健康診断や人間ドックを受けて、異常ありという所見で要精密検査と言われると不安になりますよね。

でも、胸部X線結果で影があったりして、異常ありと言われても、すぐに治療しなければならない・入院しなければならないというわけではありません。

あくまでも、異常がないことを確かめるために精密検査をするということがほとんどです。

しかし、異常ありという結果が出たらどんな病気の可能性があるのか気になるところですよね。

今回は、

  • 胸部X線(レントゲン)の所見が異常だった場合に考えられる病気
  • 精密検査はどんなことをするのか

これらについて、わかりやすく説明していきますね。

胸部レントゲンの所見が異常ありの場合に考えられる病気は?

胸部レントゲン検査でわかることは大きく分けて9つにわけられます。1)

  • 肺の異常
  • 心臓の異常
  • 動脈の異常
  • 横隔膜の異常
  • 縦隔の異常
  • 気管支の異常
  • 胸膜・胸壁の異常
  • 肋骨の異常
  • リンパ節の異常(サルコイドーシスなど)

ではそれぞれについて詳しくみていきましょう。

肺に異常がある場合に考えられる疾患

肺に異常がある場合に考えられる疾患は以下になります。

  • 肺腫瘍(肺がん・良性肺腫瘍)
  • 転移性肺腫瘍(てんいせいはいしゅよう)
  • 気胸(ききょう)
  • 肺結核(はいけっかく)
  • 陳旧性肺結核(ちんきゅうせいはいけっかく)
  • 陳旧性肺病変(ちんきゅうせいはいびょうへん)
  • 結核性抗酸菌症(ひけっかくせいこうさんきんしょう)
  • 肺水腫(はいすいしゅ)
  • 肺気腫(はいきしゅ)
  • 肺嚢胞症(はいのうほうしょう)
  • 塵肺症(じんはいしょう)
  • 中葉症候群(ちゅうようしょうこうぐん)
  • 肺アスペルギルス症
  • 肺炎(はいえん)
  • 間質性肺炎(かんしつせいはいえん)
  • 肺線維症(はいせんいしょう)
  • 肺化膿症(はいかのうしょう)

では、この中から、人間ドックのレントゲン検査の所見が異常だった場合に見つかる主な疾患、肺腫瘍についてみていきましょう。

肺腫瘍・転移性肺腫瘍

肺腫瘍の場合、腫瘍の組織型によって、X線画像の特徴が違うのですが、結節影(直径3cm以下の類円系の陰影)・辺縁が不明瞭・辺縁が明確なものなど様々です。2)3)

影の特徴や、前年の結果との比較喫煙習慣長期の咳症状の有無などから疑われる疾患がしぼられます。2)

肺に腫瘍性病変を認めた場合、より精密検査として、胸部CT検査を勧められます。

症例 70歳代男性

胸部レントゲンで左の上肺野に腫瘤影を認めています。
内部には空洞を有しているのがわかります。

胸部CTによる精密検査で内部に空洞を有する肺腫瘍を認めています。
生検にて肺がん(肺腺癌)と診断されました。

 

次は心臓に異常がある場合についてみていきましょう。

心臓に異常がある場合に考えられる疾患

心臓に異常がある場合に見られうる疾患は以下です。

  • 心不全(しんふぜん)

心不全の場合のX線画像は、一般的に心臓が拡大するという特徴があり、他にも肺に水がたまることもあります。
こういった場合は、心不全の可能性が考えられます。4)

次は動脈です。

動脈に異常がある場合に考えられる疾患

胸部レントゲンで動脈というと大動脈と肺動脈が主にありますが、ここでいう動脈は大動脈のことです。

動脈に異常がある場合に見られうる疾患は以下です。

  • 大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)
  • 動脈硬化(どうみゃくこうか)

どちらも、大動脈の拡大や石灰化、大動脈の拡張や蛇行が見られます。5)

症例 80歳代男性

胸部レントゲンで縦隔の開大を認めています。

胸部CTの縦隔条件では、大動脈弓部に大動脈瘤を認めており、これが原因で、縦隔の開大を形成していることがわかります。

 

次は横隔膜についてです。

横隔膜に異常がある場合に考えられる疾患

横隔膜に異常がある場合に見られうる疾患は以下です。

  • 横隔膜弛緩症(おうかくまくしかんしょう)
  • 横隔膜ヘルニア(おうかくまくへるにあ)
横隔膜弛緩症・横隔膜ヘルニア

X線画像では横隔膜が上に上がっている状態になります。1)

