先に結論:拡散強調像(DWI)で白く見えるもの
- DWIは、組織の中で水分子が動きにくい(拡散制限)場所を白く(高信号)写すMRIです。本当に拡散制限があるかはADC mapで黒く(低下して)いるかで確認します。ADCが下がっていないのにDWIが白いのはT2 shine-through(見かけ上の高信号)です
- 拡散制限が起こる3つの理由:①細胞性浮腫(急性期脳梗塞が代表。発症後早期から白くなる)、②細胞がぎっしり詰まった腫瘍(悪性リンパ腫・小細胞がんなど)、③粘り気の強い液体(脳膿瘍・血腫・類表皮嚢胞など)
- ADCマップは、DWIから計算した「水の動きやすさ」を画素ごとに表した画像です。動きにくい(拡散制限)ほど黒く、動きやすい(水・むくみ)ほど白く写り、DWIとは白黒が逆になります
- 脳梗塞の早期発見に欠かせない一方、DWIが白い=脳梗塞とは限らないため、形・場所・他の撮像法(FLAIR・造影など)と合わせて判断します
拡散強調像(DWI)とは?
非常に有名な拡散強調像について、頭部の画像診断ではどのような意義があるのかということについて見ていきたいと思います。
まず、拡散強調画像はdiffusion weighted imageのことで、その頭文字をとってDWIと呼ばれたり、diffusionと呼ばれることもあります。
DWIは、生体内の水分子の拡散を強調した画像です。
より正確に表現すると「拡散を強調したT2強調像」になります。
そのため、T2値が非常に長い(高信号である)と、拡散制限がない場合でも高信号になることがあります。
これをT2 shine throughと言います。
拡散強調像の高信号がホンモノ(拡散制限あり)なのか、ニセモノ(T2値が長いだけ)なのかを判断するには、ADC mapを利用します。
拡散制限がある場合には、ADCで低信号となるのがポイントです。
ADCマップとは?DWIとの組み合わせで読む
ADCは apparent diffusion coefficient(見かけの拡散係数)の略で、b値を変えて撮った複数の拡散強調像から計算して作る画像がADCマップ(ADC map)です。DWIにはT2強調像の要素が混ざりますが、ADCマップは計算でその影響を除いているため、「本当に水が動きにくいか」をそのまま見ることができます。
| DWI | ADCマップ | 考えること |
|---|---|---|
| 高信号 | 低信号 | 本当の拡散制限(急性期脳梗塞、膿瘍、細胞密度の高い腫瘍、一部の血腫など) |
| 高信号 | 等〜高信号 | T2 shine-through(T2値が長いだけの見かけの高信号。亜急性期以降の梗塞など) |
| 等〜低信号 | 高信号 | 水が多く動きやすい状態(血管性浮腫、嚢胞、慢性期の梗塞など) |
| 低信号 | 低信号(または評価困難) | 出血(ヘモジデリン)や金属・空気による磁化率アーチファクトなど |
脳梗塞ではADCが時間とともに変わる
急性期脳梗塞のADCは、発症後数時間から低下し、その後また上がっていきます。8例を連日撮像した検討では、ADCは発症早期から低下して3日目まで下がり続け、4日目から上昇し、9日目ごろに正常と同じ程度(偽正常化:pseudonormalization)になりました(Fiebach 2002)。その後の慢性期にはADCは正常より高くなります。そのため、DWIで白くてもADCが下がっていない梗塞は、発症から日数がたっている可能性を考えます。
拡散強調像(DWI)の意義
拡散強調像の意義は、
異常な高信号を見つけることにより病変を類推することができる
というところにあります。
拡散強調像でまわりと比べて異常な高信号がないか、を探すわけですね。
白いところを見つけることが大事になります。
なおかつ、ADCが信号低下を来しているのを確認しましょう。
では、その異常な高信号を見つけた時にどういったことが考えられるのかというと、主にこの3つが挙げられます。
拡散強調像で高信号(拡散制限)を示す機序
- 細胞性浮腫
- 細胞密度が高い状態
- 粘稠度が高い状態
細胞性浮腫で最も有名なのが、急性期の脳梗塞ですね。
細胞密度が高い状態というのは、悪性腫瘍、中でも悪性リンパ腫や肺の小細胞癌などが細胞密度が高いので高信号になるということです。
また粘稠度が高い状態、例えば膿瘍や血腫、高粘稠度な液体貯留といったものが拡散強調像で高信号を示すことが知られています。
では、ここから具体例を見ていきましょう。
症例 60歳代男性

拡散強調像で、右の被殻に異常な高信号を示しています。
まわりの脳実質と比べて異常な高信号であり、脳梗塞(ラクナ梗塞)が疑われますね。
ただし、これがADCで低信号を来しているのかを見る必要があります。
ADCを見てみましょう。

