先に結論:頸動脈プラーク・狭窄の画像診断
- 首の頸動脈の分かれ目(内頸動脈の起始部)は動脈硬化のプラークができやすく、①狭窄で脳への血流が減る、②プラークがはがれて脳の血管に詰まる(塞栓)ことで脳梗塞の原因になります
- 狭窄率はNASCET法(1−狭い所の径÷その先の正常な内頸動脈の径)で表します。検査は頸動脈エコーが基本で、MRA・CTAで確認します(MRAは狭窄を強めに見せやすい)
- MRIのプラークイメージング(black-blood法、BB法)で、T1強調像で白く光るプラーク(プラーク内出血・脂質に富む不安定プラーク)は、狭窄が軽くても脳梗塞を起こしやすいサインです。治療は薬(抗血小板薬・スタチン)、頸動脈内膜剥離術(CEA)・ステント留置術(CAS)です
頸動脈分岐部病変
- 頸動脈分岐部はアテローム動脈硬化性病変ができやすい。
- 脳虚血症状の原因となる。1つは内腔の狭窄・閉塞による脳血液量の低下、もう1つは、塞栓を生成してartery -to-artery embolismの原因となる。
- 画像診断方法は、エコー、MRA、MRプラークイメージング、3D CTA、血管造影がある。
- 頸部MRAでは造影剤が不要なのでスクリーニングに適するというメリットがあるが、乱流や遅い血流などによるアーチファクトがあり、一般的に過大評価してしまう傾向がある。したがって、閉塞様に見えても末梢の描出がある場合は、高度狭窄とすることが大事。
- 一方造影剤を用いた3D MRDSAではそのような影響を受けない。
- その他、プラークイメージングとして以下のBlack blood法がある。
Black-blood法とは?
- MRIによる頸動脈プラークの質的評価ができる。
- 基本は血流を無信号に、脂質を含んだプラークを高信号に描出する撮像法。
- 精度が一定であり、脂肪沈着とプラーク内出血の鑑別が可能であるというメリットあり。
- 注意点として、不安定プラークは狭窄率が軽くても(狭窄率とは関係なく)脳梗塞の原因となりうる。MRIで検出されるプラーク内出血は脳血管イベントのリスクを約6倍に高め(ハザード比5.69)、年間イベント率はプラーク内出血ありで約17.7%、なしで約2.4%と報告されています(Saam 2013)。
BB法(black-blood法)のしくみ
MRAは流れる血液を白く写して内腔の形を見ますが、BB法は二重反転回復法(double inversion recovery)などで血液の信号を消して黒く写し、血管の壁とプラークそのものを浮かび上がらせます。同じ狭窄率でもプラークの性質には差があり、壁を見ることで壊れやすいプラークを見つけられるとされています(Saba 2018)。
BB法でよく使う撮像法と、わかること
| 撮像法 | わかること |
| T1強調BB(T1BB) | プラーク内出血・脂質に富む成分が高信号(白)。不安定プラーク評価の中心 |
| T2強調BB(T2BB) | T1BBと組み合わせて出血の時期や粥腫・線維成分を推定 |
| MPRAGEなどの強いT1強調像 | プラーク内出血をより目立つ高信号で描出 |
| TOF-MRA | 内腔の形・狭窄の評価 |
| 造影T1強調BB(施設による) | 線維性被膜や新生血管・炎症の評価を補う |
組み合わせは施設により異なります。報告書の「T1BB」「プラークイメージ」は、多くはT1強調のBB法のことです。
MRIにおける頸動脈プラークの信号パターン
脂肪抑制T1強調画像および、脂肪抑制T2強調画像の信号パターンからプラークの性状を以下のように推定することができます。

※信号強度は顎下腺or耳下腺と比べる。近年は、狭窄率だけでなくプラークの性状を標準化して報告するため、Plaque-RADS(2023年提唱)という分類が提案されています。超音波・CT・MRIのいずれにも使え、グレード1(プラークなし)からグレード4(合併症を伴うプラーク)までに分けます。
症例 70歳代女性 左半身麻痺出現

脳MRIの拡散強調像(DWI)の横断像です。
右の中大脳動脈(MCA)領域ー前大脳動脈(ACA)領域の境界領域に脳梗塞(分水嶺梗塞)を認めています。

頚部エコー検査で、右の内頚動脈起始部に著明な狭窄を認めており、面積狭窄率では94%の狭窄でした。

頚部MRAでもエコーと同様に右の内頚動脈起始部に著明な狭窄を認めています。

脂肪抑制T1強調画像および脂肪抑制T2強調画像の横断像です。
左の内頚動脈と比較すると、右の内頚動脈起始部はプラークで著明に狭窄していることがわかります。
不安定プラークによる右内頚動脈起始部狭窄、それに基づく脳梗塞(血行力学的な脳梗塞、もしくはプラーク部から剥がれ落ちた血栓が塞栓を生成してartery -to-artery embolism)であると診断されました。
症例 80歳代男性 無症候性

