クモ膜下出血(SAH)の原因動脈瘤の部位を推定する方法についてまとめました。

SAHの画像診断!原因動脈瘤の部位を推定する方法を知る。

次に、SAHを見つけたときに破裂している動脈瘤がどこなのかを推定する方法を見ていきましょう。方法は主に3つです。
  1. クモ膜下出血の部位
  2. 脳実質内血腫の部位
  3. filling defect sign

 2が最も正診率が高い。逆に1がはずれることがあることを知っておく。∵SAHは急速に脳脊髄液と混ざり拡散し、教科書的な分布にならないことも多い。体位により移動する。

(1)くも膜下出血部位から推測

  • 70-80%の正診率。出血量が少ない場合、搬送時の頭部の傾きにより不確実となる。
  • A-com aneurysmが最も診断しやすい。
部位 血腫の分布の特徴
A-com 前大脳縦裂下部-透明中隔腔を中心に左右対称。
ICA 同側の鞍上槽やSylvius谷に多い。Sylvius裂、脚間槽および迂回槽にも認められることが多い。両側性。
MCA 同側のSylvius裂中心。
VA-BA 後頭蓋窩(橋前槽、脚間槽、迂回槽など)中心。両側性、第4脳室内に血腫形成。
動画で学ぶクモ膜下出血①(前大脳縦裂の血腫の量が多い場合→A-com動脈瘤)30歳代女性

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動画で学ぶクモ膜下出血②(右シルビウス裂の血腫の量が多い場合→右MCA M2分岐部動脈瘤)40歳代女性

▶キー画像
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動画で学ぶクモ膜下出血③(延髄-頚髄レベルまでの血腫の量が認められる場合→椎骨脳底動脈系からの出血を疑う→脳底動脈瘤だった)70歳代女性

▶キー画像

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(2)脳実質内血腫の部位より推定

  • 動脈瘤破裂によるSAHの約30%に脳実質内血腫を合併。この局在から原因動脈瘤をほぼ100%近く診断できる。
  • 逆に、くも膜下出血を指摘できない脳実質出血や、脳室内出血で発症する脳動脈瘤破裂が1.6%ある。特に側頭葉皮質下出血の際には注意。また急性硬膜下血腫で発症する例もある。
  • 脳内血腫を合併した場合は、そうでない場合と比較して出血量が多く、重篤となる。
  • 脳実質内に穿破する原因、病態としては、以下の点が考えられている。
    • 動脈瘤とくも膜の間にminor leakなどで癒着を形成し、癒着部位に出血し、くも膜の破綻を来す。
    • 動脈瘤破裂時の圧が高く、くも膜の破綻を来す。
    • 動脈瘤がくも膜下腔以外に存在しており、その部分で破裂をする。
瘤の部位 脳実質内血腫の分布の特徴
A-com 前頭葉下部内側および透明中隔部。
ACA遠位 脳梁および帯状回。
IC-PC 側頭葉。
MCA 外包および側頭葉。
VA-BA系 (第4脳室内)

 

症例 70歳代女性 左MCA動脈瘤の破裂

SAHMCAintraaxialhemorrhage

(3)filling defect sign

  • 破裂動脈瘤自体が周囲に存在する高吸収を呈するくも膜下出血中に相対的な低吸収として描出されることがあり、filling defect signと呼ばれる。
  • 直径10mm以上の大きな動脈瘤に高率に描出される。くも膜下出血の約30%に認められる。
  • 未破裂動脈瘤がfilling defect signとして描出されることがあるため注意。
動画で学ぶfilling defect sign

▶キー画像
IC-PC IC-PC1

これら3つの方法を用いて原因となる破裂動脈瘤を推定する癖をつけましょう。

参考&引用改変文献)
・画像診断2007年6月 くも膜下出血の画像診断 大阪市立大学 下野太郎先生
・臨床画像2009年4月増刊号 救急画像診断 くも膜下出血 亀田総合病院 菊池陽一先生
・画像診断2010年8月くも膜下出血の画像所見 富山大学 野口京先生 

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