MRIにおけるFLAIRとその意義とは?
まず、FLAIRとはfluid attenuated inversion recoveryの頭文字を略したものです。
fluid attenuatedとは液体(の信号)を減弱させたという意味があり、inversion recoveryはIR法ということで、(髄液濃度の)液体のみを無信号にしたT2強調画像となります。
つまり、T2強調像では髄液は高信号になりますが、その髄液濃度と同じ液体の高信号を取り払って無信号にしたものがFLAIR像です。
では、なぜFLAIR像が撮られるのでしょう。
FLAIR像は主に頭部で用いられ、頭部以外では通常撮影されません。
その理由は、以下のようなFLAIR像の特徴にあります。
脳脊髄液などの液体に接した病変を正確に評価できる
T2強調像においては脳の実質と脳脊髄液は隣接しており、なにか浮腫があった場合、高信号と高信号になるため脳表が評価しにくいことがあります。
そのため、脳表の髄液を消すことによって、病変を正確に評価できるのが利点です。
液化した病変かどうか、その液体が純粋な液体かどうかを評価できる
脳脊髄液と等信号、同じ性質のものかどうかを評価できます。
また、T2強調像において脳脊髄液と同じ高信号を示していても、実は出血や蛋白濃度の高い液体貯留の場合もあるので、それが本当に脳脊髄液と同じ程度の信号なのかを判断するのに、FLAIRは非常に有用になります。
症例 70歳代男性
T2強調像において、左の前頭部脳実質に脳脊髄液と同じような高信号を認めています。
だからといって、これが本当に脳脊髄液と同じ性質であるかはわかりません。
出血の可能性もあるわけです。
ここでFLAIR画像が有用となってきます。
FLAIRで見ると、T2強調像で高信号だった部分は脳脊髄液と同じように抜けており、脳脊髄液と同じような嚢胞であると言えます。
すなわち、くも膜嚢胞が疑われると診断することができます。
症例 60歳代男性
T2強調像で左被殻に高信号を認めています。
かなり高信号が強いので陳旧性の脳梗塞を疑いますが、T2強調像だけを見ているとこれが白質変性したものなのか、陳旧性のラクナ梗塞なのか少し分かりにくいですよね。
この症例ではおそらくラクナ梗塞であろうと推定されますが、これがFLAIR画像において内部が抜けて辺縁に高信号があればこれは脳梗塞であるというように診断することができます。
FLAIRで見ると、このように内部が抜けて辺縁に高信号を伴っているので、これは白質変性ではなくて陳旧性のラクナ梗塞であると診断することができます。
症例 40歳代男性
こちらは外傷で来られた方の頭部CTです。
このように、頭頂部後頭葉の脳溝に沿った高吸収を認めています。
外傷性のくも膜下出血だということがわかります。
このあとフォローのMRIが撮影されました。
6日後のT2強調像になります。
上顎洞に粘膜肥厚を認めています。
先ほどの頭頂部を見てみましょう。
くも膜下腔に明らかな出血を疑うような所見は認めていません。
6日後なので外傷性のくも膜下出血はひいてしまったようにも考えられます。
ですが、これをFLAIRで見てみると、
脳溝に沿った高信号が残っています。
つまり、外傷性のくも膜下出血は完全には消失していないということになります。
このように、脳脊髄液に接するところや、まさに脳脊髄液があるところの評価にはFLAIRが非常に適しているということがわかります。
まとめ
FLAIRは、脳脊髄液などの液体に接した部分(脳表や脳溝)の病変を正確に評価することができます。
特に、くも膜下出血や髄膜炎などで有用です。
また、その高信号が本当に液体なのか、脳脊髄液と同じ程度の液体なのかどうかを知るためにはT2強調像だけでは分かりません。
FLAIRをみて脳脊髄液と同じように抜けていれば、それが脳脊髄液と同じような液体であるということが初めて分かります。
このような点がFLAIRの意義だと言えます。
いつもお世話になっております。
intraarterial signをの有無を見る事で、脳梗塞が起こっているかや部位を推測することができるといった意義はないのでしょうか?
コメントありがとうございます。
おっしゃるようにその意義もあります。