

 

出典・参考文献

  1. Chong, V. F., et al. “CT of the gluteal region.” American Journal of Roentgenology 144.1 (1985): 185-189. (注射肉芽腫に伴う粗大石灰化とCTによる評価に関する基本的知見)
  2. Prosch, H., et al. “Case report: Gluteal injection site granulomas: false positive finding on FDG-PET in patients with non-small cell lung cancer.” The British Journal of Radiology 78.932 (2005): 758-761. (注射肉芽腫におけるFDG-PETの偽陽性に関する報告)
  3. Silva, L., et al. “Gluteal subcutaneous calcifications on a patient with chronic back pain.” Medical Research Journal (2021). (繰り返すNSAIDs等の注射による脂肪壊死と両側性皮下石灰化に関する症例報告)
  4. Kim, S. Y., et al. “Calcifications in the buttock.” Journal of the Korean Radiological Society 21.4 (1985). (臀部石灰化の発生頻度と、皮下脂肪厚・注射による脂肪壊死との関連についての検討)

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