ナボット嚢胞(Nabothian cyst)は、子宮頸部の移行帯(transformation zone)に好発する良性の貯留嚢胞であり、婦人科MRI検査で非常に高頻度に遭遇します。

婦人科のエコーで「ナボット嚢胞」があると言われました。大丈夫ですか?

子宮の入り口(頸部)の分泌物がたまった小さな袋で、大人の女性によく見られる良性のものです。ふつうは治療はいりませんよ。

先に結論:ナボット嚢胞とは

  • 子宮の入り口(子宮頸部)で、分泌物の出口がふさがってたまった小さな袋(嚢胞)
  • 大人の女性によく見られる良性のもので、大きさは数mm〜1cm程度、いくつもあることが多い
  • 症状はなく、ふつうは治療不要です
  • 注意: 嚢胞が集まって大きい・中に固い部分(充実部分)がある・水っぽいおりものが多い、という場合は別の病気(LEGHなど)との区別のためMRIなどで調べます
  • 子宮頸がん検診(細胞診)は、ナボット嚢胞とは別に定期的に受けましょう

ナボット嚢胞(Nabothian cyst)

  • 子宮頸部の移行帯(transformation zone)に生じる頻度の高い良性嚢胞。
  • 子宮頸管の腺組織(頚管腺)の開口部が扁平上皮により覆われることで、腺分泌物の出口が閉塞し、分泌物が腺内に貯留することで形成されます。これがナボット嚢胞であり、炎症やホルモン環境の変化なども形成に関与するとされています
  • 充実性部分を伴わない境界明瞭な類円形嚢胞を呈する。
  • 核異型や核分裂像は認めない。
  • 通常、無症候性で経過観察が可能な所見。過去の画像との比較も診断の参考になる。
    しかし、嚢胞の増大、壁の肥厚、内部充実性成分の出現などが認められた場合は、他の病変(LEGHや悪性腫瘍)との鑑別が必要。

ナボット嚢胞の画像診断上の特徴

  • 大きさ:数mm〜1cm程度の嚢胞で、多発することが多い
  • 形状:境界明瞭な類円形の嚢胞で、充実成分を伴わない
  • T1WI:内容物の蛋白濃度によって低〜高信号
  • T2WI:通常は高信号
  • 造影効果:通常はなし

多発例では、嚢胞間に正常な頸部間質が介在しているのが特徴的で、これにより浸潤性病変との鑑別に寄与する。MDA(現在の胃型腺癌の高分化型)を疑って手術された112例の多施設検討では、中央病理診断で37例がナボット嚢胞またはトンネルクラスターでした。MRIではLEGHは内部に充実成分を伴う多房性嚢胞、MDAは充実性優位の像を示し、MRI・細胞診・胃型粘液の組み合わせで術前診断の精度が上がるとされています(Takatsu 2011)。

症例 50歳代女性

Nabothian cyst

子宮頚部に境界明瞭な多数の嚢胞性病変を認め、Naboth嚢胞が疑われます。

病理的所見と鑑別診断

ナボット嚢胞は基本的に良性であり、核異型や核分裂像を認めないことが特徴です。診断の際は、以下の疾患との鑑別が重要になります。

  • 子宮頸管腺過形成(LEGH):多発嚢胞の集合体に見えることがあり、ナボット嚢胞と画像上の鑑別が困難な場合もあります
  • 胃型腺癌(GAS):WHO女性生殖器腫瘍分類 第5版(2020)の「HPV非依存性腺癌・胃型」。旧称の悪性腺腫・最小偏倚腺癌(MDA)は、胃型腺癌のうちきわめて高分化なものとして胃型腺癌に含める(Talia 2018;Molero 2023)。LEGHの一部は前癌病変として捉えられるため注意が必要

なお、LEGHやGASとの鑑別には、MRIの「コスモスサイン」、細胞診での胃型粘液の検出、核異型の有無を組み合わせて評価し、時に円錐切除などの組織診断が必要となります。

■ ナボット嚢胞・LEGH・胃型腺癌(旧:悪性腺腫/MDAを含む)の違い(早見表)

ナボット嚢胞 LEGH(分葉状頸管腺過形成) 胃型腺癌(旧:悪性腺腫/MDAを含む)
性質 分泌物がたまった良性の貯留嚢胞 良性の過形成だが前癌病変としての面をもつ 悪性腫瘍
MRIの典型像 境界明瞭な嚢胞。充実成分なし。嚢胞の間に正常な頸部間質がある 内部に充実成分を伴う多房性嚢胞(コスモスサイン) 充実部分が主体の像
細胞診・胃型粘液 異型なし 胃型粘液を産生し、核異型に乏しい 異型腺細胞を認めることが多い
主な対応 通常は経過観察不要 円錐切除で確認し、手術または慎重な経過観察 手術を中心とした治療

