先に結論:静脈硬化性大腸炎(特発性腸間膜静脈硬化症)

  • 静脈硬化性大腸炎は右側結腸の腸間膜静脈が硬くなって石灰化し、血液の流れが悪くなる慢性の腸炎で、アジア人に多く、山梔子(サンシシ)を含む漢方薬の長期内服との関連が知られています
  • CT・X線で右側結腸の壁や腸間膜に沿った線状の石灰化(線香花火様)と腸管壁の肥厚が見られるのが特徴です
  • 腹痛・下痢・腸閉塞などで見つかり、原因となる漢方薬の中止で改善することがあります。重症例は切除します

静脈硬化性大腸炎(Phlebosclerotic colitis)

  • 2000年Yaoらにより提唱された疾患。それ以前は、静脈硬化症(Phlebosclerosis)などと呼ばれていた。
  • 疾患の主座は腸間膜の静脈硬化症に基づいた還流障害と考えられている。
  • 2003年には、静脈壁の線維性肥厚と石灰化、粘膜への膠原線維の沈着などの病理所見をもとに、特発性腸間膜静脈硬化症(idiopathic mesenteric phlebosclerosis)の名称が提唱された(Iwashita 2003)。
  • 症状は、腹痛、下痢が多く、便潜血陽性や軽い貧血、腸閉塞で見つかることもある(Iwashita 2003)。240例の系統的レビューでは15.2%が無症状だった(Wang 2021)。
  • 症状はゆっくり始まり慢性に経過する(Iwashita 2003)。一方で動脈系の血流障害によって生じる虚血性腸炎は急性発症。
  • 発生原因は不明。ただし国内の全国調査(222例)では、漢方薬の服用歴が分かった患者の約7割で山梔子(サンシシ)を含む漢方薬の長期服用(平均13.6年)が確認され、中止した例は継続例より経過が良好でした。
  • 右側結腸に多いが、S状結腸まで及ぶ例もある(Wang 2021)。
静脈硬化性腸炎は右側結腸、虚血性大腸炎は左側結腸に好発する。

静脈硬化性腸炎の画像所見

  • 腹部単純X線にて右側結腸の走行に一致して分布する多数の点状・線状・編み目状の石灰化像として認められる。
  • 腹部CTでは右側結腸の腸間膜付着側に腸壁の肥厚、周囲の脂肪織濃度上昇、多発する腸間膜側の線状〜線香花火様の石灰化として認められる。
  • 注腸造影では右側結腸の狭小化、内視鏡では暗紫色〜暗褐色の浮腫状の粘膜や潰瘍がみられる(Iwashita 2003)。診断はCTと大腸内視鏡の特徴的な所見で行われる(Wang 2021)。
  • 治療は外科的手術による病変部の切除、あるいは保存的治療。症状の強さによって治療法が選択される。240例の系統的レビューでは、78.7%に漢方薬(生薬)の服用歴があり、15.2%は無症状でCTと内視鏡で診断されていました。58.4%が保存的治療で軽快し、症状の強い41.6%が手術を受けています。

似た名前・似た所見の病気との違い

静脈硬化性大腸炎 虚血性大腸炎 硬化性腸間膜炎(腸間膜脂肪織炎)
起こる場所 右側結腸の静脈 左側結腸に多い 主に小腸の腸間膜の脂肪
経過 ゆっくり・慢性 急に発症 慢性のことが多い
CTの特徴 腸間膜〜腸壁の静脈に沿った線状の石灰化と壁肥厚 腸壁の浮腫状の肥厚(石灰化はない) 腸間膜の脂肪の濃度上昇や腫瘤

静脈硬化性大腸炎でよくある疑問(Q&A)

Q. 初期にはどんな症状がありますか?
A. ゆっくり始まる腹痛や下痢が多く、便潜血や軽い貧血で見つかることもあります(Iwashita 2003)。症状がなく、CTの石灰化で偶然見つかる人もいます(Wang 2021)。腹痛や下痢が続くときは消化器内科を受診してください。

Q. 漢方薬を飲んでいます。やめたほうがよいですか?
A. 自己判断で中止せず、処方した医師に相談してください。山梔子を含む漢方薬を中止した人は、続けた人より経過が良かったと報告されています(Shimizu 2017)。

症例 70歳代女性

CTで上行結腸および横行結腸の壁内および周囲静脈に線状の石灰化を複数認め、 静脈硬化性腸炎を疑う所見です。

動画でこの症例をチェックする。

参考文献

  1. Iwashita A, Yao T, Schlemper RJ, et al. Mesenteric phlebosclerosis: a new disease entity causing ischemic colitis. Dis Colon Rectum. 2003;46(2):209-20. PubMed
  2. Shimizu S, Kobayashi T, Tomioka H, et al. Involvement of herbal medicine as a cause of mesenteric phlebosclerosis: results from a large-scale nationwide survey. J Gastroenterol. 2017;52(3):308-314. PubMed
  3. Yao T, Iwashita A, Hoashi T, et al. Phlebosclerotic colitis: value of radiography in diagnosis–report of three cases. Radiology. 2000;214(1):188-92. PubMed
  4. Wang J, Shao J, Lu H, et al. Idiopathic mesenteric phlebosclerosis: one case report and systematic literature review of 240 cases. Am J Transl Res. 2021;13(11):13156-13166. PubMed

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