硬膜内髄外腫瘍では、
- 神経鞘腫
- 髄膜腫
が代表的ですが、中でも神経鞘腫の頻度が高く、硬膜内髄外腫瘍でも、脊髄腫瘍においても神経鞘腫の頻度は最多です。
今回はそんな硬膜内髄外腫瘍の神経鞘腫についてまとめました。
脊髄の神経鞘腫(schwannoma)とは?
- 脊髄後根のSchwann細胞から生じることが多い。(前根からの発生は神経線維腫に多い)
- 脊髄腫瘍で最多であり、全体の30-45%を占める。
- 40歳代に多いが幅広い年齢層に見られる。
- 性差はない。
- 70%は硬膜内、15%は硬膜外、残り15%は両側にまたがるいわゆるダンベル型に発育する。
- 胸椎>頸椎>腰椎>仙椎で発生。仙椎に発生した場合は巨大で仙椎を破壊。
神経鞘腫のMRI画像所見の特徴は?
- T1強調像で脊髄と比べて等信号〜低信号
- T2強調像では高信号。ただし、まれにT2強調像で中心に低信号領域を認めることがある(target sign)が、出血、密な細胞の多い腫瘍、コラーゲン沈着を反映すると言われる。
- 嚢胞変性は40%程度に見られる。
- 稀に出血も見られる。
- 造影効果は強く均一もしくは、不均一。
- 全体が嚢胞状で腫瘍の壁のみ造影されることがある。
- 周囲の椎体骨の変化(椎体後面のscallopingや椎間孔の開大)が起こることがある。
Target sign(ターゲットサイン)とは?
神経鞘腫は、腫瘍の増大に伴い内部に変性が生じ、腫瘍の中心部と辺縁部で異なった濃度、信号強度を示すことがあり、target signと呼ばれている。
もともと神経線維腫に特徴的とされていたが神経鞘腫でも認める。
神経症腫は、Antoni A(腫瘍細胞成分:中心部)とB(粘液状基質:辺縁部) からなっており、これらがtarget signを形成する。
Antoni A | Antoni B | |
特徴 | 細胞豊富 | 粘液基質 |
部位 | 中心部 | 辺縁部 |
T2WI | やや高信号 | 著明に高信号 |
造影 | 著明に造影される | 遅れて造影される。 |
症例 60歳代 女性
腰椎L2レベルにT2強調像で高信号を示す嚢胞を有する腫瘤あり。
造影MRIでは隔壁を中心に不均一に造影されています。
横断像では腫瘍は脊柱管内の左側に存在していることがわかります。
硬膜内髄外腫瘍であり、手術にて神経鞘腫と診断されました。
症例 50歳代 女性
腰椎L4/5に2cm弱の腫瘤影あり。
T2強調像では頭側は嚢胞を疑う所見(高信号)があり、尾側は不均一な高信号で内部に一部低信号を認めています。
造影剤で強く造影されますが、頭側の嚢胞を疑う部位は辺縁のみに造影効果を認めています。
ミエロ後のCTでは腫瘍の全貌が明瞭です。
硬膜内髄外腫瘍であり、手術にてこちらの症例も神経鞘腫と診断されました。
参考文献)
エキスパートのための脊椎脊髄疾患のMRI 第3版 P261-272
臨床画像 Vol.24,No.8,2008 P983-984