先に結論:褐色細胞腫の画像診断

  • 褐色細胞腫は、副腎(髄質)や交感神経節から出るカテコラミン(血圧を上げるホルモン)を作る腫瘍で、発作的な高血圧・頭痛・動悸・発汗が典型です。診断はまず血液・尿のメタネフリンで行います
  • CTではよく造影される副腎腫瘤で、出血・嚢胞変化を伴いやすく、単純CTで10HUを超える(脂肪が少ない)のが腺腫との違いです。MRIではT2強調像で白いことが多いです
  • 副腎以外(傍神経節腫)・多発・転移の評価にはMIBGシンチや、ソマトスタチン受容体/FDGのPETが用いられます。現在はすべての褐色細胞腫が転移しうる腫瘍とされ、手術後も長期の経過観察が必要です
  • 副腎髄質シンチ(123I-MIBGシンチ)は、カテコラミンを作る細胞にMIBGが取り込まれる性質を使った検査で、褐色細胞腫の検出の感度94%・特異度92%と報告されています(Jacobson 2010)
  • 膀胱の傍神経節腫では、排尿のときに血圧が上がり、頭痛・動悸・発汗が出るのが手がかりです。膀胱鏡検査や経尿道的切除(生検)の前に疑うことが大切です(Li 2022)
  • MIBGシンチは内服薬の影響や、SDHB関連・転移・頭頸部傍神経節腫では陰性になりやすく、その場合はソマトスタチン受容体PET(68Ga-DOTA製剤)やFDG-PETが選ばれます

※発作的な高血圧・頭痛・動悸・汗がくり返すときは、医療機関で相談してください。排尿のときに動悸や頭痛が起こる場合も、泌尿器科や内科で相談してください。

症例 40歳代女性 コントロール不良の高血圧

褐色細胞腫 造影CT 門脈相 横断
引用:Radiopaedia(Pheochromocytoma)

左副腎に境界明瞭な大きな腫瘤があり、辺縁は強く造影され、内部には壊死・嚢胞変化による低吸収域がみられます。脂肪や石灰化はなく、周囲への浸潤もありません。尿中VMAが著明に高く、副腎褐色細胞腫と診断されました。

褐色細胞腫(pheochromocytoma)とは?

  • 英語はpheochromocytoma(傍神経節腫はparaganglioma、まとめてPPGL)。割面がクロム塩で褐色に染まること(クロム親和性反応)が名前の由来です。
  • 副腎髄質や交感神経節に存在するクロム親和性細胞が腫瘍化したもので、発生部位により副腎褐色細胞腫(副腎髄質由来)と副腎外褐色細胞腫(傍神経節由来、paraganglioma(傍神経節細胞腫))に分類される。
  • カテコラミンなどの種々の生理活性物質を生成・分泌することで臨床症状を呈する。
  • 古典的臨床症状はhypertension,headache,hyperhidrosis,hyperglycemia,hypermetabolism(高血圧、頭痛、発汗過多、高血糖、代謝亢進)の5Hと称されており、発作時は頭痛、動悸、胸部圧迫感、発汗、腹部不快感などを自覚し、顔面や四肢は蒼白で冷汗が見られる。
  • 頸部、後縦隔、傍大動脈領域、膀胱などに同様の組織像を呈する腫瘤が発生し、傍神経節腫(paraganglioma)として知られる。褐色細胞腫が疑われ、副腎に病変がない場合は、これらの部位の画像評価が必要となる。
  • 大部分の症例は良性の経過をとるが、一部の症例では、肝、リンパ節、骨などに転移を来たし、悪性腫瘍としての経過を示すことがある。現在のWHO分類では、すべての褐色細胞腫が転移する可能性をもつ腫瘍とされ、「悪性」の代わりに「転移性」と表現する。
  • 本邦の副腎偶発腫の全国調査(3,672例)では、8.5%が褐色細胞腫であった。
  • メトクロプラミド、グルカゴン、造影剤などの薬物投与、麻酔導入、運動、腹部圧迫などによって発作が誘発されることが知られている。
  • 治療は、可能なかぎり外科的摘出を行う。Endocrine Societyのガイドライン(2014)では、全例で遺伝学的検査を考慮し、傍神経節腫ではSDHx変異、転移例ではSDHB変異を調べることを推奨している。術後も再発・転移を見つけるため生涯の経過観察が提案されている。
  • 転移性褐色細胞腫・傍神経節腫は予後不良。手術例157例の検討では、若年・腫瘍が大きい・傍神経節腫であることが転移と関連し、SDHB胚細胞変異の11例はすべて転移性でした(Dhir 2017)。

