先に結論:大動脈解離の発症時期の推定
- 急性期の解離は剥離した内膜(フラップ)が薄く、拍動で揺れる・弯曲しているのが特徴で、大動脈の断面は丸いままです
- 慢性期にはフラップが厚く直線的になり、偽腔が大きく真腔が小さくなることが多いです
- 急性期には胸水・縦隔の血腫・周囲の無気肺を伴うことも多く、以前の画像との比較が最も確実です
- 偽腔は断面積が大きく、くちばし状の形(beak sign)になるのが目印です
大動脈解離の発症時期のCT画像からの推定
- 急性期では剥離内膜は薄く、拍動で揺れ動き、motion artifactにより二重に見える。上行大動脈の拍動によるmotion artifactは心電図同期CTで除去でき、フラップの範囲やエントリーの同定が確実になります。
- 急性期の場合は動脈の横断面は丸く、本来の動脈の形をしている。
- 慢性期には剥離内膜は厚くなり「直線化」する。真腔は小さく、偽腔が大きく、動脈の断面図は全体としてはダルマ状になるものもある。
- 急性期の経過観察では、胸水や下行大動脈周囲の無気肺といった付随的な所見をよく認め、これも急性期・慢性期の鑑別に役立つ。
急性大動脈解離を乗り越えた患者は、偽腔の変性・瘤化による晩期合併症に備えて生涯にわたる画像での経過観察が必要である。米国心臓協会の声明では、機器や検査法が変わっても大動脈径を正確・系統的に測定して記録することが重要とされている。
急性期・慢性期、真腔・偽腔を見分けるCT所見
- 急性期:大動脈周囲の軟部濃度、弯曲したフラップ、よく動くフラップ。慢性期:厚いフラップ、偽腔外壁の石灰化、偽腔内の血栓、偽腔の拡張(Orabi 2018)。
- 偽腔は断面積が大きくbeak signを示し、真腔は外壁の石灰化を伴いやすい所見です(LePage 2001)。
突然の強い胸や背中の痛みがあるときは、すぐに救急を受診してください。
▶動画で学ぶ大動脈解離の急性期と慢性期の違い
症例1 60歳代女性(急性期のStanford A型解離)

引用:Radiopaedia(Beak sign of aortic dissection)
自宅で意識がない状態で見つかり、救急で撮影された造影CTです。上行大動脈と下行大動脈の内腔に剥離内膜(フラップ)がみられるStanford A型の解離で、フラップと外壁がくちばし状の鋭い角(beak sign)を作る側が偽腔、もう一方が真腔です。
症例2 60歳代男性(慢性期のStanford B型解離)

引用:Radiopaedia(Chronic aortic dissection type B and repaired aortic dissection type A)
A型解離の修復術後で、B型解離が慢性期として残っている症例の腹部大動脈レベルの造影CTです。大動脈の内腔が直線的なフラップで2つの腔に分かれ、大動脈壁には石灰化がみられます。
あわせて読みたい:大動脈解離に見えるもの(mimic)
参考文献
- Fleischmann D, Mitchell RS, Miller DC. Acute aortic syndromes: new insights from electrocardiographically gated computed tomography. Semin Thorac Cardiovasc Surg. 2008;20(4):340-7. PubMed
- Fleischmann D, Afifi RO, Casanegra AI, et al. Imaging and Surveillance of Chronic Aortic Dissection: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circ Cardiovasc Imaging. 2022;15(3):e000075. PubMed
- Orabi NA, Quint LE, Watcharotone K, et al. Distinguishing acute from chronic aortic dissections using CT imaging features. Int J Cardiovasc Imaging. 2018;34(11):1831-1840. PubMed
- LePage MA, Quint LE, Sonnad SS, et al. Aortic dissection: CT features that distinguish true lumen from false lumen. AJR Am J Roentgenol. 2001;177(1):207-11. PubMed
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いつも楽しく勉強させていただいております。
一つお伺いしたいのですが大動脈解離の発症時期の推定について急性期には剥離内膜がモーションアーチファクトにより二重に見えるとありますが先生が載せていただいた動画にて半年後の画像でも二重に内膜が見える箇所があるのですが今ひとつ区別がつきません。ご教授ねがえますでしょうか。
コメントありがとうございます。
>動画にて半年後の画像でも二重に内膜が見える箇所がある
おっしゃるように二重に見える部位ありますね。
半年後も偽腔が開存した状態ですので、そのように見えるのだと思います。
この場合は、半年後は真腔がさらに小さくなり直線化しているという点で慢性期と鑑別してください。