受動性無気肺(読み方は、じゅどうせいむきはい)という用語が胸部CTの画像所見に用いられることがありますがどのような画像所見でどういった意味を持つのでしょうか。

日常臨床では、胸水とともに見られることが多い無気肺です。

今回は受動性無気肺についてまとめました。

受動性無気肺(passive atelectasis)とは?

  • 無気肺は「閉塞性無気肺」と「非閉塞性無気肺」に大別されるが、受動性無気肺は非閉塞性無気肺の一種
  • 「圧迫性無気肺(compressive atelectasis)」とも呼ばれる。
  • 胸水や気胸などの外圧によって肺が圧迫され、肺胞内の空気が失われて容積が減少した状態を指す。
  • 特に胸水貯留による圧迫性無気肺は日常的に遭遇する病態であり、CT画像所見を正確に理解することが診断において重要である。

受動性無気肺(passive atelectasis)のCT画像所見

  • 肺野条件(lung window setting):気管支透亮像を伴った境界明瞭な高吸収域として描出される。
  • 軟部条件(soft tissue window setting):筋肉と等吸収の軟部組織濃度を呈する。
  • 胸水との関連:受動性無気肺は胸水によって生じることが多いため、CTでは背側に低吸収な胸水を伴うことが多い。X線写真では隣接する胸水と無気肺の区別がつきにくいことがあるが、CTでは水と軟部影として濃度が異なるため、違いを識別することが可能。
  • 造影CTでは無気肺部分は豊富な血流を反映して強く造影され、これにより、無気肺部と周囲の胸水との区別が容易になる。
  • 肺炎による浸潤影との鑑別が問題となることがあるが、受動性無気肺は、境界明瞭で周囲に散布影を伴わない場合に無気肺と判断される。一方、肺炎による浸潤影は通常、境界が不明瞭であったり、周囲に炎症による散布影を伴ったりすることがある。

症例 70歳代男性

両側胸水を認め、受動性無気肺は向かって右側の縦隔条件では、胸水よりやや高吸収の領域として認識できますが、向かって左側の肺野条件では胸水と同じく高吸収で境界がわかりにくいことがわかります。ただし、気管支透亮像は肺野条件の方が少し分かりやすいです。

同じ縦隔条件でも、造影CTでは無気肺部分は豊富な血流を反映して強く造影され、無気肺部と周囲の胸水との区別が容易になります。

このように胸水などにより圧排されて生じる無気肺が受動性無気肺です。

特殊な受動性無気肺である「円形無気肺」とは?

  • 胸水により生じる無気肺は、時に腫瘤状になることがあり、これが円形無気肺(round atelectasis)と呼ばれる。
  • 円形無気肺は、胸水の浮力で肺が巻き取られることで生じる。
  • 特徴的な所見として、腫瘤周囲の血管が巻き込まれて弧状の形態(comet tail sign:彗星の尾徴候)を呈することが腫瘍との鑑別点となる。

関連記事:円形無気肺とは?CT画像診断のポイントは?

まとめ

受動性無気肺は、胸水貯留などに伴って肺が圧迫され、含気が減少して容積が縮小した状態です。

CT画像では、気管支透亮像を伴った境界明瞭な高吸収域として見られ、造影CTでは強く造影されるのが特徴です。

日常臨床でもよく見られる所見ですので、是非参考にしてください。

 

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参考文献・出典

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  • Fraser RS, Müller NL, Colman N, Pare PD. Fraser and Pare’s Diagnosis of Diseases of the Chest. 5th ed. Philadelphia, PA: Saunders; 2005.
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  • Miller WT Jr, Streeten D. CT assessment of pleural fluid and passive atelectasis. Radiology. 1991;178(2):453–459.

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