先に結論:膵癌のリンパ節転移・遠隔転移

  • 膵癌の手術前には傍大動脈リンパ節などの遠隔リンパ節転移・肝転移・腹膜播種がないかを確認します。これらがあれば一般に切除の対象外です
  • リンパ節は短径1cm以上・強い造影・リング状の造影で転移を疑いますが、炎症による腫大と区別しにくく、小さな転移は写りません。CTでリンパ節転移を診断する精度は高くありません
  • 膵癌の小さな肝転移はCTで見落としやすいため、EOB-MRI(特にDWI)が有用です
  • 腹膜播種もCTで写りにくく、手術や腹腔鏡で初めて見つかることがあります

膵癌のリンパ節転移

・手術では領域リンパ節を郭清するため、術前に求められるのは領域外のリンパ節転移の有無である。

・ただし、術前CTで領域リンパ節転移が明らかな場合に手術適応を慎重に判断するとする記載もある。

・膵癌は膵管拡張に伴い随伴性膵炎を来していることが多く、術前CTで1cm前後のリンパ節の転移の有無は炎症性か、転移か診断困難。

・傍大動脈リンパ節転移があれば手術適応外とされることが多い。切除例の13研究(2141例)のメタ解析では、傍大動脈リンパ節転移がある群は死亡のリスクが高く(ハザード比1.85)、術中に見つかった場合に切除をやめるべきかは今後の検討が必要とされています(Paiella 2016)。

・転移性か炎症性か判断困難な場合は、開腹後まず傍大動脈リンパ節生検を行い、転移の有無を確認する。CTによる領域外リンパ節転移の診断能を調べたメタ解析では、統合した感度25%・特異度86%・陽性的中率28%と低く、CTで領域外リンパ節転移を疑うだけでは手術の禁忌とすべきでないと結論されています。

・他の部位の癌と基本的に同一。短径1cm以上の大きさが目安。

・濃染の程度が強いもの、リング状濃染を示すものは、1cm以下でも注意する所見とされる。ただし、短径・卵円形の形・リンパ節がまとまって見えること・脂肪性門の消失は、転移の予測にあまり役立たなかったという検討がある(Roche 2003)。

・しかし、画像で陽性として捉えられるリンパ節は癌でほぼ完全に置換されている場合に限られ、一部にしか転移巣が存在しない場合は画像上捉えることは不可。実際、短径10mm超を転移陽性とした場合の感度は14%にとどまったとの報告がある。

膵癌の遠隔転移(肝転移)

・膵癌の肝転移の画像所見は一般的な腺癌の肝転移のそれと同一。しかし、粟粒大のものが多発する場合もあり、小さな転移巣の検出能は極めて低い。

・被膜直下に動脈門脈短路(A-P shunt)様の所見を呈する傾向がある。

・Gd-EOB MRIが有用。

・同じ患者でCTとMRIを比べた14研究(987例)のメタ解析では、膵癌の肝転移を見つける感度はCTが45%、MRIが83%で、特異度はCT 94%、MRI 96%でした(Alabousi 2021)。

膵癌の腹膜播種

・小さな結節や薄い腹膜の肥厚として現れるため、少量の腹水や大網の濃度上昇にも注意します。

・局所進行膵癌91例の審査腹腔鏡では、CTで見つからなかった転移が19%にみられ、肝のみ8%、腹膜のみ10%でした(Suker 2019)。

腹膜播種・小さな肝転移を拾うために

CTで転移なしとされた膵癌で、拡散強調像(DWI)を含むMRIを追加した前向き試験(40例を予定、38例を解析)があります。腫瘍が3cm以上またはCA19-9が高いなど転移のリスクが高い例で、CTで見つからなかった肝転移が34.2%(13例)、腹膜転移が5.3%(2例)みつかり、MRIの感度は肝転移で86.7%、腹部全体の転移で78.9%でした(Charbonneau 2025)。小さな腹膜播種は、MRIでも見落とすことがあります。

CTとMRIを比べた研究でも、腹膜播種や大網への播種は過小評価されることがあり(38例の検討、Chen 2016)、画像で転移なしと判断された場合でも、審査腹腔鏡などで初めて転移が見つかることがあります(Suker 2019)。

読影のポイントを表にまとめます。

部位 CTで見るポイント 限界・追加の検査
領域外リンパ節(傍大動脈など) 短径、造影の強さ、リング状の造影 CTの感度は低い(統合した感度25%・特異度86%、Tseng 2014)。疑いだけで手術の禁忌とはしない
肝転移 造影の乏しい小結節、被膜下の動脈門脈短絡様の所見 MRI(EOB-MRI・DWI)が有用
腹膜播種 少量の腹水、大網の濃度上昇、腹膜の肥厚や小結節 CTでもMRIでも見落とす。審査腹腔鏡で確認することがある