褐色細胞腫の画像所見

CT

  • 造影CT(特に動脈相)における良好な造影効果。
  • 内部に嚢胞変性や、出血を認めることが少なからずある。時に実質部分がほとんど確認できないほど変性が強いことがある。
  • 単純CTの吸収値:多施設検討では376病変中374病変(99.5%)が10HUを超えていました。一方、washoutが腺腫のように速い病変も28.9%あり、washoutでは否定できません(Canu 2019)。

※ただし、この腫瘍が疑われる場合に造影CTは禁忌とされてきた。現在の非イオン性ヨード造影剤では発作の誘発はまれとする報告が多いが、投与する場合は添付文書に従い、血圧の急上昇などに備えて慎重に行う。

MRI

  • T1強調像にて低信号、T2強調像にて高信号を呈するが、例外も多い。
  • 化学シフト画像にて脂肪の存在は証明されない。

シンチ

  • 副腎髄質シンチ=MIBGシンチ:ノルアドレナリンに似たMIBGを放射性ヨードで標識し、カテコラミンを作る細胞への取り込みを撮影します。メタ解析では褐色細胞腫に対する感度94%、特異度92%でした(Jacobson 2010)。
  • 123I-MIBGシンチグラフィで集積があれば診断の強い裏づけになる(ただし偽陽性もある)。褐色細胞腫の一部は副腎外発生(傍神経節腫)であるので、臨床的に疑われるにもかかわらず、副腎に腫瘤が発見できない場合には、頚部から骨盤までCTを撮影し、さらに必要であれば123I-MIBGシンチグラフィによりその位置を確定する。なお2019年のEANM/SNMMIガイドラインでは、68Ga標識ソマトスタチンアナログPETの良好な成績により画像診断の手順が簡素化され、従来の123I/131I-MIBGに代わる、あるいは補う方法として核医学治療(PRRT)の適応選択にも使えるとされています。遺伝的背景(遺伝子変異の種類)により病変の出方や転移のリスクが異なるため、検査の選択も遺伝学的特徴に合わせて行われます。

MIBGシンチの前処置・干渉する薬剤、正常でも集まる場所

  • 前処置:甲状腺にヨードが取りこまれないよう、検査前にヨード剤で甲状腺をブロックします(Taïeb 2019)。
  • 干渉する薬剤:オピオイド、三環系などの抗うつ薬、交感神経刺激薬、抗精神病薬、一部の降圧薬などがMIBGの取りこみに影響するとされ、血圧や頻脈のために必要な薬が偽陰性の原因になることもあります(Taïeb 2019)。休薬の要否は主治医・施設の指示に従い、自己判断で中止しないでください。
  • 生理的集積:心筋・唾液腺・涙腺・甲状腺・肝・肺・腸などに正常でも集まり、副腎も最大80%で集まります。副腎の集積が軽く(肝以下)、左右対称で、腫大がなければ正常範囲です。褐色脂肪に集まることもあります(Taïeb 2019)。
見え方 主な原因(Taïeb 2019)
偽陰性(あるのに写らない) 頭頸部傍神経節腫、SDHx関連、7mm未満の小病変、嚢胞変性・壊死・出血を伴う腫瘍、分化の低い腫瘍、干渉薬
偽陽性(ないのに写る) CTによる吸収補正で強調された副腎髄質の生理的集積、SDHx・MEN2に伴う副腎髄質過形成

