先に結論:心房細動のカテーテルアブレーションの合併症
- 心房細動のアブレーション(PVI:pulmonary vein isolation、肺静脈隔離術)は、足の付け根の静脈(大腿静脈)からカテーテルを入れ、心房中隔を通して左房へ進め、肺静脈の入り口の周りを焼く治療です
- 合併症には心タンポナーデ・肺静脈狭窄・横隔神経麻痺・食道周囲の迷走神経障害(胃の動きの低下)などがあります
- 最も重いのが左房食道瘻で、術後数週で発熱・脳梗塞・吐血を起こします。疑ったら造影CT(内視鏡は空気塞栓の危険があり避ける)で評価します
心房細動に対するカテーテルアブレーション
- アブレーション手技は、肺静脈隔離術(PVI:pulmonary vein isolation)と呼ばれ、大腿静脈からシースを挿入、心房中隔を穿刺し、右房から左房にアプローチしてカテーテルを左房に挿入し、肺静脈周囲の焼灼を行うもの。
- 肺静脈周囲の焼灼を行い、肺静脈ー左房間を電気的に隔離することによって、肺静脈からの期外収縮が左房に伝わらなくなるため、心房細動の発症を防ぐことができる。
- 経皮的に行えるカテーテル手技ではあるが、重大な合併症を引き起こす危険性がある。特に左房食道瘻はまれだが致死的で、257例のシステマティックレビューでは、症状出現は術後中央値21日(四分位範囲11〜28日)で、75%に神経学的異常を伴っていた。疑った場合は造影CT(CTA)で評価し、所見がはっきりしなければ短期間で再検する。左房食道瘻の報告例の解析では、胸部CTは87%で異常を示したが、瘻孔・穿孔そのものが明らかだったのは35%にとどまり、縦隔気腫(26%)や左房・左房壁内の空気(24%)が手がかりとなった。初回CTで所見が乏しかった例でも、再検CTでは91%に大きな異常が見つかっている。
PVI(肺静脈アイソレーション)とCT
心房細動のきっかけとなる電気信号の多くは肺静脈から出るため、左房との境目を焼いたり冷やしたりして電気的に隔離します。85施設・16,309例の調査では約8割で症状が消え(抗不整脈薬の併用を含む)、重大な合併症は4.5%でした(Cappato 2010)。
- 術前CT:肺静脈の本数と合流の形、左心耳の血栓を確認します。771例では左の上下肺静脈が共通の入口で入る形が44%と最多、、左右2本ずつの典型例は34.8%でした(Barbora 2024)。
- 術後CT:高周波アブレーション303件では50%以上の肺静脈狭窄が16%にみられ、多くは無症状でした(Oda 2026)。
治療後に発熱・胸痛・息苦しさなどがあれば、早めに治療を受けた医療機関に相談してください。
心房細動に対するカテーテルアブレーションによる合併症
- 心タンポナーデ
- 肺静脈狭窄:過度の焼灼による
- 急性胃拡張:食道周囲迷走神経叢への焼灼による胃蠕動機能低下、胃幽門部攣縮による。
- 横隔神経麻痺:上大静脈周囲を走行する横隔神経の焼灼による。可逆性であることが多い。
- 左房食道瘻
症例 30歳代男性(アブレーション後の肺静脈狭窄による肺静脈性梗塞)

引用:Radiopaedia(Pulmonary venous infarction after cardiac radiofrequency ablation)
高周波アブレーションのあとに左胸痛が出た症例の造影CT(冠状断MIP)です。右の肺静脈はよく造影されていますが、左上・左下肺静脈は細く、造影が不良です。左の胸水と左下葉の浸潤影・無気肺を伴い、肺静脈狭窄による肺静脈性梗塞と考えられた症例です。
あわせて読みたい:肺静脈狭窄とは?心房細動アブレーション後と赤ちゃんの肺静脈狭窄の症状・原因、CTの見方
参考文献:臨床画像 Vol.38 No.7増刊号 2022 p20-22
- Della Rocca DG, Magnocavallo M, Natale VN, et al. Clinical presentation, diagnosis, and treatment of atrioesophageal fistula resulting from atrial fibrillation ablation. J Cardiovasc Electrophysiol. 2021;32(9):2441-2450. PubMed
- Ha FJ, Han HC, Sanders P, et al. Challenges and limitations in the diagnosis of atrioesophageal fistula. J Cardiovasc Electrophysiol. 2018;29(6):861-871. PubMed
- Bugenhagen S, Kolluri N, Tan NY, et al. Utility of CT and MRI in Cardiac Electrophysiology. Radiographics. 2024;44(9):e230222. PubMed
- Cappato R, Calkins H, Chen SA, et al. Updated worldwide survey on the methods, efficacy, and safety of catheter ablation for human atrial fibrillation. Circ Arrhythm Electrophysiol. 2010;3(1):32-8. PubMed
- Barbora F, Ondřej T, David P, et al. Pulmonary Vein Morphology in Patients Undergoing Catheter Ablation of Atrial Fibrillation. Cardiovasc Eng Technol. 2024;15(5):616-622. PubMed
- Oda Y, Nogami A, Usui R, et al. Pulmonary Vein Stenosis After Radiofrequency Ablation for Atrial Fibrillation – A Computed Tomography-Based Analysis of Incidence and Risk Factors. Circ J. 2026. doi:10.1253/circj.CJ-26-0273. PubMed
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