前立腺がんは一般的に予後の良いがんで知られています。
腫瘍マーカーであるPSAが基準値を超えたときに見つかることが多く、その後の方針は施設によっても異なりますが、前立腺の生検や前立腺のMRI検査が行われます。
近年は、生検の前にMRIを行い、怪しい部分を狙って生検する(MRI標的生検)方法が広く行われています。無作為化試験(PRECISION:Kasivisvanathan 2018)では、MRI標的生検群は従来の系統的生検群より臨床的に有意な癌の検出が多く(38% vs 26%)、臨床的に意義の乏しい癌の診断は少なく、MRIで癌を疑わない28%は生検を省略できました。
今回はそんな前立腺癌はMRI検査でどのような画像所見を示すのか、どのように病期分類されるのかについてまとめました。
先に結論:前立腺がんのMRI
- 前立腺がんはT2強調像で黒い(低信号)・拡散強調像で白くADCが低い・造影で早く染まる病変として見え、評価はPI-RADS v2.1で行います。辺縁域は拡散強調像、移行域はT2強調像を重視するのがポイントです
- PSA高値などでがんが疑われるとき、生検の前にMRIを行い、PI-RADS 3〜5の部分を狙って生検する方法が広く行われ、必要な生検を減らしつつ悪性度の高いがんを見つけやすくなります
- 病期では前立腺の外への広がり(T3a)・精嚢への浸潤(T3b)・リンパ節や骨転移を評価し、治療方針(手術・放射線・ホルモン療法・監視療法)の決定に役立てます
※健診でPSAが高いと言われたときは、泌尿器科で相談してください。
前立腺癌のMRI所見
- T2WIにてlow
- dynamicにて早期相で増強効果、後期相でwashoutを呈する。
- DWIにてhigh、ADCにてlow
※Gleason高いほど、ADC値は落ちる傾向あり。ただしADC値だけで高リスク癌と低リスク癌を分ける精度は中等度です(13研究のメタ解析で感度76.9%・特異度77.0%:Shaish 2017)。
※移行域癌は辺縁域癌より、精嚢浸潤や被膜外浸潤が少なく、再発も少ない傾向があります(全摘1354例:Lee 2015)。

これが以前言われていたことですが、2015年のPI-RADS v2(現在は2019年改訂のv2.1)で大きく変わりました。
これにより前立腺MRIで前立腺がんの画像診断はより標準化されました。
PI-RADS v2の要点
PI-RADS v2では、前立腺の部位によりみるべきシークエンスを代えるというのがポイントです。
すなわち、移行域では前立腺ガンと間質優位型の前立腺肥大のオーバーラップがかなりあるため、DWIや造影MRIよりもT2強調像をしっかりチェックすることが大事です。
また辺縁域では、DWIをしっかりチェックすることが大事です。
詳しくはこちらにまとめました→前立腺癌のMRI画像診断におけるPI-RADS v2まとめ!
PI-RADSスコア(1〜5)の意味
| スコア | 臨床的に意義のある癌の可能性 |
| 1 | 非常に低い |
| 2 | 低い |
| 3 | どちらとも言えない(中間) |
| 4 | 高い |
| 5 | 非常に高い |
各シークエンスのスコアを組み合わせて総合評価する枠組みは、v2.1でも維持されています(Turkbey 2019)。
前立腺MRIで見る解剖(辺縁域・移行域・尖部・被膜・神経血管束)
- 辺縁域:前立腺の後ろ〜外側を占め、T2強調像で高信号。癌の多くはここに発生します。
- 移行域:尿道の周りで、前立腺肥大症が起こる部分。前立腺癌のおよそ20〜25%は移行域から発生します(Lee 2015)。
- 尖部(apex):前立腺の足側(尿道括約筋側)の先端。底部(base)は膀胱側です。
- 被膜:辺縁域の外側を縁取るT2強調像の低信号線。これが途切れていると被膜外浸潤を疑います。
- 神経血管束(NVB):前立腺の後外側を走る神経と血管の束で、勃起機能に関わります。左右差は被膜外浸潤の手がかりです。
前立腺癌病期分類(T因子)
- T1:直腸指診で触知することが不可能な腫瘍で、画像でも診断が不可能。
- T2:腫瘍が触知可能(あるいは画像で診断可能)で前立腺に限局した状態
- T3:前立腺外へ進展している状態(T3a:被膜外浸潤/T3b:精嚢浸潤)
- T4:膀胱・直腸など隣接臓器への浸潤。