このように、DWIの高信号に一致してADCで信号低下を来しています。
これは急性期の脳梗塞(ラクナ梗塞)であるということが分かりますね。
なお、DWIで高信号でもFLAIRではまだ高信号を示さない(DWI-FLAIRミスマッチ)場合は、発症から4.5時間以内である可能性が高いとされます。この考え方を使ったWAKE-UP試験では、発症時刻不明の脳梗塞でもDWI-FLAIRミスマッチがあればアルテプラーゼ静注により、90日後の転帰良好(mRS 0〜1)が53.3%とプラセボの41.8%より多くなりました。
症例 70歳代男性、肺小細胞癌

拡散強調像において、右の半卵円中心の深部白質にリング状の高信号を認めています。
左の方にも複数あり、小脳半球にも認めています。

こういった所見を見た場合、脳転移を疑います。
中でも悪性リンパ腫や肺小細胞癌といったような細胞密度が高いものが、このように高信号を示すことがありますので注意が必要です。
これもADCを確認してみましょう。

リング状の高信号だった部位に一致して、ADCで信号低下を来しています。
拡散制限がある、ということが分かりますね。
転移性脳腫瘍だからといって必ずしもこのような所見を呈する訳ではないですが、(頻度としては低いものの)悪性リンパ腫や小細胞癌のような細胞密度の高い脳腫瘍においては、拡散強調像で高信号かつADCで低信号を来すことがあります。
症例 70歳代男性

左の被殻から広範に異常な高信号を認めています。
また、左側脳室内にも高信号が及んでいます。
これは、血腫(脳出血および脳室内穿破)ですね。
血腫だからと言って必ずしも拡散強調像で高信号になる訳ではありませんが、血腫で濃度が高い場合、拡散強調像で高信号になります。
ADCを見てみましょう。

脳室内の血腫や被殻の周りの血腫は、ADCで信号低下を認めています。
拡散制限があるということですね。
このように、血腫においても拡散強調像で高信号を示して、ADCの低信号を来すことがあります。
同日の頭部CTも見てみましょう。

左の被殻出血があり、脳室内に穿破している様子がよく分かります。
高吸収になっている部分、中でも血腫の密度の高いところが拡散強調像で高信号を示して、ADCの信号低下を来すということがあるということですね。
ただし、血腫だから必ずしもこうなるという訳ではありません。
症例 70歳代男性

