胆管周囲嚢胞(peribiliary cyst)は、肝門部や門脈域に沿って認められる小嚢胞性病変です。
肝内に嚢胞性病変が多発していると、胆管拡張、胆管性過誤腫、Caroli病、胆管癌、原発性硬化性胆管炎(PSC)などとの鑑別が問題になることがあります。
胆管周囲嚢胞は、基本的には良性病変ですが、分布や背景疾患を知らないと、胆管拡張や胆管周囲の腫瘍性病変と誤認されることがあります。
今回は、胆管周囲嚢胞の病態、背景疾患、CT・MRI・MRCPでの画像所見、鑑別診断についてまとめます。
胆管周囲嚢胞(peribiliary cyst)とは?
- 胆管周囲嚢胞は、肝内胆管壁外に存在する胆管周囲付属腺(peribiliary glands)の嚢胞状拡張です。
- 胆管周囲付属腺の貯留嚢胞、あるいは閉塞性変化として理解されます。
- 肝門部から門脈域に沿って分布することが多いです。
- 胆管性過誤腫よりも、より中枢側、すなわち肝門部寄りに存在する傾向があります。
- 多くは無症状で、画像検査で偶然発見されます。
- 大きさは数mm〜2cm程度までさまざまですが、比較的小さな嚢胞が多発することが多いです。
胆管周囲嚢胞は、肝内胆管の内腔そのものが拡張しているわけではなく、胆管の周囲に存在する小嚢胞である点が重要です。
胆管周囲嚢胞が合併しやすい背景疾患
胆管周囲嚢胞は、以下のような背景疾患に合併して見られることがあります。
- 肝硬変
- 門脈圧亢進症
- 慢性肝疾患
- 胆道感染
- 全身感染
- 成人型多発嚢胞腎、すなわち常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)
- 多発肝嚢胞
特に、肝硬変や門脈圧亢進症の患者さんでは、門脈域に沿った嚢胞性病変として認められることがあります。
また、成人型多発嚢胞腎では、肝嚢胞だけでなく胆管周囲嚢胞を伴うことがあります。ただし、成人型多発嚢胞腎は胆管性過誤腫にも合併することがあるため、分布や胆管との関係を丁寧に確認する必要があります。
胆管周囲嚢胞の画像診断のポイント
胆管周囲嚢胞の画像診断では、以下の点が重要です。
- 嚢胞が肝門部・門脈域・胆管周囲に沿って分布すること
- CT値やMRI信号が水に近いこと
- 胆管内腔の拡張ではなく、胆管の周囲に存在する嚢胞であること
- MRCPで胆管拡張と誤認しないこと
- 胆管性過誤腫よりも中枢側に多いこと
- 背景に肝硬変、門脈圧亢進症、成人型多発嚢胞腎などがないか確認すること
特に、肝門部優位・門脈周囲分布という点が、胆管性過誤腫や多発肝嚢胞との鑑別に重要です。
CTでの胆管周囲嚢胞の画像所見
CTでは、胆管周囲嚢胞は水に近い低吸収域として描出されます。
- CT値は水に近く、単純性肝嚢胞と類似します。
- 肝門部や門脈域に沿って多発する小嚢胞として見られます。
- 造影CTでは、嚢胞内部に明らかな造影効果を認めません。
- 胆管周囲、門脈周囲に配列するため、胆管拡張のように見えることがあります。
- 肝内胆管そのものの拡張なのか、胆管周囲の嚢胞なのかを確認することが重要です。
単純性肝嚢胞と同じように水濃度を示しますが、単純性肝嚢胞は肝内に散在するのに対し、胆管周囲嚢胞は肝門部から門脈域に沿う分布を示す点が特徴です。
症例 50歳代女性

両側腎腫大を伴う多発腎嚢胞を認めます。
肝臓にも多発嚢胞を認めますが、単純な多発肝嚢胞だけではなく、肝門部優位・門脈周囲に分布する小嚢胞性病変が目立ちます。
背景に成人型多発嚢胞腎があり、肝門部・門脈周囲優位に分布する嚢胞性病変であることから、成人型多発嚢胞腎に合併した胆管周囲嚢胞を疑う所見です。
MRIでの胆管周囲嚢胞の画像所見
MRIでは、胆管周囲嚢胞は嚢胞性病変として描出されます。
- T1強調像では低信号を示します。
- T2強調像では高信号を示します。
- 肝門部・門脈域に沿った小嚢胞性病変として認められます。
- 造影MRIでは、嚢胞内部に明らかな増強効果を認めません。
- 胆管内腔の拡張ではなく、胆管周囲の嚢胞性病変として評価することが重要です。
