先に結論:下部消化管出血(血便)の原因と造影CT
- 血便の原因は大腸憩室出血・虚血性腸炎・感染性腸炎・薬剤性腸炎(痛み止めなど)・大腸がん/ポリープ・痔などで、日本の大規模な研究では憩室出血が最も多い原因でした。高齢者では憩室出血と虚血性腸炎に注意します
- 憩室出血は痛みのない大量の血便が特徴で、大腸内視鏡の前に造影CT(ダイナミックCT)を撮ると、造影剤のもれ(extravasation)で出血部位がわかり、内視鏡や血管内治療(塞栓術)に役立ちます。出血からCTまでの時間が短いほど見つかりやすくなります
- extravasation(エクストラ)とは、造影剤が血管の外(腸の中)へ漏れ出ている像のことで、動脈相で腸の中に急に現れ、遅い相で広がる・形が変わるのが活動性出血のサインです
- CTで造影剤のもれが見えないときは、出血が止まっているか、そのときだけ出血していなかった可能性があります。出血シンチ(標識赤血球シンチグラフィ)という方法もありますが、場所の特定はCTのほうが得意です(下の「CTでもれが見えないとき」)
- CTでは出血の場所のほか、腸の壁の肥厚(虚血性腸炎・腸炎)、腫瘍の有無も確認します
※大量の血便・ふらつき・冷や汗があるときは、すぐに救急を受診してください。
下部消化管出血の原因疾患
②炎症性:感染性腸炎、IBD(潰瘍性大腸炎、クローン病)
③血管性/血行障害性:AVM、angioectasia、虚血性腸炎、急性出血性直腸潰瘍
④代謝性:アミロイドーシス
⑤医原性:薬剤性腸炎、放射線性腸炎、内視鏡治療後出血
⑥その他:憩室出血、痔出血、粘膜脱症候群
- 頻度:日本の49施設で急性の血便のため入院した10,342例の検討では、患者さんの多くが高齢者で、大腸内視鏡で原因がわかった割合は94.9%、最も多い原因は憩室出血でした。虚血性腸炎や感染性腸炎は経過がよく、処置を必要とすることは少なかったと報告されています(Nagata 2021)。
- 成人では、大腸憩室、高齢者では虚血性大腸炎からの出血が多い。まれに盲腸の血管奇形であるangiodysplasiaが見られる。
憩室出血
- 憩室の壁を走る血管(直血管)が、炎症とは関係なく機械的に傷ついて破綻し、出血する(憩室炎を伴わないことが多い)。
- Extravasation検出率が高い条件は最終血便から造影CTまでの時間が短い、血圧低下、ショック症状のある場合。米国消化器病学会(ACG)の2023年ガイドラインでも、重い下部消化管出血ではCTAの役割が大きくなっているとされ、24時間以内の緊急大腸内視鏡は再出血などの転帰を改善しないとされる。造影CTでextravasationを認めた憩室出血では、初回治療にTAE(塞栓術)を選んだ方が30日以内の再出血が少なかった(7.7% vs 23.0%)という日本の報告もある。急性消化管出血に対するCTアンギオグラフィの診断能は、22研究(672例)のメタ解析で感度85.2%・特異度92.1%と報告されている。欧州消化器内視鏡学会(ESGE)の2021年ガイドラインも、循環動態が不安定で出血が続いていると疑われる例では、内視鏡的・放射線学的治療の前にCTAで出血部位を同定するよう推奨している。
- 逆に開腹しても出血部位が同定できないこともありその場合は、盲目的な結腸半切除術や結腸亜全摘を行なう場合もある。
症例 90歳代女性 下血。内視鏡にて憩室出血と診断し、止血した症例。

症例 70歳代男性 下血

急性出血性直腸潰瘍
- 無痛性の突然の大量血便で発症。
- 脳血管障害、寝たきり状態、糖尿病などを有する高齢者に発症する。
- 歯状線近傍に発生する。治療は内視鏡止血術。
- 宿便性潰瘍とオーバーラップも多い。同一疾患と考える報告もあり。
虚血性腸炎
感染性腸炎
- 血便以外の症状(下痢、発熱、腹痛、嘔吐)がある。
- 3層構造が保たれる。長軸方向に長い壁肥厚。
- 緊急止血術を必要としない。
- 血便の頻度が高い原因菌は、カンピロバクター、EHEC、アメーバ赤痢。
- アメーバ性大腸炎は内視鏡でUCと似る。CTでは肝膿瘍など腸管外の病変も検索すべき。
抗生物質起因性腸炎
