先に結論:大腿骨ステム周囲骨折
- 大腿骨ステム周囲骨折は人工骨頭・人工股関節(ステム)が入った大腿骨が、転倒などで折れる骨折で、高齢化と人工関節の増加で増えています
- 骨折はステムの先端付近やステムの周りに起こりやすく、Vancouver分類などで骨折の位置・ステムのゆるみ・骨の質を評価して、骨接合かステムの入れ替えかを決めます
- 金属のアーチファクトで見にくいため、X線の2方向+必要ならCT(金属アーチファクト低減)で骨折線とゆるみ(ステム周囲の透亮像)を確認します
大腿骨ステム周囲骨折とは?
- 大腿骨近位部骨折後に、大腿骨人工物置換術を受けた患者が転倒などで受傷する。
- 人工物置換術施行症例の増加と超高齢社会により、今後増加が予想される外傷である(Yasen 2014)。
- 人工骨頭・人工股関節では、大腿骨の髄腔に差し込む柄の部分をステム(stem)と呼ぶ。このステムの周りに起こるインプラント周囲骨折を「大腿骨ステム周囲骨折」と呼ぶ。
- 骨折部位とインプラントの位置関係、弛みなどで保存治療、手術治療(骨接合術またはステム入れ換え併用)の治療方針が決まる。
- 骨折部はインプラントが途切れた部分か、インプラント周囲で起こることが多い。
- Baba分類(Baba 2015)、Vancouver分類(Brady 1999)を用いて治療方針を決定する。Vancouver分類は骨折の部位だけでなく、インプラントの安定性(ゆるみの有無)と周囲の骨量(bone stock)を合わせて評価し、治療方針を決める考え方に基づいている。そのため画像では骨折線の位置に加え、ステム周囲の透亮像や骨皮質の菲薄化も読影レポートに記載したい。
症例 70歳代女性

両側人工骨頭あり。
左インプラント周囲に骨折線を認めており、大腿骨ステム周囲骨折と診断されました。
Vancouver分類の型
| 型 | 骨折の部位・ステムの状態 |
|---|---|
| A | 転子部(大転子・小転子)の骨折 |
| B1 | ステム周囲〜先端付近。ステムは固定良好 |
| B2 | ステム周囲〜先端付近。ステムがゆるむ(骨量は保たれる) |
| B3 | ステムがゆるみ、骨量も乏しい |
| C | ステム先端より遠位。ステムは固定良好 |
B2・B3型ではステムの入れ替えが必要とされます(Kunovský 2016)。CTでは骨折線の位置に加え、ステム周囲の透亮像やステムの沈み込みを確認します。Baba分類では、X線にCTとインプラント情報を加えると判定の一致度(κ値)が0.76から0.94に上がりました(Baba 2015)。
Q. インプラント周囲骨折とステム周囲骨折は違うのですか?
A. インプラント周囲骨折は人工物の周りに起こる骨折の総称で、そのうち人工骨頭・人工股関節のステムの周りの大腿骨骨折をステム周囲骨折と呼びます。
人工関節が入っている方で、転倒後に股関節や太ももの痛みがあるときは、早めに医療機関を受診してください。
関連:大腿骨頸部骨折のX線・CT・MRI画像診断|Garden分類、転子部骨折との違いと手術方法
参考文献:
- 神田 章男. 大腿骨ステム周囲骨折. 臨床整形外科 56(5):543-546, 2021(本記事の参照: P543-546)
- 骨折ハンター P64-70
- Brady OH, Garbuz DS, Masri BA, et al. Classification of the hip. Orthop Clin North Am. 1999;30(2):215-20. PubMed
- Yasen AT, Haddad FS. Periprosthetic fractures: bespoke solutions. Bone Joint J. 2014;96-B(11 Supple A):48-55. PubMed
- Baba T, Homma Y, Momomura R, et al. New classification focusing on implant designs useful for setting therapeutic strategy for periprosthetic femoral fractures. Int Orthop. 2015;39(1):1-5. PubMed
- Baba T, Homma Y, Ochi H, et al. Higher reliability and validity of Baba classification with computerised tomography imaging and implant information for periprosthetic femoral fractures. Int Orthop. 2015;39(9):1695-9. PubMed
- Kunovský R, Pink T, Shaker A, et al. [Treatment for Periprosthetic Femoral Fractures after Total Hip Arthroplasty]. Acta Chir Orthop Traumatol Cech. 2016;83(5):317-326. PubMed
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