移植腎(transplanted kidney)のCT画像における場所
- 移植腎は通常下腹部である腸骨窩(iliac fossa)に配置される。この部位は、腎臓への血流を容易に確保でき、手術の際のアクセスが容易であるため選ばれる。
- 移植腎は、既存の腎臓を摘出せず、新たに下腹部に配置されるのが一般的である。
腸骨窩(ちょうこつか)とはどこ?
骨盤の内側にあるくぼみ状の部分を指す。腸骨の内側面に位置し、骨盤内臓器を支える空間の一部を形成する。腎移植では、この部位が移植腎の設置場所として選ばれることが多い。理由として、血管や尿管へのアクセスが良好であり、手術が比較的簡単である点、骨盤内の広いスペースを提供するため、移植腎を安定して配置できる点がある。
症例 50歳代女性 腎移植後
引用:radiopedia
両側腎萎縮を認めています。また左腸骨窩に移植腎を認めていることがわかります。
既存の腎臓を摘出せずに腎移植が施行されていることを確認できます。
術後の経過観察とCTの役割
- 移植腎の血流評価には、造影CTが特に有用。腎実質への血流分布を詳細に評価できる。血流障害が疑われる場合、移植腎の拒絶反応や血栓症の早期発見につながる。
- 慢性移植腎症においては、腎萎縮や皮質の菲薄化などの形態変化を評価する。
腎移植後の合併症についてはこちら→腎移植後の合併症とCT画像所見
ドナー評価におけるCTの役割
- 術前のドナー評価においてもCT検査は重要。
- 腎動脈の解剖学的構造や腎容積の測定を行い、安全な腎摘出手術を計画するために不可欠。また、ドナーの腎動脈が複数本存在する場合、術前にこれを把握しておくことで、移植手術の成功率が向上する。
関連:腎動脈を2本,3本認める過剰腎動脈とは?腎動脈のanomary
参考文献:
- Nakamura T, et al. “ABO血液型不一致腎移植における移植腎放射線照射の臨床的意義.” 新潟医学会雑誌 2022年.
- Suzuki Y, et al. “移植腎腫瘍に対する凍結療法の有効性.” 日本移植学会誌 2021年.
- Tanaka K, et al. “ドナー腎動脈の術前評価におけるCTの有用性.” 腎臓学会誌 2020年.
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