二次性副甲状腺機能亢進症(Secondary hyperparathyroidism)とは?

  • 腎不全によりリン(P)が蓄積し、活性型ビタミンD(VitD)の欠乏に伴う低カルシウム血症(Ca)や組織の副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone; PTH)抵抗性が発生する。その結果、長期間にわたるPTH分泌亢進により二次性副甲状腺機能亢進症(二次性HPT)が引き起こされる。
  • 副甲状腺機能亢進症(hyperparathyroidism; HPT)の診断は内分泌学的検査で十分可能であり、画像診断は主に他疾患との鑑別や合併症の評価に重きを置くべきである。

二次性副甲状腺機能亢進症の画像所見

骨吸収と骨形成の亢進を反映する以下の特徴的な所見が観察される。

  • 骨膜下骨吸収
  • 溶骨性変化
  • 骨硬化病変
  • 歯槽硬線の消失
  • 鎖骨や仙腸関節の骨吸収
  • 褐色腫(brown tumor)

骨膜下骨吸収

  • HPTにおける初期の典型的所見。
  • 特に示指や中指の中節骨掌側に見られ、骨皮質表面の不明瞭化や粗造化が特徴的。
  • 他の部位として、大腿骨、腓骨、上腕骨の骨幹端内側が知られる。また、歯根部にも類似の所見が見られることがある。

症例 50歳代女性 副甲状腺機能亢進症

引用:radiopedia

骨膜下吸収が、基節骨および中節骨の橈側で最も顕著に認められる。

溶骨性変化

  • 単純X線写真では、単発または多発する境界明瞭な溶骨性病変が確認されることが多く、膨張性を伴う場合もある。
  • MRIでは嚢胞成分と充実成分が混在し、充実成分はT1およびT2強調像で低信号を示す。
  • 一方、嚢胞成分は繰り返す出血を反映し、液面形成が見られることがある。

骨硬化病変

  • 二次性HPTでは骨硬化病変が高頻度で認められる。
  • 特にラグビーユニフォーム状脊椎(rugger jersey spine)と呼ばれる椎体終板近傍の帯状骨硬化像が有名。
  • この他、長管骨の骨端や手根骨、足根骨にも硬化像が見られることがあり、骨壊死との鑑別が必要。
  • 骨硬化像は境界が不明瞭で均一である点が特徴であり、骨壊死で見られる辺縁主体の硬化像とは異なる。MRIではこれらの鑑別が容易である。

症例 50歳代男性 末期腎不全

引用:radiopedia

椎体終板近傍の帯状骨硬化像を認め、ラグビーシャツの縞模様のような模様を示しています。

二次性HPTによるラグビーユニフォーム状脊椎(rugger jersey spine)の所見です。

歯槽硬線の消失

  • 歯槽硬線(lamina dura)の消失も骨膜下吸収の一例であると考えられる。
  • 骨皮質内、骨皮質内面、軟骨下、靱帯や腱付着部(坐骨結節、大腿骨転子部)でも骨吸収が見られることがある。

鎖骨や仙腸関節の骨吸収

  • 鎖骨遠位端や近位端の軟骨下骨吸収は、胸部X線写真で頻繁に認められる所見。
  • また、仙腸関節の軟骨下骨吸収は関節面の不整や関節裂隙の拡大を伴い、仙腸関節炎との鑑別が重要となる。

頭蓋骨の変化

  • 頭蓋骨の単純X線正面像では、側頭骨の辺縁に線状影(accentuated temporal line)が強調される。
  • 側頭筋付着部における骨吸収を反映していると考えられる。

褐色腫(brown tumor)

  • 限局性の非腫瘍性溶骨性病変であり、陳旧性出血により褐色調を呈することからこの名称が付けられている。
  • 原発性HPTでの発生頻度は3%、二次性HPTでは1.5%から1.7%であり、骨盤、大腿骨、肋骨に好発する。
  • 急速な増大を呈する場合があり、悪性腫瘍との鑑別が問題となることがある。
  • 組織学的には巨細胞や血管に富む線維性組織から構成される。

参考文献:臨床画像 Vol.36 No.10 2020 P1091-93

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