LEGHは「内部に充実成分を伴う多房性嚢胞」、MDA(胃型腺癌の高分化型)は「充実性優位」という違いがあり、MRI・細胞診・胃型粘液を組み合わせて区別します(Takatsu 2011; Miyamoto 2022)。

■ 図式で理解する:4者の関係性

Naboth嚢胞(良性の保持嚢胞)※ここからは癌化しない
│
└───×(LEGHとは無関係)

LEGH(分葉状頚管腺過形成)←胃型病変の良性の側。前癌的要素あり
│
↓(異型を伴うLEGH・胃型上皮内腺癌 gAIS)
↓
胃型腺癌(GAS、HPV非依存性)← 細胞異型に乏しい高分化な腫瘍でも深部間質へ浸潤し予後不良
 └ きわめて高分化なもの = 旧称:最小偏倚腺癌(MDA)/悪性腺腫

※LEGHは“良性だけど癌とつながっているかもしれない”病変でNaboth嚢胞とは無関係。
LEGHは胃型腺癌(旧MDAを含む)の前駆病変と考えられ、悪性化は1〜2%と報告されている(Miyamoto 2022)。ただしLEGHから胃型腺癌への進展は、はっきり証明されたわけではない(Molero 2023)。経過観察では細胞診の悪化や病変の増大に注意する。

頸管の「隔壁」に見える正常構造(pseudoseptum・plicae palmatae)

  • 子宮頸管の粘膜には、頸管の長軸に沿ったひだ(plicae palmatae)があります。T2強調像でこのひだが縦に写ると、頸管の中に低信号の「隔壁」があるように見えます。子宮奇形のない女性260人の骨盤MRIでは、2人の読影者がともに19%で頸管の偽隔壁(pseudoseptum)を指摘し、全体では20〜30%にみられました。正常所見であり、子宮・頸部の形成異常(中隔子宮など)と取り違えないことが大切です(El Jack 2007)。
  • 女性409人のMRIでは、plicae palmataeが44.5%に描出され、30歳代で最も多く、閉経後は生殖年齢より少なくなりました。中隔子宮と誤診されると不要な手術につながるおそれがあります(Uysal 2015)。
  • 小児171人(0〜19歳)でも描出され、0〜2歳で38.1%、3〜6歳で0%、7〜10歳で25.0%、11〜19歳で56.4%と年齢で変わり、すべてひだ状で腫瘤のようには見えませんでした(Kitami 2018)。
  • ナボット嚢胞と同じく、頸部の正常の構造を知っておくことが、奇形や腫瘍の過剰な指摘を防ぐ近道です。

まとめ

ナボット嚢胞はMRIでしばしば偶然見つかる良性病変ですが、画像上での鑑別が難しい病変が存在するため、適切なフォローアップと鑑別診断の知識が求められます。特にLEGHや胃型腺癌(旧MDAを含む)と混同しないよう、形態的特徴や造影効果、細胞診・胃型粘液の結果を総合的に評価することが重要です(Takatsu 2011;Miyamoto 2022)。

参考文献:

  • Okamoto Y, Tanaka YO, Nishida M, et al. MR imaging of the uterine cervix: imaging-pathologic correlation. Radiographics. 2003;23(2):425-445.
  • Xu L, Wang YX, Wang W, et al. Association of Human Whole-blood NAD+ Levels with Nabothian Cyst. Biomed Environ Sci. 2024;37(5):471-478. PubMed
  • Hosseini S, Boroujeni PT, Hajizadeh N, et al. Cervical giant Nabothian cysts in a woman with primary infertility: a case report. J Med Case Rep. 2025;19(1):332. PubMed
  • Yorita K, Murayama M, Nakatani K, et al. Multiple Nabothian Cysts and Tunnel Clusters Clinically Mimicking Lobular Endocervical Glandular Hyperplasia: A Case Report. Cureus. 2025;17(1):e77643. PubMed
  • Lee KE, Kim JA, Kim MJ, et al. Cervical adenocarcinoma misdiagnosed as a nabothian cyst during pregnancy: A case report and review of the literatures. Medicine (Baltimore). 2025;104(22):e42336. PubMed