抗生物質起因性腸炎の種類
- 偽膜性腸炎(C.difficile)
- 出血性腸炎(K.oxytoca)
- コレラ様下痢症(MRSA)
- 内服歴が重要。
- 緊急止血を必要としない。
炎症性腸疾患(IBD)
- IBD: 潰瘍性大腸炎、Crohn病。
- 潰瘍性大腸炎では粘血便から潰瘍による大出血まで様々。
- Crohn病では顕性出血をきたすことが稀であるが、 時に潰瘍による大出血がありうる。
- CTは罹患範囲の把握、合併症の診断にも有用。
造影CTのextravasation(エクストラ)とは?見方のポイント
extravasation(血管外漏出、略して「エクストラ」)は、出血している血管から造影剤が腸の中へ漏れ出している像です。1回の撮影だけでは判断しにくいため、単純CT→動脈相→門脈相(または遅延相)と相を並べて比べるのが基本です。
| 相 | 見るポイント |
|---|---|
| 単純CT | 腸の中にもともと白く(高吸収に)見えるもの(薬・クリップ・バリウム・便など)がないかを確認。出血の近くにたまった凝血塊が周りよりやや高吸収に見えることもあり、出血部位の手がかりになる |
| 動脈相 | 単純CTにはなかった点状・線状・ジェット状の高吸収が腸の中に新しく出現する |
| 門脈相・遅延相 | 漏れた造影剤が増える・広がる・形が変わる(腸の中にたまる)。この変化があれば活動性の出血と判断しやすい |
- CTはごく少ない出血も描出でき、ブタの実験では毎分0.3mLの出血も写り、毎分0.5mL以下の出血を描出できる可能性があるとされています(Kuhle 2003)。
CTで造影剤のもれが見えないとき:出血シンチ(標識赤血球シンチグラフィ)
下血が続いているのに、造影CTでもれ(extravasation)が見えないことがあります。憩室出血は出たり止まったりするため、撮影のときにたまたま止まっていれば写りません。こうしたときに使われる検査のひとつが出血シンチです。
- 患者さんの赤血球に放射性のテクネチウム(99mTc)を付けて静脈から戻し、出血していれば、そこに集まった放射能が腸の中にたまって見えます。時間をおいて繰り返し撮影できるため、出血が出たり止まったりする場合に使われます。
- CTアンギオグラフィと出血シンチを比べたメタ解析(44研究)では、出血の検出の感度は0.83(CT)と0.84(シンチ)、特異度は0.90と0.84で差は有意ではありませんでした。一方、出血部位を正しく特定できた割合はCTが1.00、シンチが0.90で、CTのほうが有意に高い結果でした(Yaxley 2023)。
- 下部消化管出血の疑いでCT 45件とシンチ90件を比べた施設の検討でも、出血を認めた割合はどちらも38%でしたが、出血部位を正しく特定できたのはCTで53%、シンチで30%でした(Feuerstein 2016)。
- 急性消化管出血の標識赤血球シンチ80件では、陽性が36%でした。確認できた31例の中で、シンチが陰性なのに実際は出血源があった(偽陰性)ものが17例、実際とは異なる陽性が2例あり、陽性率は低く、偽陰性や誤った陽性もあると報告されています(Tabibian 2013)。
| 造影CT(CTアンギオ) | 出血シンチ | |
|---|---|---|
| 得意なこと | 出血部位の特定。腸の壁の肥厚や腫瘍など原因も同時に見える | 時間をおいて繰り返し撮影し、出血が出たり止まったりするのを追える |
| 弱いところ | 撮影の瞬間に出血していないと写らない | 場所の特定がやや粗い。偽陰性や誤った陽性もある |
| 検出の感度(メタ解析) | 0.83 | 0.84 |
| 部位を正しく特定した割合(メタ解析) | 1.00 | 0.90 |
これらの結果から、まずCTを使うことが支持されています(Yaxley 2023)。CTでもれが見えなかったあとにシンチを追加するかどうかは、出血の様子と患者さんの状態を見ながら主治医が決めます。シンチが陰性でも出血源がないとは言えないため、内視鏡などで調べることがあります。
消化管出血の造影CTでよくある疑問(Q&A)
