先に結論:外傷性の硬膜外血腫・硬膜下血腫の手術適応
- 急性硬膜外血腫は30mL超ならGCSに関わらず手術が目安で、急性硬膜下血腫は厚さ10mm超または正中偏位5mm超で手術を考えます
- CTでは血腫の最大の厚さ・正中偏位・体積(ABC/2)を数値で報告し、意識レベルや瞳孔の変化とあわせて判断します
- 慢性硬膜下血腫は症状(頭痛・歩行障害・認知機能低下など)があれば穿頭ドレナージを考えます。基準は現行の頭部外傷治療ガイドラインで確認してください
※頭を打ったあとに、強い頭痛・くり返す吐き気・意識がぼんやりする・手足が動かしにくいなどの症状が出たときは、すぐに救急を受診してください。
急性/慢性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫の手術適応
- 硬膜外血腫(acute epidural hematoma: AEDH)
- 急性硬膜下血腫(acute subdural hematoma: ASDH)
- 慢性硬膜下血腫(chronic subdural hematoma: cSDH)
は、いずれも「画像の閾値」と「臨床増悪」で手術適応が判断される代表疾患です。
今回は、救急現場でコンサルトや読影レポートに直結する基準値を中心にまとめました。
手術適応は最終的に脳神経外科が臨床状況(意識、瞳孔、抗血栓薬、併存損傷、年齢、施設体制)を含め総合判断しますので本稿はあくまで迷ったら即コンサルトするための骨格であることを前提とします。
まず押さえる:CTで数値化しておくべき項目
- 血腫の最大厚(mm):最厚部で計測する。
- midline shift(MLS, mm):透明中隔付近などで正中偏位を計測する。
- (AEDHで重要)推定体積(cm³):可能ならABC/2などで概算する(ABC/2は脳内出血の体積計算として報告された簡便法:Kothari 1996)。
- 基底槽の圧排・ヘルニア徴候:脳槽消失、uncal herniation徴候など。
- 臨床の推移:GCS/JCSの変化、瞳孔不同、局在徴候(片麻痺・失語など)。
3つの血腫の違い(早見表)
| 急性硬膜外血腫 | 急性硬膜下血腫 | 慢性硬膜下血腫 | |
|---|---|---|---|
| CTでの形 | 凸レンズ型。頭蓋骨の縫合線を越えにくい | 三日月型。縫合線を越えて広がる | 三日月型。低〜等吸収や混在した濃度 |
| 手術の目安 | 体積30cm³超はGCSに関わらず | 厚さ10mm超または正中偏位5mm超はGCSに関わらず | 血腫による症状があるとき |
| 主な術式 | 開頭血腫除去 | 開頭血腫除去(骨弁を外す減圧を併用することも) | 穿頭ドレナージ |
(手術の目安・術式はBullock 2006a・2006b、Santarius 2009による)
急性硬膜外血腫(AEDH)の手術適応
AEDHは動脈性出血を背景に急速増悪しうるため、一定の閾値を超える場合は「GCSに関わらず」手術適応となる。
手術適応(代表的閾値)
- 血腫体積 > 30 cm³:患者のGCSに関わらず血腫除去術を行う。
非手術で管理しうる条件(=外れたら手術寄り)
- 体積 < 30 cm³ かつ 最大厚 < 15 mm かつ MLS < 5 mm
- かつ GCS > 8、局所神経症候なし
- 上記を満たす場合、脳神経外科管理下で厳重な神経学的観察と反復CTにより保存的加療も許容される。
重要な身体所見
- 昏睡(GCS < 9)+瞳孔不同:可能な限り速やかな手術を要する。
- 症状増悪や血腫増大を示唆する所見があれば、閾値未満でも方針が変わりうる。
術式
- 特定の術式を支持する十分なデータはないが、開頭術のほうが血腫を取り残しにくい。
(以上、Bullock 2006a)
症例 30歳代男性(急性硬膜外血腫)

引用:Radiopaedia(Extradural hemorrhage)
交通事故で頭部を受傷した男性の頭部単純CTです。右前頭側頭部に凸レンズ型の高吸収の血腫があり、隣の脳を圧排して正中偏位を起こしています。前頭骨・右側頭骨の骨折と頭皮下血腫を伴い、血腫は速やかに手術で除去されました。
急性硬膜下血腫(ASDH)の手術適応
ASDHは脳挫傷などの併存損傷を伴いやすく、減圧の意味合いが強い。基本は「厚さ/正中偏位の閾値」+「臨床増悪」で手術適応を判断する。
手術適応(代表的閾値:GCSに関わらず)
- 血腫厚 > 10 mm または MLS > 5 mm:GCSに関わらず外科的血腫除去を行う。
昏睡例(GCS < 9)で、閾値未満でも手術を考える条件
- 急性SDHでGCS < 9の場合、ICPモニタリングを行う。
- 血腫厚 ≤10 mm かつ MLS ≤5 mmでも、以下のいずれかがあれば血腫除去を考慮する:
- 受傷〜入院でGCSが2点以上低下
- 瞳孔不同 または 固定散大
- ICP > 20 mmHg
手術のタイミングと術式
- 手術適応がある急性SDHは、可能な限り速やかに血腫除去を行う。
- 昏睡例(GCS < 9)で手術する場合は、開頭術(骨弁を外す減圧と硬膜形成の併用を含む)で行う。
(以上、Bullock 2006b)
症例 70歳代男性(急性硬膜下血腫・正中偏位)

引用:Radiopaedia(Subdural hematoma, uncal herniation and Duret brainstem hemorrhage)
