先に結論:腸閉塞・イレウスのレントゲンとニボー像
- ニボー像(niveau・鏡面像)とは、立って撮った腹部レントゲンで、腸の中にたまったガスと液体の境目が水平な線に見えるものです。腸の流れが滞っているサインで、腸閉塞やイレウスを疑う所見です
- 腹部レントゲンは立位と臥位の2方向で撮り、ニボーと腸の拡張を確認します。ただし絞扼性腸閉塞などでは、ガスが少なくニボーや拡張が目立たないこともあり、疑えばCTを撮ります
- 急性腹症診療ガイドライン2015では、癒着・ヘルニア嵌頓・腸捻転など腸管が機械的に閉塞したものを「腸閉塞」、腹膜炎や薬などで腸管が麻痺して動かないものを「イレウス」と呼び分けます。腸閉塞の原因は手術後の癒着が最多です
| 小腸の拡張 | 大腸の拡張 | |
|---|---|---|
| 見えるひだ | ケルクリングひだ(輪状ひだ):細かく、腸の端から端まで横切る | ハウストラ(結腸膨起):間隔が広く、腸の幅の途中までのことが多い |
| 位置 | おなかの中央寄り | おなかの外側(額縁のように) |
腸閉塞・イレウスの原因は?
- 腸閉塞(機械的な閉塞)
- 単純性(閉塞性)腸閉塞:血流障害なし。原因は癒着(最多)・腫瘍(大腸癌など)・異物など
- 複雑性(絞扼性)腸閉塞:血流障害あり。ヘルニア嵌頓・腸捻転(S状結腸軸捻転など)・索状物による絞扼など
- イレウス(腸管の麻痺):腹膜炎・薬剤・電解質異常・術後など
まず、腸管が物理的に詰まっている(腸閉塞)のか、腸管が動かなくなっている(イレウス)のかを分けます。腸閉塞は、小腸に起こるか大腸に起こるかでも分けられ、頻度としては小腸の腸閉塞が多いです。
以前は両方をまとめて「イレウス」と呼び、
- 機械性イレウス(=腸閉塞)
- 麻痺性イレウス(=イレウス)
に分けていました。国内の古い教科書や論文ではこの呼び方がよく出てくるので、読み替えられるようにしておきましょう。
腸閉塞(機械性イレウス)とは?
腸閉塞は、腸管に狭窄や閉塞など行き止まりがあって、内容物が先に進めない状態です(以前は機械性イレウスと呼ばれていました)。日本の急性腹症診療ガイドライン2015では、機械的な閉塞は「腸閉塞」、腸管の麻痺による通過障害は「イレウス」と呼び分けることが推奨されており、海外でもileusは主に麻痺性のものを指し、機械的閉塞はbowel obstructionと呼ばれます。
原因としては以下のものが挙がります。
- 癒着(最多):術後に多い。
- 異物:胆石、腸石、食餌、宿便による。
- 炎症:腸炎、膿瘍など
- 虚血:ヘルニア嵌頓、腸捻転、腸重積など
イレウス(麻痺性イレウス)とは?
一方、イレウス(麻痺性イレウス)とは、行き止まりはないけども、周囲に炎症などがあり、腸管が麻痺して、蠕動運動がうまくいっていない状態です。
原因としては以下のものが挙がります。
- 腹膜炎:膵炎、胆嚢炎、憩室炎、虫垂炎などによる。
- 腹腔内出血
- 薬剤性:麻薬、抗精神病薬など。
- 代謝性:低K血症、尿毒症など。
- 神経性:術直後、脊髄病変など。
- 偽性腸閉塞症(慢性偽性腸閉塞症)
症例 20歳代女性 腹痛

こちらの症例は小腸の拡張に加えて、小腸の壁が肥厚して、造影効果が増強しています。
また腸間膜や大網の脂肪織濃度の混濁・上昇、さらには腹膜に一部肥厚所見を認めており、腹水の貯留を認めます。
腹膜炎によるイレウス(麻痺性イレウス)を疑う所見です。
腸閉塞とイレウスの違いは?
| 腸閉塞(bowel obstruction) | イレウス(ileus) | |
|---|---|---|
| 状態 | 腸管が機械的に詰まっている | 腸管が麻痺して動かない(閉塞はない) |
| 代表的な原因 | 術後癒着・腫瘍・ヘルニア嵌頓・腸捻転 | 腹膜炎・薬剤(麻薬など)・低K血症・術後 |
| 緊急性の高い型 | 絞扼性腸閉塞(血流障害あり) | 原因疾患(腹膜炎など)による |
| 以前の呼び方 | 機械性イレウス(絞扼性イレウス) | 麻痺性イレウス |
腸閉塞・イレウスのレントゲンのポイントは?
