受動性無気肺(読み方は、じゅどうせいむきはい)という用語が胸部CTの画像所見に用いられることがありますがどのような画像所見でどういった意味を持つのでしょうか。
日常臨床では、胸水とともに見られることが多い無気肺です。
今回は受動性無気肺についてまとめました。
先に結論:無気肺とは・種類(受動性・閉塞性・板状など)
無気肺とは、肺の一部の空気がなくなってしぼんでしまった状態で、CTでは白く(軟部組織の濃さに)見えます。
| 種類 | 原因と特徴 |
|---|---|
| 受動性(圧迫性)無気肺 | 胸水や気胸に外から押されてしぼむ。胸水のそばの下葉の背中側に多い。造影CTで強く染まり、胸水と区別できる |
| 閉塞性(吸収性)無気肺 | 気管支ががん・痰・異物でふさがり、先の空気が吸収されてしぼむ。原因(特に肺がん)を必ず探す |
| 板状無気肺 | 浅い呼吸などで起こる帯状(線状)の小さな無気肺。手術後・寝たきりの人などに多く、多くは心配ない |
| 円形無気肺 | 胸膜の病気のあとに丸くしぼむ。肺がんとまちがえやすい |
胸水と無気肺の見分け方:CTでは、胸水は背中側にたまる水の濃さ(灰色)で造影されず、無気肺は中に気管支の空気(気管支透亮像)が見え、造影CTで強く染まるのが違いです。
受動性無気肺(passive atelectasis)とは?
- 無気肺は「閉塞性無気肺」と「非閉塞性無気肺」に大別されるが、受動性無気肺は非閉塞性無気肺の一種。
- 「圧迫性無気肺(compressive atelectasis)」とほぼ同じ意味で使われることも多い。ただし文献によっては、単純な気胸・横隔膜の動きの低下・浅い呼吸などによるものを受動性、緊張性気胸や胸の中の大きな病変などによる強い圧迫によるものを圧迫性と分けて呼ぶ(Woodring 1996)。
- 胸水や気胸などの外圧によって肺が圧迫され、肺胞内の空気が失われて容積が減少した状態を指す。
- 特に胸水貯留による圧迫性無気肺は日常的に遭遇する病態であり、CT画像所見を正確に理解することが診断において重要である。
受動性無気肺(passive atelectasis)のCT画像所見
- 肺野条件(lung window setting):気管支透亮像を伴った境界明瞭な高吸収域として描出される。
- 軟部条件(soft tissue window setting):筋肉と等吸収の軟部組織濃度を呈する。
- 胸水との関連:受動性無気肺は胸水によって生じることが多いため、CTでは背側に低吸収な胸水を伴うことが多い。X線写真では隣接する胸水と無気肺の区別がつきにくいことがあるが、CTでは水と軟部影として濃度が異なるため、違いを識別することが可能。
- 造影CTでは無気肺部分は豊富な血流を反映して強く造影され、これにより、無気肺部と周囲の胸水との区別が容易になる。
- 肺炎による浸潤影との鑑別が問題となることがあるが、受動性無気肺は、境界明瞭で周囲に散布影を伴わない場合に無気肺と判断される。一方、肺炎による浸潤影は通常、境界が不明瞭であったり、周囲に炎症による散布影を伴ったりすることがある。
症例 70歳代男性

両側胸水を認め、受動性無気肺は向かって右側の縦隔条件では、胸水よりやや高吸収の領域として認識できますが、向かって左側の肺野条件では胸水と同じく高吸収で境界がわかりにくいことがわかります。ただし、気管支透亮像は肺野条件の方が少し分かりやすいです。

同じ縦隔条件でも、造影CTでは無気肺部分は豊富な血流を反映して強く造影され、無気肺部と周囲の胸水との区別が容易になります。
このように胸水などにより圧排されて生じる無気肺が受動性無気肺です。
胸水と無気肺のCTでの見分け方(一覧)
胸部レントゲンでは、胸水と無気肺はどちらも白く写って区別しにくいことがありますが、CTでは次の点で見分けます。
| 胸水 | 受動性無気肺 | |
|---|---|---|
| 場所・形 | 背中側(重力のかかる側)に三日月状にたまる | 胸水に接した肺(多くは下葉の背側)。三角形〜帯状 |
| 単純CTの濃さ | 水の濃さ(筋肉より低い) | 筋肉と同じくらいの軟部組織の濃さ |
| 造影CT | 染まらない | 強く染まる |
| 中の構造 | 均一 | 気管支透亮像・集まった血管が見える |
無気肺の直接のサインは、血管や気管支透亮像が寄り集まることと葉間裂の偏位で、間接のサインとして横隔膜の挙上、気管・心臓・縦隔の偏位、肺門の偏位、周りの肺の代償性過膨張などがあります(Woodring 1996)。
閉塞性無気肺のCT所見
閉塞性無気肺は、気管支が肺がん・痰・異物などでふさがれて起こります。受動性無気肺と違い、胸水がなくても起こり、肺葉や区域の形のまましぼむのが特徴です。CTでは気管支の閉塞部位や原因の腫瘍を確認でき、造影CTは中枢の腫瘍としぼんだ肺の区別に役立ちます(Molina 1996)。
- しぼんだ肺は肺動脈の血流が多いため造影剤でよく染まり、腫瘍は染まり方が遅く弱いことが、両者を分ける手がかりになります(Onitsuka 1991)
- 気管支の根元が詰まると、中枢に気管支透亮像が見えないことがあり、閉塞の原因を探す手がかりになります
特殊な受動性無気肺である「円形無気肺」とは?