T2強調像では、胆汁や水成分を反映して高信号を示すため、胆管拡張や胆管性過誤腫と似て見えることがあります。
MRCPでの胆管周囲嚢胞の注意点
MRCPでは、水成分が高信号として描出されるため、胆管周囲嚢胞も高信号に見えます。
このため、胆管周囲嚢胞が胆管に沿って多発していると、肝内胆管拡張のように見えることがあります。
しかし、胆管周囲嚢胞は胆管周囲付属腺の嚢胞状拡張であり、通常は胆管内腔そのものの拡張ではありません。
MRCPで重要なのは、胆管との連続性、胆管内腔の拡張の有無、胆管周囲に嚢胞が並んでいるのかを確認することです。
原発性硬化性胆管炎(PSC)や胆管癌との鑑別
胆管周囲嚢胞は、ときに原発性硬化性胆管炎(PSC)や胆管癌と類似した画像所見を示すことがあります。
特に、嚢胞が胆管を圧排した場合、MRCPやERCPで胆管の狭窄・不整・拡張のように見えることがあります。
その結果、PSCや胆管癌が疑われることがありますが、胆管周囲嚢胞では、以下の点が鑑別に役立ちます。
- 嚢胞性病変が胆管周囲に並ぶこと
- 明らかな腫瘤形成を認めないこと
- 嚢胞内部に充実性増強効果を認めないこと
- 胆管壁肥厚や胆管壁増強が主体ではないこと
- 背景に肝硬変、門脈圧亢進症、成人型多発嚢胞腎などがあること
一方で、黄疸、胆管炎、腫瘍マーカー上昇、胆管壁肥厚、腫瘤形成、経時的な増悪などがある場合には、胆管癌やPSCなどを慎重に除外する必要があります。
胆管周囲嚢胞と胆管性過誤腫の違い
胆管周囲嚢胞と胆管性過誤腫は、どちらも肝内に小嚢胞性病変を多発することがあるため、しばしば鑑別に挙がります。
| 項目 | 胆管周囲嚢胞 | 胆管性過誤腫 |
|---|---|---|
| 病変の本態 | 胆管周囲付属腺の嚢胞状拡張 | 胆管板形成異常に関連する過誤腫性病変 |
| 分布 | 肝門部・門脈域・胆管周囲優位 | 肝内にびまん性、多発性に散在 |
| 部位 | 比較的中枢側に多い | 末梢を含めて肝内に広く分布 |
| 背景疾患 | 肝硬変、門脈圧亢進症、ADPKDなど | ADPKD、多発肝嚢胞などと合併することあり |
| 鑑別上のポイント | 門脈周囲・肝門部優位の配列 | T2高信号の微小嚢胞性病変が肝内に散在 |
実際の読影では、肝門部から門脈域に沿って並ぶ嚢胞であれば胆管周囲嚢胞を、肝内にびまん性に散在する微小嚢胞性病変であれば胆管性過誤腫を考えます。
胆管周囲嚢胞とCaroli病の違い
Caroli病は、肝内胆管の先天性嚢状拡張を来す疾患です。
胆管周囲嚢胞との重要な違いは、Caroli病では拡張した嚢胞状構造が胆管内腔と交通する点です。
- Caroli病では、MRCPで胆管との連続性を確認できます。
- 胆管周囲嚢胞では、胆管周囲に嚢胞が並びますが、胆管内腔そのものの嚢状拡張ではありません。
- Caroli病では、胆管炎や肝内結石を合併することがあります。
MRCPでは、胆管との交通があるのか、胆管の周囲に嚢胞が存在するのかを確認することが重要です。
胆管周囲嚢胞による合併症
胆管周囲嚢胞の多くは無症状で、治療を必要としません。
ただし、嚢胞が大きい場合や多数集簇している場合には、胆管を圧排して慢性的な胆汁通過障害を来すことがあります。
その結果、以下のような合併症を生じることがあります。
- 胆管炎
- 閉塞性黄疸
- 肝内胆管拡張様の画像所見
- 胆管狭窄様所見
- 肝内結石形成
典型的な胆管周囲嚢胞で無症状の場合には、通常、積極的治療は不要です。
一方で、胆管炎や閉塞性黄疸を伴う場合、あるいは胆管癌との鑑別が難しい場合には、追加検査や経過観察が必要になります。
参考文献
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- Chenin M, Paisant A, Lebigot J, et al. Cystic liver lesions: a pictorial review. Insights into Imaging. 2022;13:116.
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