先に結論:乳腺の線維腺腫(FA:fibroadenoma)とは
- エコーやカルテの「FA」は線維腺腫(fibroadenoma)の略で、乳腺の良性腫瘍で最も多いものです。20〜30歳代に多く、よく動くコロコロしたしこりとして触れることがあり、閉経後は小さくなります。乳がんになることはまれです
- エコーでは境界がはっきりした、なめらかで横長(楕円形)の低エコー腫瘤として見えます。時間がたって硬くなったもの(陳旧性線維腺腫)では粗い石灰化を伴うことがあります
- MRIでは、内部のT2強調像で黒い隔壁(dark internal septation)が特徴的です。多くは経過観察で、大きくなる・症状がある場合は摘出を考え、葉状腫瘍や粘液癌などと見分けます
- 乳がんとの違いは、形(楕円形か不整形か)・境界(なめらかかギザギザか)・向き(横長か縦長か)です
線維腺腫(Fibroadenoma:FA)
- 上皮と間質の両者が増殖する過形成性増殖。
- 乳腺良性腫瘤の中で最多。多発、両側例もしばしばあり。
- 20〜30歳代に多い。閉経後は自然退縮する。
- 病理:上皮成分の組織形態により4つに分類される。管内型、管周囲型、類臓器型、乳腺症型の4つ。
- 自然退縮もあり治療の必要なし。線維腺腫内に乳癌が発生することはまれ。
- 増大する場合や症状がある場合は摘出を考慮する。若年性線維腺腫や授乳性腺腫のようにホルモンの影響で急速に大きくなる亜型もあるが、通常の線維腺腫はゆっくり増大し閉経後に退縮する。一方、葉状腫瘍は40〜50歳代に多く、増大する大きな腫瘤として見つかることが多いため、年齢と増大の経過も鑑別の手がかりになる。
画像所見
- 4亜型を画像で診断する必要はない。陳旧性線維腺腫か否かを判断できればよい。
- 境界明瞭平滑で扁平な腫瘤。超音波で、縦横比は小さい(横長)ことが多い。
- 内部性状は間質成分の性状により、粘液浮腫状(粘液癌と似ている)から硝子化から石灰化を伴うものまである。
- MRIでは、浮腫状のものはT2WIで著明な高信号を示し、強く造影されることが多い。この場合は、鑑別として粘液癌を考慮する。
- 内部には密な膠原線維帯を反映して、T2WIで低信号を呈する隔壁を認めることがあり、dark internal septationと呼ばれる。造影される線維腺腫の約6割で内部隔壁がみられ、病理の膠原線維帯に対応すると報告されています。また、T2WI低信号で造影されないものは硬化性の間質を反映し、高齢者に多い傾向があります。
- 間質の浮腫が減るにつれてT2WIの信号は等信号に近づき、同時に造影効果も減弱していく。特に、間質の硝子化が進んだ陳旧性の線維腺腫の場合、T2WIで低信号を呈し、造影されなくなる。両者が混在して、悪性と鑑別が困難な場合もある。
- 典型例では、ダイナミックでは、persistentパターンが典型的だが、若年者の血流の多いものだと、washoutを呈することもある。
- DWIでは、T2 shine-throughの影響により高信号を呈するが、ADCは高値なので悪性と鑑別できる。
症例 30歳代女性 左乳房の硬く可動性のある腫瘤(5年間不変)
乳腺超音波で、境界明瞭で分葉状の楕円形低エコー腫瘤を認めます。大きさは約20.6×10.0mmで横長(縦横比が小さい)の形をしています。5年前の穿刺吸引細胞診で線維腺腫と確定し、その後大きさは変わっていません。
線維腺腫(FA)と乳がんのエコーでの違い
| 線維腺腫(FA)に多い所見 | 乳がんを疑う所見 | |
|---|---|---|
| 形 | 楕円形、ゆるい分葉が数個まで | 不整形、細かい分葉 |
| 境界 | 明瞭・平滑、薄い高エコーの被膜様の縁 | 不明瞭、角ばる、ギザギザ(スピキュラ)、厚い高エコーの縁(halo) |
| 向き(縦横比) | 横長(皮膚と平行) | 縦長(皮膚に対して立ち上がる) |
| 後方エコー | 不変〜増強(硝子化したものは減弱) | 減弱(陰影)が多い |
| 石灰化 | 粗大(陳旧性) | 微細な点状 |