前立腺全摘術を行なった場合、術後の合併症として、性機能障害(勃起障害)や尿失禁が起こることがあります。
被膜外浸潤の有無は、神経血管束を温存する手術を選べるかどうかなど、治療方針に関わります。
つまり、T3以上なのかT2以下なのかは治療方針や術後の合併症の起こりやすさにも直結し、T3以上の診断が最重要であり、被膜外浸潤をいかに診断できるかが重要であるということです。(しかし難しい。)
MRIによる局所病期(T因子)診断
- T因子(局所病期)診断ではMRI(mpMRI)が用いられる。被膜との接触長で被膜外浸潤を予測した13研究2136人のメタ解析では、感度0.79・特異度0.67でした(Kim 2020)。
T3a(被膜外浸潤)診断のポイント
被膜外浸潤を疑わせる所見
- 被膜断裂
- a.被膜と腫瘍が広く接する(PI-RADS v2.1では10mm、v1では15mmが目安):2方向で確認する。
- b.前立腺外への不整膨隆
- c.直腸前立腺角(retroprostatic angle)の鈍化
- d.神経血管束(NVB)の左右非対称化
直接所見(b,c):周囲脂肪組織へ進展→ほぼ確実に被膜外浸潤あり。 間接所見(a,d):腫瘍自体は前立腺内→軽微な被膜外浸潤の可能性。前向き553例の検討では、被膜との曲線状接触長1.5cm以上または被膜の膨隆・不整のどちらかをグレード1、両方をグレード2、明らかな被膜外進展をグレード3とするMRIグレードが提案され、病理学的被膜外浸潤の頻度はそれぞれ24%、38%、66%でした(Mehralivand 2019)。接触長の23研究のメタ解析では感度76.3%・特異度68.8%で、14mmの閾値は10mmより特異度がやや高い結果でした(Futela 2025)。
解剖の復習と被膜外浸潤


症例 70歳代男性

被膜外浸潤の有無についてのレポート例
- 「抽出できた所見」、「所見の解釈」を分けて記載せよ。
1)「被膜外浸潤あり」というメッセージ例
「前立腺midglandの高さではT2強調像で6~10時方向の辺縁域に低信号を呈する腫瘤を認める。特に7~9時方向にかけては被膜を表す低信号線が腫瘤により断裂し、同部は外方へ不整に膨隆していることから、被膜外浸潤を伴う前立腺癌と考える。」
2)「軽微な被膜外浸潤があるかもしれない」というメッセージ例
「前立腺apex〜midglandの高さでは、T2強調像で3〜6時方向の辺縁域に低信号腫瘤を認め、前立腺癌を疑う腫瘤による被膜の断裂や不整な膨隆は描出されず、肉眼的なレベルでの被膜外浸潤の可能性は低い。しかし腫瘤は12mm以上にわたり被膜と接しており、またT2強調冠状断像でも左側で被膜と腫瘤の接する幅が広いことから、顕微鏡的な被膜外浸潤を伴う状態がありうる」
3)「被膜外浸潤なし」というメッセージ例
「前立腺apexの高さでは、T2強調像で10〜11時方向の辺縁域に低信号を呈する腫瘤を認め、外科的被膜が不明瞭化している移行域への浸潤を伴う辺縁域癌と考える一方、外側方向に関しては辺縁域の腫瘤と前立腺被膜との間に健常な高信号を呈する辺縁域が残っており、被膜外浸潤はない」
画像診断2010年4月 ここが知りたい!前立腺癌所見の書き方 獨協医科大学 楫靖先生より引用
T3b(精嚢浸潤)診断のポイント
精嚢浸潤を疑わせる所見
- 精嚢内腔液が消失し、充実性腫瘍に置き換わる(液が貯まるspaceがなくなる)→T2WI低信号、Gdで造影。
- 壁、隔壁の肥厚。
- corで精嚢浸潤が分かりやすいことあり。
症例 60歳代男性

