先に結論:網嚢(もうのう)とウィンスロー孔(網嚢孔)とは

  • 網嚢は、胃と小網の後ろ、膵臓の前にある、腹膜で囲まれた袋状のすき間です。おなかの大きな腹膜腔とはウィンスロー孔(網嚢孔・Winslow孔)という小さな入口1か所でつながっています
  • ウィンスロー孔は、肝十二指腸間膜(小網の右端:門脈・総胆管・肝動脈が通る)のすぐ後ろ、下大静脈の前にある入口です。ここから腸が網嚢へ入り込むとウィンスロー孔ヘルニア(内ヘルニア)になります
  • CTでは、網嚢は胃の背側に見え、膵炎の液体・胃の後壁の穿孔による空気・血腫などがたまることがあります。冠状断では網嚢が「いいね」の手の形に見えるのも覚え方のコツです
  • 腸間膜や大網は、そこを走る血管を目印にすると見つけられます(胃大網動静脈=大網、中結腸動静脈=横行結腸間膜、上腸間膜静脈=小腸間膜の根部。下の節)

網嚢(omental bursa)

  • 胃の後方に位置する空間で、腹膜腔と連続している。
  • 入口は、網嚢孔(epiploic foramen,Winslow’s foramen)と呼ばれ、肝十二指腸靭帯(小網)の背側に位置する。
  • 腹腔内なので、消化管穿孔の際にfree airが存在したり、腹水や、血腫が限局的に存在することがあるので、注意が必要。
  • 同部位にヘルニア(内ヘルニア)を生じることがあり、Winslow孔ヘルニアと呼ばれる。Winslow孔ヘルニアを含む内ヘルニアは腸閉塞全体の約0.5〜5.8%とまれだが、死亡率が高く(報告によっては50%超)(Martin 2006)、見逃さないことが重要である。Winslow孔ヘルニアは内ヘルニアの最大8%を占めるまれな病態で、腸管の過剰な可動性(移動盲腸など)、Winslow孔の開大、腹腔内圧の変化が成因とされる(Moris 2019)。CTでは、異常な位置(網嚢内)に袋状に集まった拡張小腸と、ヘルニア門へ向かって引き伸ばされ収束する腸間膜血管が診断の手がかりになり(Takeyama 2005)、絞扼を伴いやすいため早期の手術が考慮される。
  • シェーマで表すと横断像のCTでは、胃の背側に網嚢は存在する。

網嚢(omental bursa)を冠状断像で見るといいねの形

冠状断像で腹膜腔を見ると次のようになる。

このうち網嚢にフォーカスを当ててみると、次のようになる。

入り口がWinslow孔で、上方に網嚢内側上陥凹、外側に網嚢外側部が存在するのがよくわかる。また、冠状断像で見ると、網嚢の形は「いいね」のマークに似ている。

Winslow孔が手首、網嚢内側上陥凹が親指、網嚢外側部が握りこぶしに相当する。

症例 70歳代女性 特発性網嚢内血腫

OMENTAL BURSA3

OMENTAL BURSA4

横断像においても、矢状断像においても、胃の背側の網嚢内に高吸収血腫があることがわかる。

経過観察にて血腫は消失。原因はわからず、特発性網嚢内血腫と診断されました。

症例 70歳代男性 多発HCCあり、肝不全あり。網嚢内血腫あり。

OMENTAL BURSA5

胃の背側に高吸収血腫を認めており、網嚢内血腫であることがわかります。

腸間膜・大網とは?網嚢との関係と、血管で見つける方法

網嚢は、大網(胃から垂れ下がる腹膜のひだ)や、小網(肝臓と胃をつなぐ)に囲まれた空間です。網嚢は、腹膜腔の中で病気が広がる通り道にもなり、貯留液(膵炎の滲出液、胆汁、血液など)、腫瘤、リンパ節腫大、内ヘルニアのかたちで画像に現れます(Elmohr 2020)。

