先に結論:メッケル憩室・メッケル憩室炎とは
- メッケル憩室は、胎児期に腸とへそをつなぐ管(卵黄腸管)が残ってできる小腸(回腸)の袋状のふくらみで、人口の約1〜2%に見られる最も多い腸の先天異常です。回盲部(小腸の終わり)から50〜100cmほど口側にあります
- 大部分は一生無症状ですが、子どもでは出血(血便)、大人では腸閉塞で見つかることが多く、ほかに腸重積・メッケル憩室炎・穿孔などを起こします。出血は、憩室の中にある胃の粘膜(異所性胃粘膜)から出る胃酸で潰瘍ができるためです
- メッケル憩室炎は右下腹部〜へその周りの痛みが出て虫垂炎とまぎらわしい病気で、大人にも起こります。CTで正常な虫垂とは別の場所に炎症を起こした袋状の構造を見つけることが手がかりです。出血源の検索にはメッケルシンチ(99mTc)が使われます
メッケル憩室 (Meckel diverticulum)とは?
- 卵黄腸管の遺残で、一部が閉塞せずに腸間膜付着部の反対側に発生した真性憩室。
- 最も頻度が高い腸管奇形。
- 頻度は1-2%。
- 男性に症状が出やすく、症状が出る例の約6割は10歳までに受診する。
- 回盲弁から平均約50cm(7〜200cm)口側に存在し、長さは平均約3cm。
- 有症状例の24〜71%に異所性胃粘膜を認める。
- 大部分は無症状だが、4-40%が合併症を契機に発見される。
- 腸閉塞・腸重積、出血、憩室炎、穿孔、ヘルニア、悪性腫瘍などにより発症する。
- 稀にメッケル憩室自体がヘルニアを起こすことがあり、Littre’sヘルニアという。鼠径ヘルニアのほか、大腿ヘルニア、臍ヘルニアでみられる。
- 小児は出血、成人例では腸閉塞が多い。ただし2000年以降の文献をまとめた系統的レビューでは、症状の内訳は小児で腸閉塞46.7%・出血25.3%・炎症19.5%、成人で腸閉塞35.6%・炎症29.4%・出血27.3%と、小児でも腸閉塞が最多でした。
- 異所性粘膜は胃粘膜が最多で、次いで膵組織(0〜12%)である。
- 出血が起こる原因は、憩室内の異所性胃粘膜からの胃酸により隣接する腸粘膜に潰瘍を形成するため。
- 診断には異所性胃粘膜を検出する99mTcO4を用いたシンチが有用。特に小児においては感度85%、特異度95%と高い正診率を有する。
- 腸閉塞を起こす機序は主に以下の5つに分けられる。
1,卵黄腸管遺残による索状物を軸として起こる捻転、
2,憩室を先進部とした腸重積、
3,mesodiverticular bandによる絞扼、
4, ヘルニア嚢内への憩室の嵌頓、
5, 軸捻転による穿孔など。
- メッケル憩室が翻転(inverted Meckel diverticulum)し、腸重積を合併することあり(上記の5分類の2に相当)。その場合、腸管内に脂肪の塊を認め、脂肪腫との鑑別が問題となるが、メッケル憩室の翻転の場合、脂肪の周囲に均一な厚い腸管壁が覆うが、脂肪腫の場合はこれが存在しない。脂肪腫の場合は、内視鏡的切除が可能だが、メッケル憩室の翻転の場合は外科的治療が必要となるので、鑑別は重要。
メッケル憩室炎とは?大人にも起こる?
メッケル憩室炎は、憩室の入り口がふさがるなどして炎症を起こした状態で、右下腹部やへその周りの痛み・発熱など虫垂炎に似た症状が出ます。上記の系統的レビューでは成人の症状の29.4%が炎症で、大人にも起こります(Hansen 2018)。右下腹部の痛みや発熱、血便が続くときは医療機関を受診してください。
メッケル憩室のCT所見
- 回腸末端側から出る盲端の管(袋)として見え、MPR画像が役立ちます。腸閉塞や腸の炎症があるのに虫垂が正常なときは、メッケル憩室の合併症を考えます。憩室炎では壁肥厚と周囲脂肪織濃度上昇を伴い、腸石があると手がかりになります(Parra-Fariñas 2019)。
- 出血:出血したメッケル憩室35例のCTエンテログラフィでは33例で憩室が描出され、右下腹部が20例と最多でした(Chen 2019)。
- 腸閉塞:メッケル憩室による腸閉塞10例で、術前CTで憩室を指摘できたのは5例(50%)にとどまり、移行部は正中付近に多くみられました(Won 2016)。手術歴のない下腹部正中付近の小腸閉塞ではメッケル憩室を考えます。
症例 40歳代女性 腹痛(メッケル憩室による絞扼)

腹部造影CTです。
小腸閉塞を認めています。
横断像で壁の造影効果の乏しい管腔を認めています。
その管腔は小腸に圧排しており、同部にてcaliber changeを認めています。
手術の結果、メッケル憩室が腹壁と癒着することで索状構造を形成し、肛門側の腸管を圧排していたことによる絞扼性腸閉塞と診断されました。
参考症例 40歳代男性 回盲部脂肪腫

回盲部に脂肪腫あり。
メッケル憩室の翻転による重積ではないので注意が必要です。
参考)すぐ役立つ救急のCT、MRI 画像診断別冊 P190-191
あわせて読みたい:消化管出血シンチとは(標識赤血球とメッケル憩室シンチ)
参考文献
- Elsayes KM, Menias CO, Harvin HJ, et al. Imaging manifestations of Meckel’s diverticulum. AJR Am J Roentgenol. 2007;189(1):81-8. PubMed
- Levy AD, Hobbs CM. From the archives of the AFIP. Meckel diverticulum: radiologic features with pathologic Correlation. Radiographics. 2004;24(2):565-87. PubMed
- Hansen CC, Søreide K. Systematic review of epidemiology, presentation, and management of Meckel’s diverticulum in the 21st century. Medicine (Baltimore). 2018;97(35):e12154. PubMed
- Sfakianakis GN, Conway JJ. Detection of ectopic gastric mucosa in Meckel’s diverticulum and in other aberrations by scintigraphy: I. Pathophysiology and 10-year clinical experience. J Nucl Med. 1981;22(7):647-54. PubMed
- Kotha VK, Khandelwal A, Saboo SS, et al. Radiologist’s perspective for the Meckel’s diverticulum and its complications. Br J Radiol. 2014;87(1037):20130743. PubMed
- Thurley PD, Halliday KE, Somers JM, et al. Radiological features of Meckel’s diverticulum and its complications. Clin Radiol. 2009;64(2):109-18. PubMed
- Parra-Fariñas C, Quiroga-Gomez S, Castro-Boix S, et al. Computed tomography of complicated Meckel’s diverticulum in adults. Radiologia (Engl Ed). 2019;61(4):297-305. PubMed
- Chen Y, Tang Y, Hu C, et al. Bleeding Meckel Diverticulum: A Retrospective Analysis of Computed Tomography Enterography Findings. J Comput Assist Tomogr. 2019;43(2):220-227. PubMed
- Won Y, Lee HW, Ku YM, et al. Multidetector-row computed tomography (MDCT) features of small bowel obstruction (SBO) caused by Meckel’s diverticulum. Diagn Interv Imaging. 2016;97(2):227-32. PubMed
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