先に結論:漏斗胸のレントゲン・CT

  • 漏斗胸は、胸骨とまわりの肋軟骨が内側にへこむ生まれつきの胸の形の変化で、最も多い胸壁の変形です(男の子に多い)。多くは見た目の問題だけですが、強いと息切れ・動悸・疲れやすさが出ることがあります
  • 胸部レントゲン正面像では、右心の輪郭が見えにくい・右下肺の内側が白っぽい(肺炎や中葉の無気肺に似る)・前の肋骨が急な角度で下がるのが特徴で、肺炎と間違えないことが大切です。側面像で胸骨のへこみが確認できます
  • CTではHaller indexで重症度を測り、手術(Nuss法など)の判断に使います。Marfan症候群に伴うこともあり、大動脈の拡張にも注意します

漏斗胸とは?

  • 漏斗胸は胸骨とそれに接合する肋軟骨の陥凹偏位である。
  • 最も多い胸壁変形で、胸壁変形全体の65〜95%を占める(Małek 2025)。
  • 頻度は出生約400人に1人とされる(Robbins 2011)が、定義が統一されておらず正確な頻度は不明(Janssen 2024)。
  • 男性は女性より3〜5倍多いと報告されている。多くは単独で起こるが、Marfan症候群などの一症状として起こることもある(Janssen 2024)。
  • 原因は、肋軟骨の過剰な成長や成長の異常とする仮説が有力で、遺伝的な素因もあると考えられている(Janssen 2024)。
  • 前胸部の形状には、深く限局性の明瞭な陥凹(cup-shaped concavity)や、浅く広い陥凹(saucer-shaped concavity、flat chest)などさまざま。
  • 変形の程度により、心臓の圧迫による運動時の息切れ、胸痛、動悸、失神しそうになる感じ、体力の低下などが出現しうる(Małek 2025)。僧帽弁逸脱は漏斗胸の40.6%(対照12.8%)にみられた(Sonaglioni 2024)。

漏斗胸の画像所見

  • 陥凹した胸骨そのものは単純X線側面像でないと描出できない。
  • 単純X線正面像では、
  • 背側の肋骨では通常より水平方向、外側〜腹側の肋骨は急峻に下斜め方向に走行する。
  • 心臓が左方偏位し、右心陰影が消失する。
  • 右下肺野内側に中葉無気肺に類似した陰影が生じる。
  • これらの所見は軽いことが多く、1人にすべてがそろうことはまれ(Hapuarachchi 2019)。

と言った所見を認める。

  • CTでは胸骨の陥没が明瞭となり、胸郭の横径を胸骨と椎体の最短距離で割ったHaller indexで重症度を評価する。最初の報告では、手術が必要だった例はすべて3.25を超え、正常対照はすべて3.25未満で(Haller 1987)、3.25以上が手術(Nuss法など)を検討する目安とされる(Janssen 2024)。Nuss法は肋軟骨の切開・切除を行わず、胸骨の裏に凸型の金属バーを通して反転させて陥凹を持ち上げる低侵襲手術で、約2年後にバーを抜去する。術後の合併症として気胸やバーの位置ずれが報告されており、術後画像ではこれらに注意する。
  • Marfan症候群の一部として漏斗胸が認められることがあるため、大動脈起始部拡張などを除外することは必要。

漏斗胸のCT指標(Haller indexとcorrection index)

指標 測り方 手術の目安
Haller index 最も深くへこんだ高さで、胸郭の最大横径 ÷ 胸骨(へこみ)と椎体の最短距離 3.25以上
correction index(PCI) (胸の前壁内側までの最大距離−胸骨と椎体の最短距離)÷最大距離×100 28%がHaller index 3.25に相当

胸部X線で計算したHaller indexもCTの値とよく相関します(Janssen 2024)。

症例 40歳代女性

右下肺野内側に濃度上昇を認めています。

浸潤影や無気肺(中葉)のようにも見えます。

また右心陰影がはっきりしません。

また正常例と比較してみると、前肋骨の角度が正常よりも急峻であることがわかります。

第一肋骨と胸骨との接合部位も正常よりもだいぶ下ですね。

CTが撮影されました。

肺野に浸潤影や腫瘤影は認めませんでした。

胸骨が内側に陥没しており、いわゆる漏斗胸の形態です。

漏斗胸によって胸部レントゲンの浸潤影様所見、右心陰影の不明瞭化、前肋骨の急峻化を認めていたと言うことが分かります。

漏斗胸の胸部XPについて正しいものを一つ選べ。

  • 前肋骨の角度が正常である
  • 前肋骨の角度が正常よりもなだらかとなる
  • 前肋骨の角度が正常よりも急峻となる

正解!

不正解...

正解は前肋骨の角度が正常よりも急峻となるです。

背側の肋骨では通常より水平方向、外側〜腹側の肋骨は急峻に下斜め方向に走行します。そのため、前肋骨の角度が正常よりも急峻となります。

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漏斗胸でよくある疑問(Q&A)

Q. 漏斗胸はレントゲンだけでわかりますか?
A. 正面像の所見は肺炎や中葉の無気肺と間違えられることがあります(Robbins 2011)。胸骨のへこみは側面像やCTで確かめます。

※運動時の息切れや動悸、胸の痛みが気になる場合は、医療機関に相談してください。

参考文献:

画像診断 Vol.31 No.5 2011 P380
単純X線写真読影のためのキーワード201 P198

  1. Haller JA, Kramer SS, Lietman SA. Use of CT scans in selection of patients for pectus excavatum surgery: a preliminary report. J Pediatr Surg. 1987;22(10):904-906. PubMed
  2. Nuss D, Kelly RE, Croitoru DP, et al. A 10-year review of a minimally invasive technique for the correction of pectus excavatum. J Pediatr Surg. 1998;33(4):545-552. PubMed
  3. Janssen N, Coorens NA, Franssen AJPM, et al. Pectus excavatum and carinatum: a narrative review of epidemiology, etiopathogenesis, clinical features, and classification. J Thorac Dis. 2024;16(2):1687-1701. PubMed
  4. Małek Ł, Lemańska A, Śpiewak M. Pectus Excavatum-A Frequent but Often Neglected Entity in Sports Cardiology. Diagnostics (Basel). 2025;15(23):2956. PubMed
  5. Sonaglioni A, Bruno A, Polymeropoulos A, et al. Prevalence of Mitral Valve Prolapse Among Individuals with Pectus Excavatum: A Systematic Review and Meta-Analysis. Diagnostics (Basel). 2024;14(22):2488. PubMed
  6. Hapuarachchi KS, Cowan IA. The medial breast margin sign: A new sign of pectus excavatum in adult females and comparison with classic signs. J Med Imaging Radiat Oncol. 2019;63(6):737-744. PubMed
  7. Robbins LP. Pectus excavatum. Radiol Case Rep. 2011;6(1):460. PubMed

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