左の側頭葉の脳実質内に、拡散強調像で異常な高信号を均一に認めています。
こちらもADCで見てみましょう。

ADCでも著明な低信号を来していますね。
このような所見を見た場合には、脳膿瘍の可能性があります。
造影MRIも撮影されました。
造影のT1WIになります。

辺縁にリング状の造影効果を認めていて、周囲には浮腫性変化を認めています。
この方は、脳膿瘍と診断されました。
このように内部に粘稠な液体が貯まっている場合は、拡散強調像で高信号となり、ADCで低信号を来します。
まとめ
症例で見てきたように、拡散強調像で高信号を示すものには、主に3つの機序があります。
急性期脳梗塞である細胞性浮腫、小細胞癌や悪性リンパ腫のように細胞密度が高い腫瘍というのは拡散強調像で高信号を示すことがあるということですね。
あとは、粘稠度が高い状態ということで、膿瘍や血腫、高粘稠度の液体貯留といったもので高信号となります。
拡散強調像と言うのは異常な高信号を見つけ、その際にADCの信号低下も確認することが大事です。
ADCの信号低下を認めていた際には、先ほど挙げた病態が考えられるので、どれかに合致しないかと考えることが重要となります。
拡散強調像(DWI)のアーチファクトと見逃しに注意
DWIは短時間で撮れるエコープラナー法(EPI)で撮ることが多く、特有のアーチファクト(偽像)があります。
特に磁化率アーチファクトは、空気と骨が接する場所(副鼻腔・乳突蜂巣に近い前頭葉底部・側頭葉底部・脳幹周囲)や歯科金属の近くで画像をゆがませ、白い・黒い偽の信号を作ります。ほかに、脳の像が位相方向にずれて重なるゴースト(N/2アーチファクト)や、体動による信号ムラもあります。この場所の高信号は、ゆがみがないか他の撮像法と見比べて判断します。
反対に、本当の梗塞がDWIで写らない(偽陰性)こともあります。発症48時間以内にMRIを撮った脳梗塞139例の検討では、初回DWIの5.8%が偽陰性で、後方循環(19%)のほうが前方循環(2%)より多く、偽陰性の多くは脳幹の小さな梗塞でした(Oppenheim 2000)。症状が続くときは、DWIが正常でも再検査を考えます。
T2 blackout:T2で強く低信号の病変ではADCが当てにならない
DWIの信号は「拡散のしにくさ」だけでなく、もともとのT2の信号の強さにも左右されます。T2で高信号の病変が拡散制限なしにDWIで白く見えるのがT2 shine-throughで、その反対がT2 blackoutです。血腫のようにT2が強く短縮した部分では、b=0の画像の時点で信号がほとんどなく、DWIでも黒く見えます。
- 脳内血腫33例の検討では、急性期(デオキシヘモグロビン)と亜急性早期の血腫の中心はT2強調EPIでもDWIでも低信号で、DWIの低信号はT2 blackoutによると考えられました(Silvera 2005)。
- T2で暗い血腫12例でADCを計算し直した検討では、信号が背景の雑音に近い部分でADCを機械的に計算すると誤った値になりうることが示され、T2 blackoutによるDWIの低信号を「拡散が速い」と解釈してはいけないとされています(Maldjian 2001)。
- 骨軟部領域の総説でも、T2 shine-throughとT2 blackoutは拡散強調像の代表的な落とし穴として挙げられています(Kim 2023)。
DWIで黒く、ADCの値が不自然なときは、b=0の画像やT2強調像でもともと信号がないかを確認し、信号がなければADCの数値で拡散の程度を判断しないようにします。
拡散強調像・ADCでよくある疑問(Q&A)
Q. 脳梗塞はCTよりMRIのDWIのほうが見つけやすいですか?
A. はい。救急で脳卒中が疑われた356例の比較では、急性期脳梗塞を見つけた割合はMRI(DWIを含む)で46%、CTで10%で、最終診断に対する感度はMRI 83%、CT 26%でした(Chalela 2007)。
あわせて読みたい:T2 shine-through(T2シャインスルー)とは?ADCマップの意味と脳梗塞との見分け方(DWI・ADC)、MRIの基礎・原則
参考文献
- Schaefer PW, Grant PE, Gonzalez RG. Diffusion-weighted MR imaging of the brain. Radiology. 2000;217(2):331-345. PubMed
- Thomalla G, Cheng B, Ebinger M, et al. DWI-FLAIR mismatch for the identification of patients with acute ischaemic stroke within 4·5 h of symptom onset (PRE-FLAIR): a multicentre observational study. Lancet Neurol. 2011;10(11):978-986. PubMed
- Thomalla G, Simonsen CZ, Boutitie F, et al. MRI-Guided Thrombolysis for Stroke with Unknown Time of Onset. N Engl J Med. 2018;379(7):611-622. PubMed
- Roberts TP, Rowley HA. Diffusion weighted magnetic resonance imaging in stroke. Eur J Radiol. 2003;45(3):185-94. PubMed
- Fiebach JB, Jansen O, Schellinger PD, et al. Serial analysis of the apparent diffusion coefficient time course in human stroke. Neuroradiology. 2002;44(4):294-8. PubMed
- Oppenheim C, Stanescu R, Dormont D, et al. False-negative diffusion-weighted MR findings in acute ischemic stroke. AJNR Am J Neuroradiol. 2000;21(8):1434-40. PubMed
- Chalela JA, Kidwell CS, Nentwich LM, et al. Magnetic resonance imaging and computed tomography in emergency assessment of patients with suspected acute stroke: a prospective comparison. Lancet. 2007;369(9558):293-8. PubMed
- Silvera S, Oppenheim C, Touzé E, et al. Spontaneous intracerebral hematoma on diffusion-weighted images: influence of T2-shine-through and T2-blackout effects. AJNR Am J Neuroradiol. 2005;26(2):236-41. PubMed
- Maldjian JA, Listerud J, Moonis G, et al. Computing diffusion rates in T2-dark hematomas and areas of low T2 signal. AJNR Am J Neuroradiol. 2001;22(1):112-8. PubMed
- Kim Y, Lee SK, Kim JY, et al. Pitfalls of Diffusion-Weighted Imaging: Clinical Utility of T2 Shine-through and T2 Black-out for Musculoskeletal Diseases. Diagnostics (Basel). 2023;13(9):1647. PubMed
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お世話になっております。
頭部のDWIについて質問なのですが、占拠性病変の無い方でも前頭葉や側頭葉に線上のような高信号を認めることがあると思いますが、こちらは何を反映して高信号を示しているのでしょうか。ADCで低値にはなっておらず拡散制限が無いのはわかるのですが、なんでと問われると答えられないでいます。
お手数をおかけしますが、ご回答いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
おっしゃっている高信号は磁化率アーチファクトと呼ばれるアーチファクトで、空気や骨などと通常の軟部組織や水などの境界で大きく磁化率が異なるために生じます。
頭蓋底で頻度が高く、側頭葉下外側、橋前部などでも見られることがあります。