先に結論:胸骨裂孔(sternal foramen)

  • 胸骨裂孔は胸骨の左右の原基が一部くっつかずに残った穴で、胸骨体の下部に多く、CTで約4〜13%の人に見られる正常変異です
  • 溶骨性病変と間違えないことが大切です
  • 臨床的に重要なのは、胸骨への鍼治療の針が穴を通って心臓まで届き、心タンポナーデで亡くなった報告があることです。骨髄穿刺など胸骨への穿刺でも注意が必要なので、CTで見つけたら報告書に記載しておきます

胸骨裂孔(sternal foramen)

  • 発生学的に左右の原基が一部で融合しないで形成された裂孔。
  • 最も一般的には胸骨体の下部に見られる。
  • CTでは約4〜13%に認められる(下の表)。
  • 左右の原基が広範囲に融合しないとbifid sternum(二分胸骨)となる。

症例 40歳代男性

引用:Radiopaedia

 

胸骨体の下部に裂孔を認めており、胸骨裂孔(sternal foramen)を疑う所見。

頻度は報告によって幅がある

報告 対象 胸骨裂孔の頻度
Yekelerら(2006) 胸部MDCT 1000例 4.5%
Vatziaら(2021) 胸部MDCT 1150例 4.9%
Kuzucuogluら(2020) 胸部CT 912例 8.44%
Boruahら(2016) 胸部MDCT 1180例 11.6%
Gansら(2021) 米国2集団/ボリビア先住民2集団 4.4〜5.1%/12.8〜13.4%

Gansらの検討では男性に多く(オッズ比1.904)、年齢との関連はなかった(Gans 2021)。

CTでの特徴

  • 正中に位置する欠損で、Boruahらの検討では78.8%が胸骨体下部の第5肋軟骨接合部の高さにあった。
  • Kuzucuogluらの検討では胸骨体に66.2%、剣状突起に33.8%が見られた。
  • Yekelerらは、胸骨裂孔は胸骨の硬化帯(sternal sclerotic band)を伴うことが多いと報告している。
  • 報告では横断像に加えて多断面再構成(MPR)・曲面再構成や3D表示を用いて評価されている。

臨床的に重要な理由:裂孔の深部にあるもの

Boruahらの検討では、裂孔の直下にあったのは縦隔脂肪53.3%、前心膜32.1%、肺14.6%であった。胸骨への盲目的な穿刺(骨髄穿刺・鍼など)では、第4〜6肋軟骨接合部の高さを危険域として避けるべきとされている(Boruah 2016)。鍼治療の針が先天性の胸骨裂孔を通り、致死的な心タンポナーデを起こした報告もある(Halvorsen 1995)。

鑑別

  • Yekelerらは、胸骨の変異のMDCT像を知っておくことが病的所見との鑑別に役立つとしている。
  • 剣状突起の孔(xiphoidal foramen):剣状突起に生じる孔で、Yekelerらの検討では27.4%と胸骨裂孔より高頻度である。

Q. 胸の真ん中の骨(胸骨柄の下)が出っ張って触れるのは異常?
A. 胸骨柄と胸骨体のつなぎ目は胸骨角(ルイ角)と呼ばれ、少し前に出っ張って触れる正常構造です。急に大きくなる・痛むなどの変化があれば医療機関を受診してください。

実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの胸部CTの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。全体の見方は胸部CTの縦隔の解剖にまとめています。

参考文献:画像診断に絶対強くなるツボをおさえる!  P141

  1. Yekeler E, Tunaci M, Tunaci A, et al. Frequency of sternal variations and anomalies evaluated by MDCT. AJR Am J Roentgenol. 2006;186(4):956-60. PubMed
  2. Boruah DK, Prakash A, Yadav RR, et al. The safe zone for blinded sternal interventions based on CT evaluation of midline congenital sternal foramina. Skeletal Radiol. 2016;45(12):1619-1628. PubMed
  3. Vatzia K, Fanariotis M, Makridis KG, et al. Frequency of sternal variations and anomalies in living individuals evaluated by MDCT. Eur J Radiol. 2021;142:109828. PubMed
  4. Kuzucuoglu M, Albayrak I. Topographic evaluation of sternal foramen patients with thoracic computed tomography. Surg Radiol Anat. 2020;42(4):405-409. PubMed
  5. Gans BD, Neunuebel AD, Umbarger LJ, et al. High prevalence of sternal foramina in indigenous Bolivians compared to Midwest Americans and indigenous North Americans (sternal foramina in indigenous Bolivians). Anat Sci Int. 2021;96(4):517-523. PubMed
  6. Halvorsen TB, Anda SS, Naess AB, et al. Fatal cardiac tamponade after acupuncture through congenital sternal foramen. Lancet. 1995;345(8958):1175. PubMed

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