MIBG・ソマトスタチン受容体PET・FDG-PETの使い分け

検査 得意なこと 弱点・注意
123I-MIBGシンチ 副腎内の褐色細胞腫の診断(感度94%・特異度92%、Jacobson 2010)。131I-MIBG治療の適応選択 副腎外・多発・再発・遺伝性を多く含む検討では感度52〜75%。SDHB関連は陽性が半数未満、頭頸部傍神経節腫は18〜50%(Taïeb 2019)
ソマトスタチン受容体PET(68Ga-DOTA製剤) 転移・副腎外・頭頸部で良好で、MIBGより高感度(Taïeb 2019)。SDHB関連の転移17例で病変検出率98.6%(FDG 85.8%、CT/MRI 84.8%、Janssen 2015)。PRRTの適応選択にも使える 副腎内の原発例のデータは少ない(Taïeb 2019)
FDG-PET SDHB関連の転移30例で患者単位の感度100%(123I-MIBGは80%、Timmers 2007) MEN2関連の褐色細胞腫で陽性となるのは約40%(Taïeb 2019)。遺伝的背景で集積が異なる

褐色細胞腫疑いの腹部造影CTはどうすればいい?

  • 褐色細胞腫では造影検査の臨床的意義が高いと考えられる。
  • 造影検査時の遮断薬(αブロッカー)の必要性について検討した結果では、非イオン性造影剤を使用して造影検査を行なう際に遮断薬の併用が必須ではないとの報告もある。
  • 褐色細胞腫の患者への腹部造影CTを実施する場合には、造影検査後の血圧変動に留意し高血圧発作に対する薬剤を準備しておく事が重要であると考えられる。
  • 高血圧発作が生じる可能性についてのinformed consent+造影検査前後の血圧測定。

傍神経節腫(パラガングリオーマ)の画像診断のポイント

部位 主な発生場所 特徴
頭頸部 頸動脈分岐部(頸動脈小体)、頸静脈孔、迷走神経沿い、中耳 副交感神経系由来が多く、カテコラミンを出さないことが多い
胸部 後縦隔(傍椎体)、心臓周囲 交感神経系由来で、カテコラミンを出すことがある
腹部・骨盤 傍大動脈、Zuckerkandl器官(下腸間膜動脈起始部付近)、膀胱壁 交感神経系由来で、症状は褐色細胞腫と同様

膀胱の傍神経節腫:排尿で発作が起きるときの手がかり

傍神経節腫は膀胱の壁にも発生します。膀胱の傍神経節腫は、膀胱腫瘍全体の約0.05%とまれな腫瘍で、排尿によってカテコラミンが一時的に分泌され、血圧の急上昇・頭痛・発汗・動悸・吐き気が出ることがあります。排尿以外のときには血圧が正常で、症状がないこともあります(Li 2022)。

1つ1つの症例報告をまとめた系統的レビュー(194例、2001〜2020年に発表)では、次のことがわかっています(Li 2022)。

  • 手術の前に診断されたのは90例(46.4%)、手術のあとに診断されたのは104例(53.6%)で、およそ半数は術前に診断されていませんでした
  • 血圧の上昇やカテコラミンに関連する症状がある人は術前に診断されやすく、血尿だけの人は術後の診断が多い傾向でした(血尿は術後診断で約2倍)
  • 症状のある人のうち、排尿が引き金になっていたのは59例で、排尿時の症状がある人は術前に診断される割合が高い(51.1%対12.5%)結果でした
  • 術後に診断された人の多くは、手術前にαブロッカーによる準備を受けておらず(95.2%)、経尿道的切除が選ばれることが多く(70.2%、術前診断は23.1%)、術中の合併症や腫瘍の取り残しが多くなっていました

術中の腫瘍操作で高血圧クリーゼと頻脈が起こり、病理で膀胱の傍神経節腫と判明した例も報告されています(Youssef 2024)。

画像の面では、膀胱壁の腫瘤が褐色細胞腫と同様によく造影されることが多く、一般の膀胱癌と画像だけで区別するのは容易ではありません。ですので、高血圧、排尿に伴う頭痛・動悸・発汗、粘膜下にあるよく造影される膀胱壁の腫瘤がそろったときは、生検や切除の前に血液・尿のメタネフリンを確認します。術前の準備の方法(薬の選び方・量・期間)は内分泌内科などの専門医が決めます。

