先に結論:膵癌治療後の再発・転移
- 膵癌の術後再発の多くは2年以内で、早期は肝転移、1年以上たってからは肺転移や局所再発が多い傾向があります
- 膵頭十二指腸切除後は上腸間膜動脈・総肝動脈周囲の軟部影がよく見られ、術後変化と局所再発の区別が難しいため、増大していないか経過を追うことが大切です
- 肝転移は小さいうちはCTで見つけにくいことがあり、EOB-MRIが検出に役立ちます。肺転移はすりガラス影など非典型的な形をとることがあります
膵癌術後再発・転移様式、術後の経過観察期間
- 膵癌早期の再発・転移チェックでは特に肝転移、複数領域への転移例が多く、1年以上経過して再発した症例では、肺もしくは局所での再発が多かったと報告されている。Johns Hopkinsの膵切除692例の検討でも、肝のみの再発は中央値6.9か月と早く、肺のみの再発は中央値18.6か月と遅れて出現しており、再発部位によって出現時期が異なることが示されている(Groot 2018)。
- 術前のCA19-9高値(52 U/mL超)や腫瘍径3cm超は、術後12か月以内の早期再発の予測因子と報告されている。早期再発の部位は肝が最も多かった(Imamura 2021)。
- 「膵癌診療ガイドライン 2016年版,第4版」では、膵癌の術後再発は大半が手術後2年以内に見られることから、手術後最初の2年間は3〜6ヶ月毎、その後は6〜12ヶ月毎に少なくとも5年間のフォローアップを推奨している。
- また、「2019年版,第5版」では、術後の長期生存が見込まれる患者が増加しており、手術後5年以上経過した患者の定期的なフォローアップの重要性が提案されている。この提案は、「2022年版,第6版」においても継続されている(日本膵臓学会 2022)。
膵癌の再発部位と時期(切除後692例)
| 再発のしかた | 割合 | 再発までの中央値 |
|---|---|---|
| 遠隔のみ | 57.8% | ― |
| 局所のみ | 23.7% | ― |
| 肝のみ | 25.2% | 6.9か月 |
| 肺のみ | 14.7% | 18.6か月 |
割合は再発した531例に対するもの。全体の76.7%が再発し、無再発生存期間の中央値は11.7か月でした(Groot 2018)。
膵癌術後の総肝動脈・上腸間膜動脈周囲軟部腫瘤
- 膵頭十二指腸切除術後、しばしば総肝動脈や上腸間膜動脈周囲に軟部腫瘤(perivascular soft tissue: PVST)を認め、局所再発との鑑別に苦慮することがある
- 乳頭部周囲の悪性腫瘍に対する膵頭十二指腸切除術後→全例(44例)、良性病変に対する膵頭十二指腸切除術後→57.1%に同所見を認めたと報告されている(Ishigami 2008)。
- また、悪性病変に対して膵頭十二指腸切除術を施行した症例のうち29.5%(13例)で増大があり(再発)、13例中12例は2年以内だった(Ishigami 2008)。
- リンパ節転移を有する症例や膵頭部癌では、増大する(再発の)軟部影が有意に多かったと報告している(Ishigami 2008)。
- 従って、同所見は、リンパ管に沿って進展した腫瘍やリンパ節郭清に伴うリンパのうっ滞などをみている可能性があり、少なくとも2年間は厳重に観察する必要があることが示唆される。
症例 60歳代 膵頭部癌にてPD後