腸間膜や大網は、脂肪が主体で、CTでは「どこまでが何か」が分かりにくい構造です。そこで、通っている血管を追うと区別できます。

構造 CTで見つける目印
大網 胃大網動静脈(胃の大弯に沿う)。50人のMDCTで50人(100%)に描出され、大網の範囲を決める目印になる。胃結腸静脈は68%(Jin 2008)
横行結腸間膜 中結腸動静脈(Charnsangavej 1993)
上行結腸間膜 回結腸動静脈・右結腸動静脈(Charnsangavej 1993)
下行・S状結腸間膜 下腸間膜静脈(Charnsangavej 1993)
小腸間膜の根部 上腸間膜静脈(SMV)の周囲で肝十二指腸間膜と連続し、胃結腸静脈幹の周囲で横行結腸間膜の右側と連続する。下腸間膜静脈は根部の左側を走る(Okino 2001)
  • 大網の下端部(垂れ下がっている部分)は位置が一定ではなく、48例中、横隔膜下に9例(19%)、右下腹部に10例(21%)ありました。大網は動くため、「どこにあるか」は人により違います(Jin 2008)。
  • 大網は、感染や炎症を腹腔内に閉じ込める働きがあり、転移の好発部位でもあります。大網は脂肪組織が主体で、腹部の最も前方にあるため、CTやMRIで観察しやすく、大網をていねいに見ると腹部の病気の手がかりが得られます(Ghahremani 2023)。
  • 膵炎や空腸憩室の穿孔などの炎症が小腸間膜に広がることがあり、小腸間膜の根部はいろいろな腹膜のひだと連続しています(Okino 2001)。
  • 腹部CTを読むときは、病変のありそうな部位だけでなく、腸間膜と大網にも注意して観察します(Jeong 2021)。腹部CTの読み方は腹部CTの読み方にまとめています。

網嚢・ウィンスロー孔でよくある疑問(Q&A)

Q. ウィンスロー孔ヘルニアは、どのくらいまれですか。
A. 内ヘルニアの最大8%、ヘルニア全体の0.08%とされ、文献に記載されているのは約150例です。発症のピークは30〜60歳代です(Moris 2019)。

Q. ウィンスロー孔ヘルニアの原因は?
A. 腸管の動きが大きいこと(異常に長い腸、移動盲腸など)、ウィンスロー孔の開大(右肝葉の腫大、胆嚢摘出後など)、腹腔内圧の変化が挙げられます(Moris 2019)。

Q. 画像ではどうやって診断しますか。
A. 腸閉塞がある患者で、網嚢の位置に袋状に集まった拡張小腸があり、ヘルニア門へ向かって集まる腸間膜血管が目印になります。絞扼性の腸閉塞になりやすく、早期の手術が考慮されます(Takeyama 2005)。腹痛や嘔吐が続くときは、すぐに医療機関を受診してください。

実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの腹部CTの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。全体の見方は腹部CTの解剖にまとめています。

参考文献

  1. Elmohr MM, Blair KJ, Menias CO, et al. The Lesser Sac and Foramen of Winslow: Anatomy, Embryology, and CT Appearance of Pathologic Processes. AJR Am J Roentgenol. 2020;215(4):843-851. PubMed
  2. Martin LC, Merkle EM, Thompson WM. Review of internal hernias: radiographic and clinical findings. AJR Am J Roentgenol. 2006;186(3):703-17. PubMed
  3. Takeyama N, Gokan T, Ohgiya Y, et al. CT of internal hernias. Radiographics. 2005;25(4):997-1015. PubMed
  4. Moris D, Tsilimigras DI, Yerokun B, et al. Foramen of Winslow Hernia: a Review of the Literature Highlighting the Role of Laparoscopy. J Gastrointest Surg. 2019;23(10):2093-2099. PubMed
  5. Charnsangavej C, DuBrow RA, Varma DG, et al.. CT of the mesocolon. Part 1. Anatomic considerations. Radiographics. 1993;13(5):1035-45. PubMed
  6. Okino Y, Kiyosue H, Mori H, et al.. Root of the small-bowel mesentery: correlative anatomy and CT features of pathologic conditions. Radiographics. 2001;21(6):1475-90. PubMed
  7. Jin H, Min PQ, Yang ZG, et al.. A study of multi-detector row CT scan on greater omentum in 50 individuals: correlating with anatomical basis and clinical application. Surg Radiol Anat. 2008;30(1):69-75. PubMed
  8. Ghahremani GG. CT and MR imaging of the greater omentum: Pictorial essay. Clin Imaging. 2023;101:22-31. PubMed
  9. Jeong WK. [Imaging of Mesentery and Omentum]. Taehan Yongsang Uihakhoe Chi. 2021;82(2):335-346. PubMed

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