750個の充実性腫瘤を前向きに分類した研究では、悪性の特徴がひとつもなく、楕円形で薄い被膜様の縁をもつなどの条件で「良性」とした腫瘤の陰性的中率は99.5%でした(Stavros 1995)。悪性を疑う所見がひとつでもあれば良性とせず、針生検で確認します。
線維腺腫と葉状腫瘍の違い
- 線維腺腫は20〜30歳代に多くゆっくり大きくなるのに対し、葉状腫瘍は40〜50歳代に多く、大きくなってくるしこりとして見つかり、画像でも大きく形が不整なことがある。葉状腫瘍は針生検で一部しか採れず見誤るおそれと悪性の可能性があるため摘出される(Zhang 2023)。
線維腺腫と粘液癌の鑑別点
| FA(浮腫状) | FA(硝子化) | 粘液癌 | |
| エコー | 低-等エコー 後方エコー増強 |
低エコー 後方エコー減弱 |
等-高エコー 後方エコー増強 |
| T2WI | 高信号 | 低信号 | 著明な高信号 |
| ダイナミック | Persistent Rapid-plateau |
弱いPersistent | 弱いPersistent |
線維腺腫(FA)でよくある疑問(Q&A)
Q. 乳腺エコーの「FA」とは何ですか?
A. 線維腺腫(fibroadenoma)の略で、乳腺の良性腫瘍で最も多いものです。
Q. 線維腺腫は乳がんになりますか?
A. 線維腺腫そのものが乳がんに変わることはまれです。1,835人を追跡した研究では、線維腺腫のある女性の浸潤性乳がんのリスクは対照の2.17倍、複雑型線維腺腫(嚢胞・硬化性腺症・上皮の石灰化・乳頭状アポクリン変化を含むもの)では3.10倍でしたが、複雑型でなく乳がんの家族歴もない3分の2の人ではリスクは上がっていませんでした(Dupont 1994)。しこりが急に大きくなった、形が変わったなど気になる変化があれば、乳腺外科を受診してください。
あわせて読みたい:乳管内乳頭腫とは?エコー・MRI画像所見と非浸潤性乳管癌との鑑別、乳腺エコーの解剖と内部エコー・後方エコー(増強・減弱)からの鑑別診断
参考文献
- Hochman MG, Orel SG, Powell CM, et al. Fibroadenomas: MR imaging appearances with radiologic-histopathologic correlation. Radiology. 1997;204(1):123-9. PubMed
- Greenberg R, Skornick Y, Kaplan O. Management of breast fibroadenomas. J Gen Intern Med. 1998;13(9):640-5. PubMed
- Zhang M, Arjmandi FK, Porembka JH, et al. Imaging and Management of Fibroepithelial Lesions of the Breast: Radiologic-Pathologic Correlation. Radiographics. 2023;43(11):e230051. PubMed
- Guray M, Sahin AA. Benign breast diseases: classification, diagnosis, and management. Oncologist. 2006;11(5):435-49. PubMed
- Dupont WD, Page DL, Parl FF, et al. Long-term risk of breast cancer in women with fibroadenoma. N Engl J Med. 1994;331(1):10-5. PubMed
- Stavros AT, Thickman D, Rapp CL, et al. Solid breast nodules: use of sonography to distinguish between benign and malignant lesions. Radiology. 1995;196(1):123-34. PubMed
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