横隔膜ヘルニアの場合、腹腔にあるべき臓器が胸腔に入り込むことがあります。

症例 30歳代男性

両側横隔膜の挙上を認めています。

肥満による横隔膜挙上が疑われます。

 

次は縦隔に異常がある場合についてです。

縦隔に異常がある場合に考えられる疾患

縦隔とは、胸部の左右の肺と後ろ側の胸椎、前側の胸骨に囲まれた部分です。

縦隔に異常がある場合には、以下の疾患の可能性が考えられます。

  • 縦隔気腫(じゅうかくきしゅ)
  • 縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)
縦隔気腫

縦隔気腫とは、縦隔内の気道系や消化管系器官以外のところに空気が存在する状態のことです。
X線検査では、心臓の陰影にほぼ平行に出現する線状陰影や、頸部や胸部外側の皮下気腫陰影も見られます。6)

症例 60歳代男性

レントゲンで、本来の肺野の周りに空気を示す低吸収域を多数認めています。

心臓や気管支、大動脈沿いにも空気を認めています。

胸部CTでは右側に皮下気腫及び縦隔気腫を認めています。

縦隔腫瘍

縦隔腫瘍は、縦隔内に発生する腫瘍や嚢腫のことです。7)

 

次に気管支の異常についてみていきましょう。

気管支に異常がある場合に考えられる疾患

気管支に異常がある場合に考えられる疾患は以下です。

  • 気管支拡張症(きかんしかくちょうしょう)
  • びまん性汎細気管支炎(びまんせいはんさいきかんしえん)
  • 慢性気管支炎(まんせいきかんしえん)

ではそれぞれについてみてみましょう。気管支拡張症

気管支拡張症とは、気管支の異常な拡張がみられ、収縮することがない病気です。
咳や喀痰、呼吸困難といった症状が出ます。8)

症例 60歳代女性

右上肺野〜中肺野〜下肺野内側に気管支拡張を認めています。

胸部CTでは右の中葉に気管支拡張を認めている様子がわかります。

肺炎後の気管支拡張症としてフォローされています。

びまん性汎細気管支炎

びまん性汎細気管支炎とは、呼吸細気管支の慢性炎症が肺の中に広範囲に広がる病気です。
湿った咳や多量の喀痰、労作時の息切れが特徴となります。9)

慢性気管支炎

慢性気管支炎は、気道の粘液が過剰に分泌し、たんを伴う咳が1年間で少なくとも3ヶ月以上、少なくとも2年以上にわたるものを言います。10)

 

では、次に胸膜と胸壁の異常についてです。

胸膜・胸壁に異常がある場合に考えられる疾患

胸膜・胸壁に異常がある場合に考えられる疾患は以下です。

  • 胸膜炎(きゅうまくえん)
  • 陳旧性胸膜炎(ちんきゅうせいきょうまくえん)
  • 胸膜腫瘍(きゅうまくしゅよう)
  • 胸膜中皮腫(きゅうまくちゅうひしゅ)
  • 胸壁腫瘍(きゅうへきしゅよう)

それぞれについてみてみましょう。

胸膜炎・陳旧性胸膜炎

胸膜炎とは、肺と胸壁の間に位置する胸膜に炎症が起きた状態のことです。

症状としては、労作時の息切れ・呼吸困難・胸痛があり、他に原疾患によって、咳・痰・発熱・体重減少などもあります。
胸部X線の画像では、胸水が溜まっていることが確認されます。11)

陳旧性胸膜炎は、過去に起こした炎症などの形跡で、胸水の他に胸膜の肥厚や石灰化がみられます。1)

症例 70歳代 男性

レントゲンで右肺が下肺野を中心に収縮しており、線状影を認めています。石灰化もあり。

胸部CTで右胸膜の石灰化と肺の収縮を認めており、陳旧性結核性胸膜炎を疑う所見です。

症例 50歳代女性 レントゲンで肺結節指摘あり

レントゲンで右上肺野に結節影を指摘されてCT検査で精査となりました。

CTでは該当する高さに胸膜の石灰化を認めており、陳旧性胸膜炎を疑う所見です。

胸膜腫瘍・胸膜中皮腫・胸壁腫瘍

胸膜や胸壁に発生する腫瘍で、胸膜中皮腫はアスベスト(石綿粉塵)の曝露による悪性腫瘍です。
症状には、胸痛・呼吸困難・嚥下困難・声のかすれなどがありますが、無症状の場合もあります。1)12)

