脳梗塞は脳の血管が閉塞し、脳実質が虚血から壊死に陥ってしまうことを言います。
脳梗塞には主に3つの種類(分類)があり、それぞれ重症度や、症状、治療法が異なります。
この種類がなかなか難しくて、私も学生や研修医のころ、教科書などを読んでも最初はピンときませんでした。
そこでイラストなどを作成し、今回は脳梗塞の種類についてまとめました。
脳梗塞の種類(分類)とは?
脳梗塞は大きく、
- 心原性塞栓(心原性脳梗塞)
- 非心原性塞栓
の2つに分けることができます。
非心原性塞栓はさらに、
- アテローム血栓性脳梗塞
- ラクナ梗塞
に分けることができます。
ですので、しばしば教科書などでは脳梗塞の種類(分類)はこの
- 心原性脳梗塞
- アテローム血栓性脳梗塞
- ラクナ梗塞
の3つに分けられます。
では次にこれらの違い、特徴についてみていきましょう。
心原性脳梗塞とは?
心原性脳梗塞は、心臓の主に左心耳や左心房に出来た血栓が脳に飛んできて脳の血管が詰まることにより起こる脳梗塞です。
心房細動(Af)を背景とすることが多いです。
イラストで表すと次のようになります。
突然血栓が飛んできますので、詰まった血管の支配域に一致して広範な脳梗塞を起こすことが多く、症状も
- 突然発症
- 意識障害
- 共同偏視
と重篤なことが多いのが特徴です。
心原性脳梗塞のCT,MRI画像所見は?
CTやMRIの画像では、詰まった血管の支配域に一致して皮質を含んだ広範な脳梗塞像として捉えられます。
実際の画像を見てみましょう。
症例 70歳代女性 意識レベル低下、左半身麻痺
頭部CTの横断像です。
左の中大脳動脈領域に一致して、皮質を含んだ低吸収域を広範に認めています。
心房細動もあり、心原性脳梗塞と診断されました。
関連記事:【保存版】心原性脳梗塞とは?症状、画像診断、治療法のまとめ!
次にアテローム血栓性脳梗塞について解説します。
アテローム血栓性脳梗塞とは?
アテローム血栓性脳梗塞は太い血管に粥状動脈硬化が起こることが原因で起こる脳梗塞です。
アテローム血栓性脳梗塞はさらに
- 血栓性
- 塞栓性
- 血行力学性
の3つに分けることが出来ます。
血行性とは、粥状動脈硬化が進行した結果、脳の血管が閉塞してしまい起こる脳梗塞です。
塞栓性とは、粥状硬化に伴って形成された血栓の一部が崩壊し、塞栓子となって末梢の動脈を閉塞して起こる脳梗塞です。
動脈から末梢の動脈へと血栓が飛んで詰まる(閉塞する)ため、artery-to-artery embolismとも呼ばれます。
最後に、血行力学性ですが、もともと動脈硬化で細くなっている脳の血管に、急激な全身の血圧低下や心拍出量低下が加わった結果、末梢部へ血液が行き届かなくなり起こる脳梗塞です。
この3つは言葉で理解するよりも、図と動画で理解する方が理解しやすいと思います。
アテローム血栓性脳梗塞のMRI画像所見は?