▶ ほかの所見も調べる:健診・人間ドックの画像検査で言われやすい所見一覧

  1. Takatsu A, Shiozawa T, Miyamoto T, et al. Preoperative differential diagnosis of minimal deviation adenocarcinoma and lobular endocervical glandular hyperplasia of the uterine cervix: a multicenter study of clinicopathology and magnetic resonance imaging findings. Int J Gynecol Cancer. 2011;21(7):1287-96. PubMed
  2. Miyamoto T, Kobara H, Shiozawa T. Biology and management of lobular endocervical glandular hyperplasia. J Obstet Gynaecol Res. 2022;48(12):3056-3067. PubMed
  3. Ando H, Miyamoto T, Kashima H, et al. Usefulness of a management protocol for patients with cervical multicystic lesions: A retrospective analysis of 94 cases and the significance of GNAS mutation. J Obstet Gynaecol Res. 2016;42(11):1588-1598. PubMed
  4. El Jack AK, Siegelman ES. “Pseudoseptum” of the uterine cervix on MRI. J Magn Reson Imaging. 2007;26(4):963-5. PubMed
  5. Uysal F, Cevizci S, Reşorlu M, et al. Plicae palmatae: an anatomical uterine cervix variation to be considered on magnetic resonance images. Clin Imaging. 2015;39(2):270-2. PubMed
  6. Kitami M. Plicae palmatae on MRI in the pediatric population. Clin Imaging. 2018;52:200-202. PubMed
  7. Talia KL, McCluggage WG. The developing spectrum of gastric-type cervical glandular lesions. Pathology. 2018;50(2):122-133. PubMed
  8. Molero A, Parra A, Blanco I, et al. Lobular Endocervical Glandular Hyperplasia, a mimicker and potential pitfall for HPV-independent well differentiated Gastric-type Endocervical Adenocarcinoma: Case report and literature review focusing on histology, immunophenotype, and molecular findings. SAGE Open Med Case Rep. 2023;11:2050313X231186210. PubMed

ナボット嚢胞でよくある疑問(Q&A)

Q. ナボット嚢胞はどれくらいの人にありますか?
A. 健康な中国人女性(平均43歳)の検討では27.7%にナボット嚢胞があり、単発が15.0%、多発が12.6%でした(Xu 2024)。珍しいものではありません。

Q. ナボット嚢胞はなぜできるのですか?
A. 子宮頸部の粘液をつくる腺の出口が、表面をおおう扁平上皮でふさがれ、粘液が中にたまってできます。出産、小さな傷、慢性の子宮頸管炎などと関係するとされます(Hosseini 2025)。生活習慣が悪かったから、というものではありません。

Q. ナボット嚢胞の治療法は?
A. 小さく症状のないナボット嚢胞は、治療の必要はありません。きわめて大きな嚢胞が頸管をふさいでいた不妊治療中の例では、採卵の際に嚢胞を吸引した報告があります(Hosseini 2025)。治療が必要かどうかは婦人科で相談してください。

Q. 更年期・閉経後でもナボット嚢胞はできますか?
A. 生殖年齢の女性によくみられるものですが(Hosseini 2025)、閉経前後の年代でも検査で見つかることがあります。良性であることに変わりはなく、年齢だけで対応が変わるわけではありません。不正出血や水っぽいおりものが増えるなど気になる症状があれば、婦人科を受診してください。

Q. 「子宮頸部に多発嚢胞がある」と言われたら?
A. 多くはナボット嚢胞ですが、LEGHや胃型腺癌(旧称の悪性腺腫を含む)も「多発嚢胞」に見えることがあります。子宮頸部の多発嚢胞性病変94例を細胞診・MRI・胃型粘液で振り分けた検討では、LEGH疑いで12カ月以上経過をみた42例のうち3例で増大があり、増大が悪性化の可能性を見つける大事なサインとされています(Ando 2016)。

Q. 大きなナボット嚢胞もありますか?
A. 通常は直径2〜10mm程度ですが、4cmを超える巨大なナボット嚢胞はまれにあり、悪性腺腫(adenoma malignum、現在は胃型腺癌の高分化型)と紛らわしいため、MRIや組織検査で確かめることがあります(Hosseini 2025)。

Q. 多発したナボット嚢胞はLEGHと見分けられますか?
A. 深い位置のナボット嚢胞やtunnel clusterが重なると、MRIでLEGHに似た像になることがあり、円錐切除で初めて区別できた報告があります。ナボット嚢胞とtunnel clusterは通常経過観察を要しない一方、LEGHは胃型腺癌の前駆病変になりうるため区別が大切です(Yorita 2025)。

Q. 「ナボット嚢胞」と言われた後に細胞診で異常が出たら?
A. 画像でナボット嚢胞と考えられた病変が、のちに子宮頸部腺癌と診断された報告があります。異型の細胞診やハイリスクHPV陽性が続く場合は生検を含めた精査が勧められています(Lee 2025)。

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