※精嚢へ浸潤する経路としては、射精管に沿った浸潤や、前立腺の外へ出た腫瘍が直接広がる浸潤などが考えられています。
T2かT3かで迷ったら、原則的には低いstageを選択するのですが、
- 明らかなT3a
- 切除断端陽性の危険性がある腫瘍(特に前立腺尖部腹側)
- 精囊浸潤
がある場合には、その旨を落とさずに、報告することが大事です。
※前立腺尖部腹側は手術で前立腺全摘出をする際に、取り残しやすい所なので注意。
T4(膀胱・直腸など隣接臓器への浸潤)診断のポイント
膀胱・直腸
- ともにT2WIで固有筋層が低信号なので、癌により筋層の低信号線が断裂していたら確定。
- 直腸と前立腺の間に存在するはずの脂肪(high)が腫瘍の存在により消失しているときに直腸浸潤を疑う。
- 骨盤底(外尿道括約筋、肛門挙筋など)はcoronalで評価せよ。
前立腺癌のCT画像所見(CTでわかること)
- CTは前立腺内の癌の場所や被膜外浸潤の評価には向かず、局所の評価はMRIで行います。
- CTの役割は主にリンパ節転移や骨転移(造骨型が多い)の評価です。新たに診断された前立腺癌のまとめでは、CTでリンパ節転移が見つかったのは限局癌で0.7%、局所進行癌で19.6%で、低リスクでは一律に行う検査ではないとされています(Abuzallouf 2004)。
リンパ節転移の評価はこちら
あわせて読みたい:前立腺癌のMRI画像診断をする以前に知っておくべき事、前立腺癌の鑑別診断(T2WIで低信号となるもの)
参考文献
- Turkbey B, Rosenkrantz AB, Haider MA, et al. Prostate Imaging Reporting and Data System Version 2.1: 2019 Update of Prostate Imaging Reporting and Data System Version 2. Eur Urol. 2019;76(3):340-351. PubMed
- Kasivisvanathan V, Rannikko AS, Borghi M, et al. MRI-Targeted or Standard Biopsy for Prostate-Cancer Diagnosis. N Engl J Med. 2018;378(19):1767-1777. PubMed
- Mehralivand S, Shih JH, Harmon S, et al. A Grading System for the Assessment of Risk of Extraprostatic Extension of Prostate Cancer at Multiparametric MRI. Radiology. 2019;290(3):709-719. PubMed
- Cornford P, van den Bergh RCN, Briers E, et al. EAU-EANM-ESTRO-ESUR-ISUP-SIOG Guidelines on Prostate Cancer-2024 Update. Part I: Screening, Diagnosis, and Local Treatment with Curative Intent. Eur Urol. 2024;86(2):148-163. PubMed
- Shaish H, Kang SK, Rosenkrantz AB. The utility of quantitative ADC values for differentiating high-risk from low-risk prostate cancer: a systematic review and meta-analysis. Abdom Radiol (NY). 2017;42(1):260-270. PubMed
- Lee JJ, Thomas IC, Nolley R, et al. Biologic differences between peripheral and transition zone prostate cancer. Prostate. 2015;75(2):183-90. PubMed
- Kim TH, Woo S, Han S, et al. The diagnostic performance of the length of tumor capsular contact on MRI for detecting prostate cancer extraprostatic extension: a systematic review and meta-analysis. Korean J Radiol. 2020;21(6):684-694. PubMed
- Futela D, Bhargava M, Rama S, et al. 10 mm (PI-RADS v2.1) versus 15 mm (PI-RADS v1.0) tumor capsule contact length in predicting extracapsular extension in prostate cancer: meta-analysis and systematic review. Abdom Radiol (NY). 2025;50(12):6106-6118. PubMed
- Abuzallouf S, Dayes I, Lukka H. Baseline staging of newly diagnosed prostate cancer: a summary of the literature. J Urol. 2004;171(6 Pt 1):2122-7. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