症例 50歳代男性

左中肺野に肺実質外病変を示唆するextrapleural signを認めています。

胸部CTで胸壁腫瘤が確認されました。手術になり、神経原性腫瘍(神経鞘腫)と診断されました。

 

次は、肋骨の異常についてです。

肋骨に異常がある場合に考えられる疾患

肋骨に異常がある場合は以下です。

  • 肋骨腫瘍
  • 肋骨骨折

肋骨腫瘍は転移性骨腫瘍が多く、乳がんや前立腺がんからの転移が多いとされています。1)

また、肋骨骨折もレントゲンでわかることがあります。

古い骨折は骨硬化を示すため、肺腫瘤や肋骨腫瘍と鑑別が難しい場合もあります。

 

他にも全身の臓器に起こりうるサルコイドーシスという疾患もわかります。
次で見てみましょう。

サルコイドーシス

サルコイドーシスとは、ラテン語で肉のようなものができる病気という意味で、原因不明の多臓器にわたる疾患です。

類上皮細胞肉芽腫(るいじょうひさいぼうにくげしゅ)と呼ばれる肉のかたまりのような組織ができます。
全身のあらゆる臓器で発症する病気ですが、とくに両側肺門リンパ節・肺・眼・皮膚に高頻度であらわれる疾患です。

とくに両側肺門リンパ節腫大が胸部レントゲン上特徴的であり、英語で、bilateral hilar lymphadenopathyの頭文字をとってBHLと呼ばれます。

他にも神経・筋肉・心臓・腎臓・骨・消化器などにも罹患します。

がんとは違い、悪性腫瘍ではなく自然消失することが多いため、フォロー(経過観察)しながら、無治療もしくは必要に応じてステロイド剤などで治療します。13)

X線画像では、網状影・結節影(直径3cm以下の丸い陰影)・小粒状の影・浸潤影(肺胞などに液体成分が入り込んだ不明確な陰影)などがみられます。

症例 30歳代女性 サルコイドーシス

両側の肺門部のリンパ節腫大(上で述べたBHL)を認めています。

サルコイドーシスに矛盾しない胸部レントゲン所見ですね。

 

では、胸部レントゲンで異常があった場合の精密検査について、次で説明しますね。

胸部レントゲンで異常があった場合の精密検査とは?

胸部レントゲンで異常があった場合は、胸部CT検査をします。

 

胸部レントゲンは、胸部全体の画像情報をひと目で把握できる優れた検査です。

しかし、その画像から得られた陰影だけでは、確実な診断ができない場合もあります。

胸部X線(単純X線)は立体である胸部全体を2次元に圧縮した画像です。
ですので、胸部の前後にある臓器などが重なって見えるため、小型の陰影は認識が困難になります。

そこで、体の断面を見ることのできるCT検査をすることで、さらに詳しい画像から疾患を特定していくのです。

疾患によっては、胸部MRIでの検査をすることもあります(縦隔腫瘍などの場合)。

そして、その疾患が活動性であったり、悪性である場合など治療が必要であれば、専門医へ紹介されます。14)

参考
1)公益社団法人 人間ドック学会HP 胸部エックス線
2)人間ドック検診の実際 監修 日本人間ドック学会 p70-72
内科診断学 第2版 3) p748-749、4)p791、5) p814.817、6)p758、7)p751、8)p735-736、9) p730、10)p733、11)p758-759、12)p752-753、13)p712
14)人間ドック検診の実際 監修 日本人間ドック学会 p75-76

まとめ

それでは、今回の内容をまとめます。

  • 胸部レントゲンの所見が異常ありの場合に考えられる疾患の部位
    • 肺の異常
    • 心臓の異常
    • 動脈の異常
    • 横隔膜の異常
    • 縦隔の異常
    • 気管支の異常
    • 胸膜・胸壁の異常
    • 肋骨の異常
    • リンパ節の異常(サルコイドーシスなど)
  • 胸部レントゲンで異常があった場合の再検査は胸部CT検査

 

胸部レントゲンの所見がD2で要精密検査であった場合でも、精密検査をすることで異常がないこともあります。

もし怖い病気だったら・・・と思う気持ちもあるかもしれませんが、異常がないことを確かめること、病気の早期発見をするというのは大切なことです。

要精密検査という結果が出たら、必ず受けるようにしてくださいね。

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