先に結論:菱形筋の解剖
- 菱形筋は小菱形筋(C7〜T1の棘突起から)と大菱形筋(T2〜T5の棘突起から)からなり、肩甲骨の内側縁に付きます
- 僧帽筋の深層にあり、肩甲骨を背骨に引き寄せ(内転)、固定する働きがあります
- 支配神経は肩甲背神経で、CTでは僧帽筋と肩甲骨・肋骨の間の薄い筋肉として見えます。肩甲背神経は腕神経叢から起こり、中斜角筋を貫く(日本人献体140側中95側、約68%)か、その前方を通って大・小菱形筋と肩甲挙筋を支配します。
- 英語は大菱形筋=rhomboid major、小菱形筋=rhomboid minorです。僧帽筋(副神経支配・表層)とは層も支配神経も異なります
菱形筋(りょうけいきん:rhomboid muscles)は、僧帽筋の深層に位置し、肩甲骨の動きや安定性に関与する筋肉です。小菱形筋(しょうりょうけいきん)と大菱形筋(だいりょうけいきん)の2つから構成されます。
背中全体にわたる筋肉は、大きく分けて表層、中層、深層の筋肉が存在しますが、菱形筋群はこのうち肩甲挙筋とともに中層に位置します。

菱形筋のCT、MRI画像の解剖
胸部のCTやMRI画像を読む上で菱形筋がどの場所にあるのか解剖をチェックしましょう。
CTの横断像では以下の場所に菱形筋があります。

菱形筋は、CTの横断像で僧帽筋の深層に位置し、肩甲骨の内側から脊柱にかけて確認される筋肉です。
自分でCT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→菱形筋(rhomboid muscles)のCT画像の解剖
菱形筋の起始
小菱形筋の起始
- 第7頸椎(C7)と第1胸椎(T1)の棘突起
- 項靭帯の下部
小菱形筋の停止
- 肩甲骨内側縁の上部
- 肩甲棘の付近
小菱形筋の役割
- 肩甲骨の内転(内側に引く)
- 肩甲骨の挙上(持ち上げる)
- 肩甲骨の固定
大菱形筋の起始
- 第2~第5胸椎(T2~T5)の棘突起
大菱形筋の停止
- 肩甲骨内側縁(けんこうこつないそくえん)の下部:小菱形筋の付着部の下方に位置
大菱形筋の役割
- 肩甲骨の内転
- 肩甲骨の挙上
- 肩甲骨の固定
菱形筋共通の特徴
- 位置:菱形筋群は僧帽筋の深層にあり、肩甲骨と脊柱の間に位置する。
- 形状:小菱形筋と大菱形筋が重なり、全体として菱形の形を成す。
- 作用:肩甲骨を脊柱に引き寄せ、肩甲骨の安定性を向上させる。
菱形筋の起始・停止・作用・支配神経の一覧
| 小菱形筋 | 大菱形筋 | |
|---|---|---|
| 読み方・英語 | しょうりょうけいきん rhomboid minor |
だいりょうけいきん rhomboid major |
| 起始 | 第7頸椎・第1胸椎の棘突起、項靭帯の下部 | 第2〜第5胸椎の棘突起 |
| 停止 | 肩甲骨内側縁の上部(肩甲棘の付け根付近) | 肩甲骨内側縁の下部(小菱形筋の付着部より下) |
| 作用 | 肩甲骨の内転・挙上・下方回旋・固定 | |
| 支配神経 | 肩甲背神経(主にC5神経根から) | |
菱形筋の支配神経と僧帽筋との違い
菱形筋の支配神経は肩甲背神経で、主にC5神経根から起こり、中斜角筋を貫くかその前方を通って、肩甲骨の内側縁に沿って下行します(Tetsu 2018、Afshar 2026)。表層の僧帽筋は副神経が支配し、後頭骨から胸椎まで広く起こって鎖骨・肩峰・肩甲棘に付く点が、菱形筋と異なります。
菱形筋でよくある疑問
Q. 肩甲骨の内側が痛いのは菱形筋のせいですか?
A. 筋肉のこりが多い一方、肩甲背神経の絞扼や頸椎の病気でも同じ場所が痛むことがあります(Afshar 2026)。痛みやしびれが続くときは医療機関を受診してください。
菱形筋群は、小菱形筋と大菱形筋から構成され、肩甲骨の内転・挙上・固定に重要な役割を果たします。起始は第7頸椎から第5胸椎の棘突起、停止は肩甲骨内側縁に広がります。僧帽筋の深層に位置し、肩甲骨の安定性を保ちながら、肩や腕の動きを効率的にサポートします。日常動作からスポーツまで、肩甲骨の動きに不可欠な筋肉群です。菱形筋を支配する肩甲背神経の絞扼障害をまとめた2026年のシステマティックレビューでは、肩甲背神経は主にC5神経根から起こり、中斜角筋を貫く部分が最も多い絞扼部位とされています。症状は肩甲骨内側縁の痛み、菱形筋の筋力低下、軽い翼状肩甲などで、頸椎神経根症や胸郭出口症候群と紛らわしいことがあります。高分解能の超音波やMRIでは、神経の浮腫や筋の脱神経所見がみられることがあります。
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参考文献
- Tetsu S, Terayama H, Qu N, et al. Anatomical variants of dorsal scapular nerve in relation to the middle scalene muscle in Japanese population. Medicine (Baltimore). 2018;97(47):e13349. PubMed
- Afshar A, Tabrizi A, Shariyate MJ. Dorsal scapular nerve entrapment: a systematic review. JSES Rev Rep Tech. 2026;6(4):100807. PubMed
- Celikgun B, Gayretli O, Gurses IA, et al. Surgical Anatomy of the Distal Part of the Dorsal Scapular Nerve With a Focus on the Triple-Tendon Transfer. Brain Behav. 2025;15(7):e70694. PubMed
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