症例 60歳代男性 腹痛と体重減少(CA19-9・肝酵素上昇)

膵癌 肝転移 造影CT 門脈相 横断像
引用:Radiopaedia(Metastatic pancreatic ductal adenocarcinoma)

造影CT門脈相で、肝臓の両葉に造影効果の乏しい低吸収の結節が多発しており、右葉の大きなものは辺縁がやや濃いリング状に見えます。膵頭部〜鉤部の約30mmの膵管癌からの多発肝転移と考えられました。報告では領域リンパ節の軽度腫大(短径11mm未満)も伴っていました。

Q. 膵臓がんのリンパ節転移はCTで分かりますか?
A. 大きく丸いリンパ節は転移を疑いますが、炎症による腫大と区別しにくく、一部だけの転移は写りません。CTで転移なしとされても、転移がないとは限りません。

Q. 膵癌の肝転移は、CTとMRIのどちらで見つかりやすいですか。
A. 同じ患者でCTとMRIを比べた14研究(987例)のメタ解析では、感度はCT 45%、MRI 83%でした(Alabousi 2021)。小さな肝転移の確認にMRIを追加することがあります。

Q. 傍大動脈リンパ節が腫れていると言われました。手術はできませんか。
A. CTでの疑いだけで手術の対象外とは決められません(Tseng 2014)。ただし傍大動脈リンパ節転移があると予後が悪いことが示されているため(Paiella 2016)、手術の可否は主治医の判断になります。

お腹や背中の痛み、体重減少、黄疸などがあれば、早めに医療機関を受診してください。

あわせて読みたい:膵臓がんはCTで早くから写っている?見逃されやすい膵臓がんのサイン

参考文献

  1. Roche CJ, Hughes ML, Garvey CJ, et al. CT and pathologic assessment of prospective nodal staging in patients with ductal adenocarcinoma of the head of the pancreas. AJR Am J Roentgenol. 2003;180(2):475-80. PubMed
  2. Yamaguchi T, Sofue K, Ueshima E, et al. Abbreviated Gadoxetic Acid-Enhanced MRI for the Detection of Liver Metastases in Patients With Potentially Resectable Pancreatic Ductal Adenocarcinoma. J Magn Reson Imaging. 2022;56(3):725-736. PubMed
  3. Ishida M, Fujii T, Kishiwada M, et al. Japanese classification of pancreatic carcinoma by the Japan Pancreas Society: Eighth edition. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2024;31(11):755-768. PubMed
  4. Tseng DS, van Santvoort HC, Fegrachi S, et al. Diagnostic accuracy of CT in assessing extra-regional lymphadenopathy in pancreatic and peri-ampullary cancer: a systematic review and meta-analysis. Surg Oncol. 2014;23(4):229-35. PubMed
  5. Zins M, Matos C, Cassinotto C. Pancreatic Adenocarcinoma Staging in the Era of Preoperative Chemotherapy and Radiation Therapy. Radiology. 2018;287(2):374-390. PubMed
  6. Alabousi M, McInnes MD, Salameh JP, et al. MRI vs. CT for the Detection of Liver Metastases in Patients With Pancreatic Carcinoma: A Comparative Diagnostic Test Accuracy Systematic Review and Meta-Analysis. J Magn Reson Imaging. 2021;53(1):38-48. PubMed
  7. Suker M, Koerkamp BG, Coene PP, et al. Yield of staging laparoscopy before treatment of locally advanced pancreatic cancer to detect occult metastases. Eur J Surg Oncol. 2019;45(10):1906-1911. PubMed
  8. Paiella S, Sandini M, Gianotti L, et al.. The prognostic impact of para-aortic lymph node metastasis in pancreatic cancer: A systematic review and meta-analysis. Eur J Surg Oncol. 2016;42(5):616-24. PubMed
  9. Chen FM, Ni JM, Zhang ZY, et al.. Presurgical Evaluation of Pancreatic Cancer: A Comprehensive Imaging Comparison of CT Versus MRI. AJR Am J Roentgenol. 2016;206(3):526-35. PubMed
  10. Charbonneau J, Noël P, Ouellet JF, et al.. Diagnostic Value of Diffusion-Weighted MRI for the Detection of Peritoneal and Liver Metastases in High-Risk Pancreatic Ductal Adenocarcinoma: A Prospective Pilot Study. Ann Surg Oncol. 2025;32(9):6511-6518. PubMed

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