Q. 造影CTでエクストラが見えなければ、出血は止まっていますか?
A. 憩室出血などは出たり止まったりするため、撮影のときに出血が止まっていると写りません。見えなくても出血が続く・くり返すときは、CTの再検や大腸内視鏡を検討します。
Q. 単純CTだけで出血の場所はわかりますか?
A. 腸の中の血液のかたまりや、腫瘍・腸の壁の肥厚が手がかりになることはありますが、いま出血しているかどうかは造影CTで造影剤の漏れを確かめないと判断できません。
Q. エクストラが見つかったらどうなりますか?
A. 出血している場所がわかるので、その情報をもとに大腸内視鏡での止血や、カテーテルでの塞栓術(TAE)が検討されます。
Q. 出血シンチとCTはどちらが優れていますか?
A. 出血を見つける力(感度)は同程度ですが、出血の場所を正しく特定する力はCTのほうが高いと報告されています(Yaxley 2023)。出血シンチは時間をおいて繰り返し撮れる点が特徴で、使い分けは主治医が判断します。
Q. 出血シンチが陰性なら出血はありませんか?
A. そうとは限りません。標識赤血球シンチの80件では、確認できた31例のうち17例が偽陰性でした(Tabibian 2013)。出血が続いているときは、内視鏡などの検査で調べます。
参考文献
- Nagata N, Ishii N, Manabe N, et al. Guidelines for Colonic Diverticular Bleeding and Colonic Diverticulitis: Japan Gastroenterological Association. Digestion. 2019;99 Suppl 1:1-26. PubMed
- Sengupta N, Feuerstein JD, Jairath V, et al. Management of Patients With Acute Lower Gastrointestinal Bleeding: An Updated ACG Guideline. Am J Gastroenterol. 2023;118(2):208-231. PubMed
- Kojima Y, Katano T, Shimura T, et al. Efficacy of transcatheter arterial embolization for first-line treatment of colonic diverticular bleeding with extravasation on contrast-enhanced computed tomography. Medicine (Baltimore). 2022;101(44):e31442. PubMed
- García-Blázquez V, Vicente-Bártulos A, Olavarria-Delgado A, et al. Accuracy of CT angiography in the diagnosis of acute gastrointestinal bleeding: systematic review and meta-analysis. Eur Radiol. 2012;23(5):1181-90. PubMed
- Triantafyllou K, Gkolfakis P, Gralnek IM, et al. Diagnosis and management of acute lower gastrointestinal bleeding: European Society of Gastrointestinal Endoscopy (ESGE) Guideline. Endoscopy. 2021;53(8):850-868. PubMed
- Nagata N, Kobayashi K, Yamauchi A, et al. Identifying Bleeding Etiologies by Endoscopy Affected Outcomes in 10,342 Cases With Hematochezia: CODE BLUE-J Study. Am J Gastroenterol. 2021;116(11):2222-2234. PubMed
- Kuhle WG, Sheiman RG. Detection of active colonic hemorrhage with use of helical CT: findings in a swine model. Radiology. 2003;228(3):743-52. PubMed
- Yaxley KL, Mulhem A, Godfrey S, et al. The Accuracy of Computed Tomography Angiography Compared With Technetium-99m Labelled Red Blood Cell Scintigraphy for the Diagnosis and Localization of Acute Gastrointestinal Bleeding: A Systematic Review and Meta-Analysis. Curr Probl Diagn Radiol. 2023;52(6):546-559. PubMed
- Feuerstein JD, Ketwaroo G, Tewani SK, et al. Localizing Acute Lower Gastrointestinal Hemorrhage: CT Angiography Versus Tagged RBC Scintigraphy. AJR Am J Roentgenol. 2016;207(3):578-84. PubMed
- Tabibian JH, Wong Kee Song LM, Enders FB, et al. Technetium-labeled erythrocyte scintigraphy in acute gastrointestinal bleeding. Int J Colorectal Dis. 2013;28(8):1099-105. PubMed
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