胃癌を手術する場合、癌がどこにあるか、進展範囲がどの程度であるかにより、術式が異なります。
どことどこをどう繋げるのか、なかなかイメージが難しいこともしばしばあります。
そこでわかりやすいシェーマを作成して、胃癌の手術の方法、再建方法についてまとめました。
胃癌の手術法は?
標準的な胃癌の手術は、胃の2/3以上の切除とリンパ節郭清を行う定型手術です。
どこに癌があるか、どの程度広がっているかで以下の3つに分けられます。
- 幽門側胃切除
- 噴門側胃切除
- 胃全摘術
胃の解剖は次のようになります。
幽門側胃切除
癌の部位が噴門と離れている時には、幽門側胃切除が行われます。
噴門側胃切除
癌の部位が噴門に近く、広範でない場合は、噴門側胃切除が行われます。
胃全摘術
腫瘍が広範に認められる場合は、胃全摘術が行われます。
幽門側胃切除の再建法は?Billroth 法とは?
幽門側胃切除の再建法には大きく2つあります。
- Billroth Ⅰ法
- Billroth Ⅱ法
です。ビルロートと読みます。通常生理的で合併症が少ないBillroth Ⅰ法が好まれます。Billroth Ⅱ法は残胃が極めて小さく十二指腸に届かない時などに限り用いられる再建方法です。
この2つの再建法を順を追って見ていきましょう。まず、幽門側で胃切除を行うところまでは共通です。
この後の吻合の仕方で、Billroth Ⅰ法とBillroth Ⅱ法に分かれます。
Billroth Ⅰ法は幽門側を切除した後、単純に残胃と十二指腸を端々吻合する方法です。
一方で、Billroth Ⅱ法は、十二指腸は盲端として、残胃を空腸に吻合する端側吻合を行う方法です。
噴門側胃切除の再建法は?
噴門側胃切除の再建法は噴門に近い癌で、早期で比較的小さな癌に適応となります。
噴門部の腫瘍がある部位を切除して、食道と残胃を端々吻合します。
ただし、腸からの液の逆流(逆流性食道炎)が起こることがあるので、それを防ぐため、食道と残胃の間に空腸の一部をつなぐこともあります。
基本的に逆流性食道炎が多く起こるので、胃を半分以上残せる場合などに選択されることがある術式で、噴門部近くに腫瘍がある場合は、全摘が行われることも多いです。
胃部分切除後の再建方法を動画でわかりやすく!
胃全摘術の再建法は?Roux-en-Y法とは?
胃全摘術の再建の場合は、十二指腸断端を閉鎖して、食道空腸吻合と空腸空腸吻合をするRoux-en-Y法が通常行われます。
最終的な図だけ見てもどことどこをつなげたのかわかりにくいので、上のように順を追って見ていくとわかりやすいです。
- 空腸を持ち上げて食道と吻合する点(食道空腸吻合)
- Treitz靭帯先の空腸を持ち上げた後の空腸に吻合する点(空腸空腸吻合)
がポイントです。
また、逆流性食道炎を防ぐために、空腸空腸吻合部と食道空腸吻合部は、40cm以上離すこともポイントです。
胃全摘後の再建方法を動画でわかりやすく!
まとめ
- 幽門部切除では、基本的にBillroth Ⅰ法が選択される。
- 噴門部切除は早期癌で胃を半分以上残せる場合などに選択されることがあるが、逆流性食道炎が多く、全摘になることも多い。
- 全摘の場合は、Roux-en-Y法で再建されることが多い。
ややこしい膵頭十二指腸切除術後の再建術もシェーマにしました。
Billroth ⅡとRou-en-Yの輸入脚は、胆汁・膵液を腸に流す役目があると思いますが、それ以外に本来の胃の役目でもある食物のリザーバーとしても機能するのでしょうか。
コメントありがとうございます。
輸入脚には基本的に食物は流れてこないのではないでしょうか。逆流することもあるかもしれませんが。