転倒して意識を失った男性の頭部単純CTです。左大脳円蓋部に三日月型の大きな急性硬膜下血腫があり、大脳鎌に沿っても広がって、正中構造が右へ大きく偏位しています。この症例では左鉤ヘルニアによる脳幹圧迫と橋のDuret出血も伴っていました。
慢性硬膜下血腫(cSDH)の手術適応
cSDHは高齢者に多く、症状(歩行障害、認知変化、片麻痺、頭痛、意識障害など)と画像で治療方針を決める。標準術式は穿頭ドレナージ(burr-hole drainage)である。
手術(ドレナージ)を強く考える状況
- 症候性:片麻痺、失語、歩行障害、意識障害、せん妄/認知機能低下など、cSDHに起因する神経症状がある。
- 進行・代償不全:症状増悪、反復転倒、けいれん、著明な眠気や意識低下などがある。
画像所見のよく使う目安
- cSDHの手術判断は、画像上の厚さや正中偏位だけでなく症状とあわせて行う。
- ただし、無症候でも増大傾向や抗血栓薬内服などがあれば、手術閾値は実臨床で前後しうる。
再発とドレーン
- cSDHは手術後に5〜30%で再発するとされる。
- 穿頭術後に硬膜下へドレーンを留置したランダム化試験では、再手術を要する再発が9.3%(ドレーンなし24%)、6か月死亡率が8.6%(同18.1%)と、いずれもドレーン留置群で少なかった。
(以上、Santarius 2009)
補足:再発対策・追加治療
近年、再発抑制目的に中硬膜動脈塞栓術(MMA embolization)が「標準治療(手術/非手術)に対する有力な補助療法」として整理されつつある。適応や位置づけは施設・症例で異なるため、脳外科方針に従う。2024年に報告されたランダム化試験EMBOLISEでは、手術適応のある症候性の亜急性・慢性硬膜下血腫に中硬膜動脈塞栓術を併用すると、90日以内に再手術を要する再発・増大が4.1%と手術単独(11.3%)より少なかった。一方、中国のMAGIC-MT(78%が穿頭ドレナージ併用)では、90日以内の症候性再発・増大は6.7%対9.9%で有意差はなかった(重篤な有害事象は塞栓群で少なかった)。
硬膜外血腫・硬膜下血腫でよくある疑問(Q&A)
Q. 硬膜外血腫と硬膜下血腫の違いは?
A. 脳を包む硬膜の外側(頭蓋骨との間)にたまるのが硬膜外血腫、内側(脳との間)にたまるのが硬膜下血腫です。CTでは硬膜外血腫が凸レンズ型、硬膜下血腫が三日月型にみえるのが典型です。
Q. 慢性硬膜下血腫は手術後に再発しますか?
A. 手術後5〜30%で再発するとされ、穿頭術後のドレーン留置で再発が減ったと報告されています(Santarius 2009)。中硬膜動脈塞栓術を併用する方法も検討されています。
参考文献(出典)
- Bullock MR, Chesnut R, Ghajar J, et al. Surgical management of acute epidural hematomas. Neurosurgery. 2006;58(3 Suppl):S7-15. PubMed
- Bullock MR, Chesnut R, Ghajar J, et al. Surgical management of acute subdural hematomas. Neurosurgery. 2006;58(3 Suppl):S16-24. PubMed
- Brain Trauma Foundation. Guidelines for the Surgical Management of Traumatic Brain Injury(EDH/ASDH章). 2006.
- Kan P, Fiorella D, Dabus G, et al. ARISE I Consensus Statement on the Management of Chronic Subdural Hematoma. Stroke. 2024;55(5):1438-1448. PubMed
- Davies JM, Knopman J, Mokin M, et al. Adjunctive Middle Meningeal Artery Embolization for Subdural Hematoma. N Engl J Med. 2024;391(20):1890-1900. PubMed
- Liu J, Ni W, Zuo Q, et al. Middle Meningeal Artery Embolization for Nonacute Subdural Hematoma. N Engl J Med. 2024;391(20):1901-1912. PubMed
- Santarius T, Kirkpatrick PJ, Ganesan D, et al. Use of drains versus no drains after burr-hole evacuation of chronic subdural haematoma: a randomised controlled trial. Lancet. 2009;374(9695):1067-73. PubMed
- Kothari RU, Brott T, Broderick JP, et al. The ABCs of measuring intracerebral hemorrhage volumes. Stroke. 1996;27(8):1304-5. PubMed
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