先ほども解説したように、アテローム血栓性脳梗塞は、動脈硬化(アテローム硬化)が原因となって起こる脳梗塞です。
動脈硬化というは、一朝一夕で出来るものではなく、時間をかけて緩徐に形成されます。
つまり、脳の太い血管はゆっくりと時間をかけて動脈硬化が起こり細くなっていきます。
すると生体反応として、虚血に陥らないようにとくに末梢に側副血行路が発達します。
ですので、前触れなく急に血栓が心臓から飛んでくる心原性の脳梗塞と比べると、虚血に対する防御態勢がある程度出来ているのがアテローム血栓性脳梗塞です。
これを反映して、脳梗塞が起こった場合でもその被害を最小限にするように側副血行路が活躍します。
MRIの画像においても、心原性脳梗塞が皮質も含んだ広範な脳梗塞に陥るのに対して、アテローム血栓性脳梗塞は基本的に皮質は保たれた状態で深部白質に脳梗塞が起こるのが特徴です。
実際の画像を見てみましょう。
症例 40歳代男性 構音障害
MRIの画像です。
左側が拡散強調像(DWI)、右側がADCと言われる撮影です。
左の頭頂葉の深部白質に拡散強調像で高信号を認め、同部に一致してADCの信号低下を認めています。
これから新規脳梗塞がここに起こっていることがわかります。
その前方にも拡散強調像で高信号を認めていますが、ADCの信号低下は認めていませんので、こちらは古い脳梗塞である陳旧性脳梗塞であることがわかります。
次にFLAIR像と呼ばれる画像を見てみると、拡散強調像で高信号・ADCで信号低下を来している部位は、高信号を示していますので、急性期以降の新規脳梗塞であることがわかります。
一方でその前方の高信号はFLAIR像で高信号となっていますが、黒い抜けを内部に認めていることからも陳旧性脳梗塞であることがわかります。
最後に脳の血管を評価するMRA画像のMIP像と呼ばれる画像です。
左の中大脳動脈(MCA)の水平部(M1)に狭窄を認めていることがわかります。
また中大脳動脈の末梢は右側と比べると左側で描出が不良です。
これらから、左中大脳動脈の狭窄によるアテローム血栓性脳梗塞(なかでも血栓性)と診断されました。
関連記事:【保存版】アテローム血栓性脳梗塞とは?症状、画像診断、治療、看護まとめ!
最後にラクナ梗塞について見ていきましょう。
ラクナ梗塞とは?
ラクナ梗塞とは、15mm以下の小さな梗塞のことを言います。
ですので、細い小さな血管が詰まることにより起こります。
細い血管とは、上の図の
- 深部穿通動脈
- 表在穿通動脈
が相当します。
ラクナ梗塞は高血圧との関連が深く、深部穿通動脈の方が太い血管である主幹動脈、皮質動脈と近いこともあり、ラクナ梗塞は深部穿通動脈にしばしば起こります。
この深部穿通動脈の末梢が閉塞するのがラクナ梗塞です。
この深部穿通動脈は、大脳深部や脳幹を栄養する血管で、ラクナ梗塞の好発部位としては、
- 基底核(レンズ核線条体動脈が栄養)
- 視床(視床穿通動脈が栄養)
- 橋(傍正中橋動脈が栄養)
といったところが挙げられます。
ラクナ梗塞のMRI画像所見は?
ラクナ梗塞は15mm以下の小さな梗塞であり、上に挙げた好発部位にしばしば見られます。
MRI画像では、他の脳梗塞と同様に拡散強調像、ADC、T2強調画像、FLAIR像、MRAなどを参考に診断します。
実際の画像を見てみましょう。
症例 60歳代男性 スクリーニング(無症状)
先ほどと同様に左側が拡散強調像(DWI)、右側がADCです。
右の被殻に拡散強調像で高信号を認めており、同部はADCで信号低下を認めています。
新規脳梗塞疑う所見です。
T2強調像では高信号を認めており、急性期以降の新規脳梗塞(右被殻のラクナ梗塞)と診断されました。
関連記事:【保存版】ラクナ梗塞とは?症状、MRI画像診断、治療をわかりやすく!
最後に
脳梗塞の種類・分類について解説しました。
脳梗塞には、
- 心原性脳梗塞
- アテローム血栓性脳梗塞
- ラクナ梗塞
の3つの種類があります。
まずはこの違いを理解しましょう。
心原性脳梗塞は理解しやすいと思いますが、難しいのはアテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞です。
アテローム血栓性脳梗塞についてはさらに3つに分類されるのが理解しにくくなっている原因ですが、基本は太い血管に動脈硬化が起こることが原因になることです。
3つの分類についても動画解説しましたので理解出来ると思います。
ラクナ梗塞はとにかく細い血管に起こる梗塞と覚えましょう。
参考になれば幸いです。