先に結論:コレステリン肉芽腫のCT・MRI

  • コレステリン肉芽腫は、中耳や錐体尖部などの空気の通り道が狭くなって出血をくり返し、血液の分解でできたコレステリン結晶に対する異物反応のかたまりです。中耳では難聴・青色鼓膜の原因になります
  • MRIでは出血成分のためT1強調像・T2強調像ともに白い(高信号)のが最大の特徴で、拡散強調像で強く光らない点が真珠腫(類上皮腫)との区別になります。CTでは骨をなめらかに押し広げる病変です
  • 錐体尖部では、脂肪(骨髄の左右差)・粘液の貯留・真珠腫との区別が大切で、脂肪抑制像で信号が残ればコレステリン肉芽腫と考えます
  • 治療は、錐体尖部では症状がなければ画像での経過観察が多く、症状が進む場合は手術で排液を行います

コレステリン肉芽腫(cholesterol granuloma)

  • 含気腔が陰圧になる→粘膜内の血管が破綻→出血→血液が分解→コレステリン結晶→これに対する異物反応として肉芽組織(異物肉芽腫)が形成される。
  • さらに反復する出血により増大するといわれる。
  • 側頭骨(鼓室内、乳突洞、乳突蜂巣、錐体尖部)や副鼻腔に生じる。中耳から耳管、鼓室内、乳突蜂巣への通路など、狭い部分が多いのが原因。
  • またこれに慢性中耳炎や真珠腫などが加わることも原因となる。(錐体尖部などでは、中耳炎を伴わない場合もある。)
  • 多くは片側性。
  • 症状は、難聴(伝音性難聴)と血性の耳漏。
  • 耳鏡所見は鼓膜は内陥し、青色鼓膜となる。耳鏡所見鑑別は、グロムス腫瘍や異常血管(頸静脈裂開や内頸動脈異所性走行など)。
  • ティンパノグラムは原則としてB型となる。
  • 中耳では乳様突起削開術などの手術が行われる(Nian 2025)。一方、錐体尖部のコレステリン肉芽腫は画像経過観察で増大しないものが多く、無症状であれば経過観察とされることが多い(Raghavan 2015)。

コレステリン結晶とコレステリン肉芽腫の病理

  • コレステリンはコレステロールの古い呼び方で、「コレステリン肉芽腫」と「コレステロール肉芽腫」は同じ病気を指します。
  • 肉芽腫とは、異物や炎症に対してマクロファージなどが集まってできる塊です。病理では、コレステロール結晶が溶けて抜けた針状のすき間(cholesterol cleft)、多核巨細胞、組織球、泡沫状マクロファージ、変性した血液色素がみられます(Shrirao 2016)。

画像所見

  • CTでは液体濃度〜非特異的な軟部陰影を示す。増大すると周囲骨を菲薄化や膨張性の病変となる。
  • MRIでは、出血を反映してT1強調像で高信号、T2強調像で高(~低)信号を呈する。MRIは真珠腫とコレステリン肉芽腫の鑑別に有用。(共に高信号を呈するのはメトヘモグロビンの作用。T2強調像で低信号になるのはヘモジデリン沈着がある場合)
症例 30歳代男性

cholesterol granuloma

右鼓室形成術後。乳突蜂巣にCTで軟部陰影あり。T1WI、T2WIにて高信号を呈しており、コレステリン肉芽腫を疑う所見。

 

50歳代男性 手術の結果、コレステリン肉芽腫

cholesterol granuloma

T1WI、T2WIにて高信号を呈しており、手術の結果、真珠腫性中耳炎からのコレステリン肉芽腫。

コレステリン肉芽腫と真珠腫のMRIの違い

コレステリン肉芽腫 真珠腫
T1強調像 高信号(出血成分) 低信号
T2強調像 高信号(ヘモジデリンがあると一部低信号) 高信号
拡散強調像 強い高信号にならない 高信号

側頭骨内の腫瘤の検討では、拡散強調像で高信号を示したのは真珠腫のみで、拡散強調像は真珠腫と粘液貯留・コレステリン肉芽腫などとの区別に役立つとされています(Okada 2007)。

錐体尖部のコレステリン肉芽腫の治療と経過

  • 錐体尖部のコレステリン肉芽腫34例(平均7.1年追跡)では、経過観察のみの群で大きくなったのは9.5%で、症状のない人や症状が悪化しない人では経過観察が安全な選択肢とされました。手術(排液)は症状の悪化や症状を伴う増大がある場合に検討されます(de Bock 2023)。
  • 聞こえにくさ、顔のしびれ・まひなど気になる症状があれば、耳鼻咽喉科を受診してください。

関連記事:錐体尖部の左右差(非対称性錐体尖部骨髄)とは?MRI・CT画像とコレステリン肉芽腫との違い

参考文献

  1. Raghavan D, Lee TC, Curtin HD. Cholesterol granuloma of the petrous apex: a 5-year review of radiology reports with follow-up of progression and treatment. J Neurol Surg B Skull Base. 2015;76(4):266-71. PubMed
  2. de Bock S, Szweryn W, Jansen T, et al. Characteristics and Clinical Management Strategy of Petrous Apex Cholesterol Granulomas. Cancers (Basel). 2023;15(4):1313. PubMed
  3. Shrirao N, Mukherjee B, Krishnakumar S, et al. Cholesterol granuloma: a case series & review of literature. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2016;254(1):185-8. PubMed
  4. Okada K, Ito K, Yamasoba T, et al. Benign mass lesions deep inside the temporal bone: imaging diagnosis for proper management. Acta Otolaryngol Suppl. 2007;(559):71-7. PubMed
  5. Nian S, Chen C, Chen Y, et al. Diagnosis and Treatment of Middle Ear Cholesterol Granuloma Involving the Middle Cranial fossa. Otol Neurotol. 2025;46(9):e419-e422. PubMed
  6. Campion T, Taranath A, Pinelli L, et al. Imaging of temporal bone inflammations in children: a pictorial review. Neuroradiology. 2019;61(9):959-970. PubMed
  7. Chapman PR, Shah R, Curé JK, et al. Petrous apex lesions: pictorial review. AJR Am J Roentgenol. 2011;196(3 Suppl):WS26-37. PubMed
  8. Shimanuki MN, Nishiyama T, Hosoya M, et al. Imaging of Temporal Bone Mass Lesions: A Pictorial Review. Diagnostics (Basel). 2023;13(16):2665. PubMed

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