褐色細胞腫の画像診断でよくある疑問(Q&A)

Q. 褐色細胞腫の確定診断はどうやってつけますか?
A. 血液・尿のメタネフリン(カテコラミンの代謝物)の上昇を確かめてから、CT・MRIで腫瘍の場所を探します。最終的な確定は手術で取った腫瘍の病理診断です。

Q. 褐色細胞腫は見た目(肉眼)ではどんな腫瘍ですか?
A. 被膜に包まれた丸い腫瘍で、割面は灰白色〜褐色、出血や嚢胞変化を伴うことがあります。画像で内部が不均一に見えたり、嚢胞のように見えたりするのはこのためです。

Q. MIBGシンチの前に、飲んでいる薬をやめる必要はありますか?
A. MIBGの取りこみに影響する薬があり、偽陰性の原因になりえます。ただし血圧や脈の管理に必要な薬も多いため、休薬の要否は主治医と検査施設の指示に従ってください(Taïeb 2019)。

Q. MIBGシンチで写らなければ、褐色細胞腫は否定できますか?
A. 否定できません。SDHB関連・転移・頭頸部傍神経節腫・小さな病変・内部変性が強い腫瘍などでは写らないことがあり、ソマトスタチン受容体PETやFDG-PETを使い分けます(Taïeb 2019、Timmers 2007)。

Q. 排尿のときに動悸や頭痛が起きます。膀胱の腫瘍が関係しますか?
A. まれですが、膀胱の傍神経節腫で排尿が発作の引き金になることがあります。系統的レビューでは、症状のある人のうち59例で排尿が引き金でした(Li 2022)。ただし、原因は他にも多くあります。症状がくり返すときは、医療機関で相談してください。

Q. 膀胱の傍神経節腫は、膀胱鏡の生検をしてよいですか?
A. 疑う場合は、先に血液や尿のメタネフリンを調べて、術前の準備を整えることが大切です。術後に診断された例では、術前の準備がなかったり(95.2%)、術中の合併症や取り残しが多かったりしました(Li 2022)。

参考文献

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  2. Bessell-Browne R, O’Malley ME. CT of pheochromocytoma and paraganglioma: risk of adverse events with i.v. administration of nonionic contrast material. AJR Am J Roentgenol. 2007;188(4):970-974. PubMed
  3. Baid SK, Lai EW, Wesley RA, et al. Brief communication: radiographic contrast infusion and catecholamine release in patients with pheochromocytoma. Ann Intern Med. 2009;150(1):27-32. PubMed
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  5. Mete O, Asa SL, Gill AJ, et al. Overview of the 2022 WHO Classification of Paragangliomas and Pheochromocytomas. Endocr Pathol. 2022;33(1):90-114. PubMed
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  8. Canu L, Van Hemert JAW, Kerstens MN, et al. CT Characteristics of Pheochromocytoma: Relevance for the Evaluation of Adrenal Incidentaloma. J Clin Endocrinol Metab. 2019;104(2):312-318. PubMed
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  10. Timmers HJ, Kozupa A, Chen CC, et al. Superiority of fluorodeoxyglucose positron emission tomography to other functional imaging techniques in the evaluation of metastatic SDHB-associated pheochromocytoma and paraganglioma. J Clin Oncol. 2007;25(16):2262-9. PubMed
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  12. Li M, Xu X, Bechmann N, et al. Differences in clinical presentation and management between pre- and postsurgical diagnoses of urinary bladder paraganglioma: is there clinical relevance? A systematic review.. World J Urol. 2022;40(2):385-390. PubMed
  13. Youssef M, Sewell J, Grills R. Unrecognised paraganglioma of the urinary bladder precipitating hypertensive crisis.. BMJ Case Rep. 2024;17(4). PubMed

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