踵骨骨折
- 足根骨骨折で最も多く60%以上を占める。
- ほとんどが高所から踵で着地するという受傷機転による高エネルギー外傷。
- そのため他の部位の損傷を合併することが多く、脊椎骨折(10%)や反対側の踵骨骨折(10%)を認めることがある。
踵骨骨折の画像所見
- 踵骨は体重維持のため豊富な海綿骨で形成されており、皮質が薄いため、卵の殻を割ったように骨折し、多くは粉砕骨折の形態として認める。
- 踵骨は距骨との3つ関節面(前関節面、中関節面、後関節面)を有し、特に後関節面(後距踵関節)は体重支持の最も重要な役割を担う。
- 画像診断においても後関節面(後距踵関節)の評価が治療や予後に大きく関わり、ここに骨折が及ぶかどうかで関節外骨折もしくは関節内骨折に分けている。
- レントゲンではEssex-Lopresti分類、CTではSanders分類がある。
- 踵骨骨折の診断にはレントゲンの側面像でベーラー(Böhler)角を測定することも有用。
- 踵骨は複雑な解剖学的構造を有し、これに外傷が加わるとレントゲンでは損傷の形態を立体的に把握することは難しいため、CTが有用。
Essex-Lopresti分類
- 関節内骨折を舌状型と関節陥没型する。それ以外に関節外骨折と分類する。
- 舌状型は骨片が後関節面(後距踵関節)を含め踵骨体部より後外側からなる。骨片にアキレス腱が付着しているため、その牽引により骨片の前面が体部の骨内に突き刺さるように転位脱臼する。
- 関節陥没型は後関節面(後距踵関節)が一塊となって陥没したタイプ。
- 術式決定のために有用。
ベーラー(Böhler)角
- レントゲンの側面像で骨折の有無を判定する角度。
- 踵骨前方突起から後距踵関節最上部に引いた線と、踵骨隆起から後距踵関節最上部に引いた線でできる角度のこと。
- 正常は25-40°であるが、これ以下だと骨折を疑う。
- 25°以下の場合は感度100%、特異度82%、21°以下の場合は感度99%、特異度99%になると報告あり。
正常例でベーラー角を測定すると上のようになり、30°程度なので正常範囲であり、骨折はなしと診断できる。
Sanders分類
- 後距踵関節の損傷度に注目した分類。CTで横断像と冠状断像を撮影し、冠状断像で後距踵関節が最大幅となるスライスを用い、骨折線の部位を外側からA,B,Cと定義する。
- TypeⅠ:骨折線の数と関係なく骨片転位なし。→保存的加療
- TypeⅡ:1本の骨折線。→手術(予後良好)
- TypeⅢ:2本の骨折線。→手術(予後良好)
- TypeⅣ:3本の骨折線。粉砕骨折。→手術(予後不良)
参考文献:
- 骨折ハンター P308-311
- 足の画像診断(第2版) P110-115
- レジデントノート Vol.21 No.17(増刊)2020 P214-217