引用:World J Gastroenterol . 2011 Mar 7;17(9):1126-34
術後3ヶ月でははっきりしていませんが、11ヶ月では上腸間膜動脈(SMA)周囲にわずかな軟部影を認め、22ヶ月のCTでは上腸間膜動脈(SMA)の根部および遠位周囲に軟部影が増大しており、再発と診断されました。
膵癌術後の腸間膜リンパ節腫大
- 腸間膜リンパ節腫大は悪性病変に対して膵頭十二指腸切除術後→70.5%、良性病変に対して膵頭十二指腸切除術後→52.4%に認め、大きさや形に両群で有意差はなかったと報告されている(Ishigami 2007)。
- また、悪性病変に対して膵頭十二指腸切除術を施行した症例のうち19.4%は、経過中の増大を認めたが、同時に腸間膜根部に再発を伴っていたと報告されている(Ishigami 2007)。
- この点から、膵頭十二指腸切除術後の腸間膜リンパ節腫大単独であれば(腸間膜根部には認めていなければ)、一般的に悪性を疑うリンパ節腫大形態(短径10mmを超える、短径/長径比が1に近い)であっても、強く再発を疑わせる所見ではないと考えられる。
膵癌の遠隔転移の画像診断のポイント
- EOB(ethoxybenzyl)造影MRIは膵癌の肝転移の検出に有用とされるため(Yamaguchi 2022)、臨床的に再発が疑われるにもかかわらず超音波検査やCTにて肝転移が見られない場合には、EOB造影MRIによる評価は有用。
- 肺転移では特に個数が少ない、オリゴ転移では手術適応となることがあるため、その指摘は重要であるが、膵癌の肺転移はhalo signを伴う結節、浸潤影+すりガラス影、すりガラス影などの非典型的な形態を呈することがあるため、注意が必要。消化管・膵の腺癌の肺転移65例では6例(うち膵癌3例)がこうした肺炎や肺腺癌に似た形を示した(Gaeta 1996)。
膵癌(原発巣)の造影CT所見のポイント
- 膵癌は血流の乏しい腫瘍で、造影CTの膵実質相で周りの膵より低吸収の腫瘤として見えます。
- 腫瘤より尾側の主膵管の拡張や膵実質の萎縮、膵頭部癌では総胆管と膵管がともに拡張するdouble duct signが間接所見になります。
- 上腸間膜動脈・腹腔動脈・総肝動脈・門脈系との接し方は、切除できるかどうかの判断に使われます。術後は、これらの血管の周りの軟部影が増えていないかを確認します。
オリゴ転移とは??
遠隔転移を来した病巣の数が数個のみの状態をオリゴ転移という。転移があってもオリゴ転移であれば局所治療を行うことによって長期生存、場合によっては根治に導けることがあることが知られるようになった。
症例 60歳代女性 膵体部癌

膵体部にSMAなど血管を巻き込む乏血性腫瘤を認めており、既知の膵体部癌とわかります。
肝には多数の低吸収域を認め多発肝転移が疑われます。

両側肺野にすりガラス影を主体とする多発結節を認めており、多発肺転移(lepidic metastasis)が疑われます。
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参考文献:画像診断 Vol.43 No.11増刊号 2023 P98-107
- Groot VP, Rezaee N, Wu W, et al. Patterns, Timing, and Predictors of Recurrence Following Pancreatectomy for Pancreatic Ductal Adenocarcinoma. Ann Surg. 2018;267(5):936-945. PubMed
- Ishigami K, Yoshimitsu K, Irie H, et al. Significance of perivascular soft tissue around the common hepatic and proximal superior mesenteric arteries arising after pancreaticoduodenectomy: evaluation with serial MDCT studies. Abdom Imaging. 2008;33(6):654-61. PubMed
- Ishigami K, Yoshimitsu K, Irie H, et al. Significance of mesenteric lymphadenopathy after pancreaticoduodenectomy for periampullary carcinomas: evaluation with serial MDCT studies. Eur J Radiol. 2007;61(3):491-8. PubMed
- Imamura M, Nagayama M, Kyuno D, et al. Perioperative Predictors of Early Recurrence for Resectable and Borderline-Resectable Pancreatic Cancer. Cancers (Basel). 2021;13(10):2285. PubMed
- Yamaguchi T, Sofue K, Ueshima E, et al. Abbreviated Gadoxetic Acid-Enhanced MRI for the Detection of Liver Metastases in Patients With Potentially Resectable Pancreatic Ductal Adenocarcinoma. J Magn Reson Imaging. 2022;56(3):725-736. PubMed
- Gaeta M, Volta S, Scribano E, et al. Air-space pattern in lung metastasis from adenocarcinoma of the GI tract. J Comput Assist Tomogr. 1996;20(2):300-4. PubMed
- 日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン改訂委員会編. 膵癌診療ガイドライン2022年版. 金原出版; 2022(RO7). PDF
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