- 腹部レントゲンは2方向で撮影する。
- 2方向撮影することにより、ニボー像の有無や、腹水の有無を確認できる。
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拡張した小腸の場合、幅の狭い小腸ヒダである、Kerckringが見えます。臥位においてもこのKerckringは確認できます。
一方で大腸が拡張すると、下のように幅の広い大腸ヒダである、Haustraが見えます。この場合は、結腸が拡張していると判断することができます。

小腸と大腸の区別
- 小腸の拡張(小腸の腸閉塞など)
→ 立位像:液面(ニボー)形成、大腸拡張(-)
→仰臥位:Kerckringヒダあり (正常では見えない。) - 大腸の拡張(大腸の腸閉塞など)→haustraあり。(Kerckringヒダの方がずっと細かい) 小腸拡張(-)
※小腸ガス+大腸ガスともにあり→大腸閉塞+回盲弁不全 or イレウス(麻痺性)を示唆。
腸閉塞の状態であっても、レントゲンでニボー形成や腸管拡張を認めないことがあり、gasless abdomenと呼ばれる。
これは、絞扼性腸閉塞などで見られ、拡張した腸管内に液体が充満し、ガス像が乏しくなることによる。
関連記事)gasless abdomenの画像診断
イレウス・腸閉塞のレントゲンでよくある疑問(Q&A)
Q. 腸閉塞を強く疑うニボー像の特徴は?
A. 腹部レントゲンでは、ニボーが2個以上ある、ニボーの幅が2.5cmを超える、同じ小腸ループ内でニボーの高さが5mm以上ずれている、の3つが小腸閉塞と強く関連していました(Thompson 2007)。立位像で同じループ内の高さの違うニボーと平均幅25mm以上のニボーがそろうと、高度の閉塞である可能性が高いと報告されています(Lappas 2001)。
Q. レントゲンでどのくらい腸閉塞を診断できますか?
A. 小腸閉塞に対する感度は読影者によって59〜93%と幅があり、経験の多い放射線科医ほど正確でした(Thompson 2007)。別の検討では感度69%・特異度57%で、軽度の部分閉塞では感度56%に下がりました(Maglinte 1996)。
Q. レントゲンが正常なら腸閉塞は否定できますか?
A. 否定できません。メタ解析では、腹部レントゲンは画像検査の中で最も診断に役立ちにくく(陽性尤度比1.64)、CT・MRI・超音波の方が正確でした(Taylor 2013)。疑いが残ればCTなどを追加します。
参考文献
- Mayumi T, Yoshida M, Tazuma S, et al. Practice Guidelines for Primary Care of Acute Abdomen 2015. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2016;23(1):3-36. PubMed
- Silva AC, Pimenta M, Guimarães LS. Small bowel obstruction: what to look for. Radiographics. 2009;29(2):423-439. PubMed
- Paulson EK, Thompson WM. Review of small-bowel obstruction: the diagnosis and when to worry. Radiology. 2015;275(2):332-342. PubMed
- Ten Broek RPG, Krielen P, Di Saverio S, et al. Bologna guidelines for diagnosis and management of adhesive small bowel obstruction (ASBO): 2017 update of the evidence-based guidelines from the world society of emergency surgery ASBO working group. World J Emerg Surg. 2018;13:24. PubMed
- Expert Panel on Gastrointestinal Imaging, Chang KJ, Marin D, et al. ACR Appropriateness Criteria® Suspected Small-Bowel Obstruction. J Am Coll Radiol. 2020;17(5S):S305-S314. PubMed
- Thompson WM, Kilani RK, Smith BB, et al. Accuracy of abdominal radiography in acute small-bowel obstruction: does reviewer experience matter? AJR Am J Roentgenol. 2007;188(3):W233-8. PubMed
- Lappas JC, Reyes BL, Maglinte DD. Abdominal radiography findings in small-bowel obstruction: relevance to triage for additional diagnostic imaging. AJR Am J Roentgenol. 2001;176(1):167-74. PubMed
- Maglinte DD, Reyes BL, Harmon BH, et al. Reliability and role of plain film radiography and CT in the diagnosis of small-bowel obstruction. AJR Am J Roentgenol. 1996;167(6):1451-5. PubMed
- Taylor MR, Lalani N. Adult small bowel obstruction. Acad Emerg Med. 2013;20(6):528-44. PubMed
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