先に結論:脳幹梗塞(延髄・橋・中脳)と支配血管
- 脳幹梗塞は、椎骨動脈・脳底動脈から出る細い枝が詰まって起こる脳梗塞で、めまい・ふらつき、ろれつが回らない、物が二重に見える、手足のまひやしびれ、飲み込みにくさなどが出ます
- 橋梗塞は、脳底動脈から出る傍正中動脈(正中寄り)・短回旋動脈・長回旋動脈のどれが詰まったかで場所が決まり、傍正中動脈の根元が詰まるタイプは分枝粥腫型梗塞(BAD)として悪化しやすいので注意します
- 延髄梗塞は、外側が侵される延髄外側梗塞(ワレンベルグ症候群:椎骨動脈・後下小脳動脈の領域)が代表で、めまい・嘔吐、飲み込みにくさ、声がれ、顔と反対側の体の温痛覚の低下などが出ます。正中寄りの延髄内側梗塞は前脊髄動脈の領域です
- 中脳梗塞は脳幹梗塞の中でも少なく(後方循環の脳梗塞の3%)、動眼神経まひ(物が二重に見える・まぶたが下がる)と反対側の手足のまひが典型です(Kumral 2002、中脳梗塞41例)
- 脳幹の小さな梗塞は、発症早期のMRI拡散強調像(DWI)で写らないことがあるため、症状が続くときは時間をおいて再検査します
※急なめまいとともに、ろれつが回らない・手足のまひ・物が二重に見えるなどがあれば、すぐに救急受診してください。
脳幹梗塞(延髄・橋・中脳)とは?特徴は?
- 脳幹梗塞は椎骨脳底動脈系から分岐する傍正中枝・回旋枝が原因血管となる。
- 後下小脳動脈、上小脳動脈には、Normal variation が多い。
- 虚血強度が弱め、DWIでも異常信号の出現までに時間を要することがある。発症24時間以内のDWIでは、椎骨脳底動脈系の脳梗塞の31%が偽陰性で、その多くが脳幹病変であったと報告されている。症状が続く場合は早期のDWI陰性で否定せず、再検査を考慮する。
脳幹梗塞の原因は?
- 塞栓症
- アテローム血栓症分枝粥腫型梗塞branch atheromatous disease:BAD
- 解離
橋梗塞150例の検討では、原因は脳底動脈の分枝の病変(BADを含む)が39%と最も多く、ついで小血管病(ラクナ)21%、椎骨脳底動脈の主幹動脈病変18%、心原性塞栓8%でした(Kumral 2002、橋梗塞150例)。延髄外側梗塞130例では、椎骨動脈の病変が67%、後下小脳動脈の病変が10%で、解離も15%を占めました(Kim 2003)。
梗塞部位と原因血管の関係は?
橋の場合
1)を参考に作図
正中から
- 傍正中動脈(PMA:paramedian artery)
- 短回旋動脈(SCfA:short circumferential artery)
- 長回旋動脈(LCfA:long circumferential artery)
の3つの動脈が支配する。
傍正中動脈は、BADの好発部位。
症例 60歳代女性 橋梗塞(分枝粥腫型梗塞の疑い)

橋右側正中寄りに梗塞像あり。
脳底動脈からの穿通枝である傍正中動脈領域。
MRAで壁在プラークあり、BADを疑う所見です。
症例 70歳代女性 橋梗塞(分枝粥腫型梗塞の疑い)

こちらも同様に、傍正中動脈領域のBADを疑う所見です。
橋梗塞は、MRIで梗塞がどこにあるかで症状のパターンが分かれます(Kumral 2002、橋梗塞150例)。
| 橋梗塞の場所 | 割合 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 前内側(傍正中動脈領域) | 58% | 片まひ+構音障害、運動失調 |
| 前外側 | 17% | 運動まひと感覚障害 |
| 被蓋(背側) | 10% | 感覚障害、眼球運動障害、めまい・ふらつき |
| 両側 | 11% | 一過性の意識障害、四肢まひ、偽性球まひ |
延髄の場合

1)を参考に作図
延髄上部は、正中から
- 前脊髄動脈(ASA:anterior spinal artery)
- 椎骨動脈(VA: vertebral artery)
- 後下小脳動脈(PICA:posterior inferior cerebellar artery)
- 後脊髄動脈(PSA:posterior spinal artery)
の4つの動脈が支配。
1)を参考に作図
延髄下部は、
- 前脊髄動脈(ASA:anterior spinal artery)
- 椎骨動脈(VA: vertebral artery)
- 後脊髄動脈(PSA:posterior spinal artery)
の3つが支配する。
症例 80歳代男性 延髄上部梗塞

延髄正中〜左側に梗塞あり。
部位から、前脊髄動脈領域の梗塞が疑われます。
中脳の場合
中脳は、脳底動脈の先端部や後大脳動脈の近位部から出る穿通枝(傍正中枝)と、後大脳動脈・上小脳動脈の回旋枝などで栄養され、正中寄りの前内側、前外側、外側、背側の領域に分けて考えます(Tatu 1996)。
- 中脳を含む梗塞は後方循環の脳梗塞1296例中41例(3%)で、中脳だけの梗塞は9例と少なく、視床・後頭葉・小脳など周りの梗塞を伴うことが多い(Kumral 2002、中脳梗塞41例)。
- 中脳の中部・前内側(脳底動脈からの穿通枝の領域)がもっとも侵されやすい(同)。
- 中脳だけの梗塞では、動眼神経まひと反対側の運動まひが中心となる(同)。動眼神経まひと反対側の片まひの組み合わせはWeber症候群と呼ばれる。
中脳梗塞・橋梗塞・延髄梗塞はいずれもCTでは骨のアーチファクトで見えにくく、MRIの拡散強調像で評価します。
参考文献:
1)脳MRI 1.正常解剖 P291
- Oppenheim C, Stanescu R, Dormont D, et al. False-negative diffusion-weighted MR findings in acute ischemic stroke. AJNR Am J Neuroradiol. 2000;21(8):1434-40. PubMed
- Kim JS. Pure lateral medullary infarction: clinical-radiological correlation of 130 acute, consecutive patients. Brain. 2003;126(Pt 8):1864-72. PubMed
- Tatu L, Moulin T, Bogousslavsky J, et al. Arterial territories of human brain: brainstem and cerebellum. Neurology. 1996;47(5):1125-35. PubMed
- Kumral E, Bayülkem G, Evyapan D. Clinical spectrum of pontine infarction. Clinical-MRI correlations. J Neurol. 2002;249(12):1659-70. PubMed
- Kumral E, Bayulkem G, Akyol A, et al. Mesencephalic and associated posterior circulation infarcts. Stroke. 2002;33(9):2224-31. PubMed
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