- 胸水により生じる無気肺は、時に腫瘤状になることがあり、これが円形無気肺(round atelectasis)と呼ばれる。
- 円形無気肺は、胸水の浮力で肺が巻き込まれるようにしぼむことで生じると考えられている。
- 特徴的な所見として、腫瘤周囲の血管が巻き込まれて弧状の形態(comet tail sign:彗星の尾徴候)を呈することが腫瘍との鑑別点となる。円形無気肺はアスベスト曝露などによる胸膜病変を背景に生じることが多く、隣接する胸膜肥厚と患葉の容積減少を伴う。多くは無症状の高齢男性で偶然見つかる。
無気肺でよくある疑問(Q&A)
Q. 受動性無気肺は治りますか?
受動性無気肺は胸水や気胸に押されてしぼんでいる状態なので、原因の胸水や気胸がよくなれば、肺は再びふくらむことが多いです。治療は無気肺そのものより、胸水の原因(心不全・肺炎・がんなど)に対して行います。
Q. 無気肺と言われたら肺がんですか?
無気肺の多くは、胸水による受動性無気肺や、浅い呼吸・寝たきりで起こる板状無気肺です。ただし、胸水がないのに肺葉がしぼんでいる閉塞性無気肺では、気管支をふさぐ肺がんがないかを確認します。咳・血痰・息切れなど気になる症状があれば、医療機関に相談してください。
まとめ
受動性無気肺は、胸水貯留などに伴って肺が圧迫され、含気が減少して容積が縮小した状態です。
CT画像では、気管支透亮像を伴った境界明瞭な高吸収域として見られ、造影CTでは強く造影されるのが特徴です。
日常臨床でもよく見られる所見ですので、是非参考にしてください。
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参考文献・出典
- Molina PL, Hiken JN, Glazer HS. Imaging evaluation of obstructive atelectasis. J Thorac Imaging. 1996;11(3):176-186. PubMed
- Woodring JH, Reed JC. Types and mechanisms of pulmonary atelectasis. J Thorac Imaging. 1996;11(2):92-108. PubMed
- Woodring JH, Reed JC. Radiographic manifestations of lobar atelectasis. J Thorac Imaging. 1996;11(2):109-144.
- Fraser RS, Müller NL, Colman N, Pare PD. Fraser and Pare’s Diagnosis of Diseases of the Chest. 5th ed. Philadelphia, PA: Saunders; 2005.
- Webb WR, Stern EJ, Gamsu G. High-Resolution CT of the Lung. Lippincott Williams & Wilkins; 2000.
- Proto AV. Lobar collapse: basic concepts. Eur J Radiol. 1996;23(1):9-22.
- Hansell DM, Bankier AA, MacMahon H, et al. Fleischner Society: glossary of terms for thoracic imaging. Radiology. 2008;246(3):697-722. PubMed
- Batra P, Brown K, Hayashi K, et al. Rounded atelectasis. J Thorac Imaging. 1996;11(3):187-97. PubMed
- Onitsuka H, Tsukuda M, Araki A, et al. Differentiation of central lung tumor from postobstructive lobar collapse by rapid sequence computed tomography. J Thorac Imaging. 1991;6(2):28-31. PubMed
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