右内頸動脈起始部狭窄を認め、同部位に脂肪抑制T1WI,T2WIにて共に高信号を呈する不安定プラークを認めています。
症例 50歳代男性

左内頚動脈起始部に狭窄を認め、同部位に不安定plaqueを認めています。
症例

頚部MRAにおいて、右内頚動脈起始部に狭窄を認めています。

同部位に脂肪抑制T1強調画像で高信号のプラークを認めています。
症例

左内頚動脈に脂肪抑制T2強調画像で著明な高信号のプラークを認めています。
動画で学ぶ不安定プラークの画像診断(70歳代男性 右内頸動脈)
動画で学ぶ不安定プラークの画像診断(60歳代 男性)
プラークの信号
不安定プラーク
- 危険性の高い、柔らかい、被膜薄い、
- 大きな粥腫やプラーク内血腫を含む=T1 high T2 high
- 出血が混じらない粥腫=T2 high
- プラーク内出血=T1 high
- 比較的新しいプラーク内出血=T1 high T2 low~high
- 古い出血=T1 low T2 low
安定プラーク
- 硬い、
- 線維化、器質化成分、石灰化=T1 iso~low T2 iso~low
※『脂肪抑制』、『強調像』は省略
プラークの成分
- 粥腫(lipid core) (コレステロールエステルなどの脂質の沈着)
- 線維化
- 粥腫内出血
- 壊死
- 炎症細胞浸潤
- 血栓
- 被膜
- 石灰化
※糖尿病 : 線維化・石灰化主体=硬い
※高脂血症 : コレステロールエステル主体=柔らかい
プラークの治療
| 名称 | 適応 | |
| 手術 | 頸動脈内膜除去術(CEA:Carotid endarterectomy) | ・不安定プラーク ・症候性のNASCET50%以上(特に70%以上)の頸動脈狭窄。 ・無症候性のNASCET60%以上の頸動脈狭窄(手術リスクなどを考慮)。 ※NASCET(1991・1998年)・ACAS(1995年)などの臨床試験の結果に基づく目安。実際の適応は診療ガイドラインと手術のリスクをふまえて判断します ・血行力学的に血流の減少あり ※頚動脈を切開して動脈硬化を取り除く。 |
| カテーテル治療 | 頸動脈ステント(CAS)留置 | ・opeのリスクが高い症例。(心疾患、重篤な呼吸器疾患、対側頸動脈閉塞、対側反回神経麻痺、頸部の直達手術またはRTの既往、CEA再狭窄、高齢など) ・プラークが高位にありope困難例。 →ope適だが、困難例では、末梢側or中枢側の血流遮断(プロテクション)を行ってステント治療する。 |
| 薬物療法 | スタチン製剤 | ・粥腫の縮小に有効の可能性が示唆されている。 |
内頸動脈狭窄率の計測方法
- 径から狭窄率を算出する方法としては、NASCETとECSTの2つの方法があるが、NASCETで押さえておけば良い。(他には面積狭窄率もある)
- NASCET 狭窄率=(1-a/b)×100 で算出する。MRAやCTAで計測した場合はどちらの方法で計算したかを記載する。

症例 80歳代男性

NASCET 狭窄率=(1-a/b)×100=(1-2.36/5.52)×100≒57%と計算される。
頸動脈プラークのMRI(BB法)でよくある疑問(Q&A)
Q. T1BBでプラークが白く光っていると言われました。すぐ手術ですか?
A. すぐ手術と決まるわけではありません。白いプラークの多くはプラーク内出血を反映し、同じ側の脳梗塞の危険は症状のある狭窄でハザード比10.2、症状のない狭窄で7.9と報告されています(Schindler 2020)。治療は狭窄率・症状・手術のリスクなどとあわせて決めます。
Q. 造影剤は必要ですか?
A. T1BB・T2BB・TOF-MRAは造影剤なしで撮れます。施設によっては造影後のT1強調BBを追加することがあります。
※急に片側の手足が動かしにくい・しびれる、言葉が出にくい、片目が見えにくいなどの症状は脳梗塞の前ぶれのことがあります。すぐに医療機関(救急)を受診してください。
参考文献
- North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial Collaborators, Barnett HJM, Taylor DW, et al. Beneficial effect of carotid endarterectomy in symptomatic patients with high-grade carotid stenosis. N Engl J Med. 1991;325(7):445-53. PubMed
- Saam T, Hetterich H, Hoffmann V, et al. Meta-analysis and systematic review of the predictive value of carotid plaque hemorrhage on cerebrovascular events by magnetic resonance imaging. J Am Coll Cardiol. 2013;62(12):1081-1091. PubMed
- Schindler A, Schinner R, Altaf N, et al. Prediction of stroke risk by detection of hemorrhage in carotid plaques: meta-analysis of individual patient data. JACC Cardiovasc Imaging. 2020;13(2 Pt 1):395-406. PubMed
- Saba L, Cau R, Murgia A, et al. Carotid Plaque-RADS: A Novel Stroke Risk Classification System. JACC Cardiovasc Imaging. 2024;17(1):62-75. PubMed
- Naylor R, Rantner B, Ancetti S, et al. Editor’s Choice – European Society for Vascular Surgery (ESVS) 2023 Clinical Practice Guidelines on the Management of Atherosclerotic Carotid and Vertebral Artery Disease. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2023;65(1):7-111. PubMed
- Barnett HJ, Taylor DW, Eliasziw M, et al. Benefit of carotid endarterectomy in patients with symptomatic moderate or severe stenosis. N Engl J Med. 1998;339(20):1415-25. PubMed
- Executive Committee for the Asymptomatic Carotid Atherosclerosis Study. Endarterectomy for asymptomatic carotid artery stenosis. JAMA. 1995;273(18):1421-8. PubMed
- Saba L, Yuan C, Hatsukami TS, et al. Carotid Artery Wall Imaging: Perspective and Guidelines from the ASNR Vessel Wall Imaging Study Group and Expert Consensus Recommendations of the American Society of Neuroradiology. AJNR Am J Neuroradiol. 2018;39(2):E9-E31. PubMed
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