先に結論:気管気管支軟化症

  • 気管気管支軟化症は気管・気管支の壁が弱くなり、息を吐くときに強くつぶれる病気で、しつこい咳・喘鳴・繰り返す感染を起こし、喘息と間違えられやすいです
  • 吸気のCTでは正常に見えるため、診断には呼気(動的)CTが必要で、呼気で内腔が大きく狭くなる・三日月状につぶれる(frown sign)のが特徴です
  • 成人ではCOPD・長期の挿管や気管切開・再発性多発軟骨炎などによる後天性が中心で、小児では先天性が多くみられます

気管気管支軟化症(tracheobronchomalacia)/気管軟化症(tracheomalacia)

  • 気管・気管支壁の脆弱化により呼気時に異常な気道狭窄を生じる疾患。
  • 先天性と後天性(原発性(原因不明)、続発性(外傷、気管切開))に分類される。
  • 後天性(続発性)のものはCOPD、長期の気管挿管・気管切開、再発性多発軟骨炎、慢性炎症、外からの圧排などに伴って起こる。
  • 原因としては高度の咳嗽による胸腔内圧の上昇、さらにはtransluminal pressureの上昇がいわれている。
  • 症状としては、難治性咳嗽、喘鳴、呼吸困難、繰り返す感染。喘息と誤診されることも多い。

気管気管支軟化症のCT所見

  • レントゲンや吸気CTでの診断は困難。
  • 努力性呼気CTで、三日月状の気管の虚脱(frown sign)。
  • 吸気から呼気での内腔面積の大きな減少。従来の基準(50%を超える減少)では、努力呼気CTで健常ボランティアの78%が基準を超えたと報告されており(Boiselle 2009)、閾値だけで診断せず症状と合わせて判断する必要がある。
  • 呼気での虚脱が高度で症状の強い例は、気管を補強する手術の対象として検討されてきた(Rainerらの報告など)。

成人と小児の気管軟化症の違い

  • 成人:COPD、長期の挿管・気管切開、再発性多発軟骨炎、外からの圧排などによる後天性が中心。喘息やCOPDに似て見逃されやすい(Murgu 2006)。
  • 小児:生まれつき気管軟骨が弱い先天性が多く、食道閉鎖・気管食道瘻や血管による圧迫に伴うことがある(Carden 2005)。

気管気管支軟化症の治療

  • まずCOPD・喘息・胃食道逆流など併存する病気の治療、呼吸リハビリ、CPAPを行う。重い例では短期間のステントで効果を確かめ、外科的な気道の補強(気管気管支形成術)を検討する(Kheir 2018)。

 

症例 70歳代男性 口すぼめ呼吸

気管気管支軟化症 胸部CT(呼気) 横断像
引用:Radiopaedia(Acquired tracheobronchomalacia)

呼気時のCTで、胸腔内の気管の前後径が著しく小さくなっています。気管の後壁(膜様部)が前方へ押し込まれ、内腔が三日月状につぶれています(frown sign)。この症例では吸気CTで気管がむしろ拡張しており(気管気管支巨大症の合併)、呼気でこのように強く虚脱することが気管気管支軟化症を示しています。

関連記事:気管気管支断裂(損傷)の画像診断

咳や息苦しさが長く続く、喘息の治療で良くならないといった症状があれば、医療機関に相談してください。

参考文献:

  1. Murgu SD, Colt HG. Tracheobronchomalacia and excessive dynamic airway collapse. Respirology. 2006;11(4):388-406. PubMed
  2. Stern EJ, Graham CM, Webb WR, et al. Normal trachea during forced expiration: dynamic CT measurements. Radiology. 1993;187(1):27-31. PubMed
  3. Boiselle PM, O’Donnell CR, Bankier AA, et al. Tracheal collapsibility in healthy volunteers during forced expiration: assessment with multidetector CT. Radiology. 2009;252(1):255-62. PubMed
  4. Carden KA, Boiselle PM, Waltz DA, et al. Tracheomalacia and tracheobronchomalacia in children and adults: an in-depth review. Chest. 2005;127(3):984-1005. PubMed
  5. Kheir F, Majid A. Tracheobronchomalacia and Excessive Dynamic Airway Collapse: Medical and Surgical Treatment. Semin Respir Crit Care Med. 2018;39(6):667-673. PubMed

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