先に結論:リンパ脈管筋腫症(LAM)

  • LAMは妊娠可能年齢の女性に起こるまれな病気で、LAM細胞が肺やリンパ系で増え、肺に薄い壁の嚢胞が多発します。結節性硬化症に合併するものと単独(孤発性)のものがあります
  • CTでは両肺に均等に分布する、丸く薄い壁の多発嚢胞が典型で、繰り返す気胸・乳び胸水で見つかることがあります。腎血管筋脂肪腫・後腹膜のリンパ脈管筋腫も手がかりです
  • 診断には血清VEGF-Dが役立ち、治療はシロリムス(mTOR阻害薬)がガイドラインで推奨されています
  • 根本的に治す薬はまだありませんが、移植なしの10年生存率は約86%と、以前考えられていたより経過は長いことが分かってきました

リンパ脈管筋腫症(pulmonary lymphangioleiomyomatosis:LAM)

  • 生殖可能年齢の女性に発症するまれな疾患。進行性全身性疾患。
  • 肺に限らない全身疾患であることから、リンパ脈管筋腫症と呼ばれる。
  • 進行する呼吸障害を認める。
  • 臨床的には肺の進行性嚢胞性破壊と肺やリンパ節へのLAM細胞の集積がみられる。LAM細胞では結節性硬化症の原因遺伝子(TSC1またはTSC2)の変異により、mTOR経路が活性化している(Grzegorek 2013)。
  • LAM細胞は血液・尿・乳びなどからも見つかり、転移する能力をもつ細胞と考えられている(Grzegorek 2013)。
  • LAM細胞はリンパ系に進展して、全身に進展する。
  • なぜ肺嚢胞ができるか。LAM細胞が蛋白分解酵素(メタロプロテアーゼ)を多く作り、肺の組織を壊すことが関わると考えられている(Grzegorek 2013)。
  • LAM細胞がもともとどこから来るのかは、まだはっきりしていない。
  • 有病率は女性100万人あたり3.4〜7.8人と推定されているが(未診断例も多いと考えられている)、結節性硬化症(TSC)の女性では少なくとも約40%に合併する。
  • 結節性硬化症のない男性の症例も報告されている(Schiavina 2007)。
  • 胸部症状は呼吸苦、咳嗽、胸痛、血痰、気胸、胸水など。
  • 肺以外の症状としてはリンパ節腫大、巨大嚢胞性リンパ節腫瘤(リンパ血管筋腫)、腎臓に発生する血管筋脂肪腫などがみられる。
  • 孤発性と結節性硬化症に伴うものがある。
  • 孤発性(sporadic LAM):結節性硬化症を伴わないもの。
  • TSC-LAM:TSCの女性ではCTで約半数(47.5%)にみられ、21歳未満で27%、40歳超で81%と年齢とともに増える。
  • 治療:肺には肺移植。抗エストロゲンなどのホルモン療法は、ATS/JRSガイドライン(2016)では推奨されていない。
  • 予後:米国の登録研究(410例)では移植なしの10年生存率は約86%、症状出現からの移植なし生存期間中央値は約29年と、以前の報告より良好である。酸素療法が必要な例は経過が悪かった(Oprescu 2013)。
  • 新しい治療:シロリムス(mTOR阻害薬)。ATS/JRSガイドライン(2016)で治療薬として推奨されており、診断には血清VEGF-D測定が推奨されている。根拠となったMILES試験(中等度の肺機能障害のあるLAM 89例)では、1年間のFEV1の変化がプラセボ群で月−12 mL、シロリムス群で月+1 mLと肺機能が安定し、血清VEGF-Dも低下した。ただし中止後は肺機能低下が再開した。

リンパ脈管筋腫症(LAM)の画像所見

  • CTでは多発する薄い壁の嚢胞が肺全体にみられる。なおATS/JRSガイドライン(2017)では、LAMに特徴的な嚢胞がHRCTでみられても、臨床・画像・血清学的な裏付けとなる所見がなければHRCTだけで臨床診断しないこととされ、経気管支肺生検が診断の選択肢に挙げられています。また気胸は再発を待たず、初回から胸膜癒着術を考慮することが推奨されています。
  • 嚢胞壁は薄く、一部に壁を認めず肺気腫と鑑別できないことがある。
  • 嚢胞は2〜5mm程度のものが主体で、重症例では6〜12mmあるいはそれより大きな嚢胞がみられる。
  • 嚢胞は重症例で大きくなる傾向にあり、12mmを超える大きな嚢胞は重症例でみられる(Abbott 2005)。
  • 他、嚢胞破裂による気胸、肺出血によるすりガラス影、結節影、胸水、肺門・縦隔リンパ節腫大など。すりガラス影は出血や浮腫の結果として発生する。
  • 結節性硬化症では肺外病変の合併(腎臓や骨など)

結節性硬化症とLAM(TSC-LAM)

  • 結節性硬化症の女性101人の胸部CTでは、47.5%がLAMの基準を満たし、その割合は年齢とともに約8%/年ずつ上がりました(Cudzilo 2013)。
  • 症状のないLAMの84%は、気管分岐部の高さのCT1枚で嚢胞が見つかり、少ない被ばくでのスクリーニングが提案されています(Cudzilo 2013)。
  • LAMを持つ人の63%がのちに呼吸器症状を生じ、12.5%がLAMで亡くなっていました(Cudzilo 2013)。

LAMでよくある疑問(Q&A)

Q. LAMは治りますか?
A. 根本的に治す薬はまだありません。シロリムスは1年間の治療で肺機能の低下を抑えましたが、中止すると低下が再び始まりました(McCormack 2011)。進行した場合は肺移植が検討されます。

息切れや胸の痛み、気胸を繰り返すなど気になる症状があれば、呼吸器内科を受診してください。

症例 30歳代女性。

リンパ脈管筋腫症(LAM) リンパ脈管筋腫症(LAM)

両側の肺にはいずれも10mm以下の嚢胞が多発している。

各々の嚢胞は壁が薄く、周囲の肺にはすりガラス状の濃度上昇を認めている。

リンパ脈管筋腫症(LAM)が疑わしい。

参考文献

  1. McCormack FX, Gupta N, Finlay GR, et al. Official American Thoracic Society/Japanese Respiratory Society Clinical Practice Guidelines: Lymphangioleiomyomatosis Diagnosis and Management. Am J Respir Crit Care Med. 2016;194(6):748-61. PubMed
  2. Gupta N, Finlay GA, Kotloff RM, et al. Lymphangioleiomyomatosis Diagnosis and Management: High-Resolution Chest Computed Tomography, Transbronchial Lung Biopsy, and Pleural Disease Management. An Official American Thoracic Society/Japanese Respiratory Society Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2017;196(10):1337-1348. PubMed
  3. Abbott GF, Rosado-de-Christenson ML, Frazier AA, et al. From the archives of the AFIP: lymphangioleiomyomatosis: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2005;25(3):803-28. PubMed
  4. Cudzilo CJ, Szczesniak RD, Brody AS, et al. Lymphangioleiomyomatosis screening in women with tuberous sclerosis. Chest. 2013;144(2):578-585. PubMed
  5. McCormack FX, Inoue Y, Moss J, et al. Efficacy and safety of sirolimus in lymphangioleiomyomatosis. N Engl J Med. 2011;364(17):1595-606. PubMed
  6. Harknett EC, Chang WY, Byrnes S, et al. Use of variability in national and regional data to estimate the prevalence of lymphangioleiomyomatosis. QJM. 2011;104(11):971-9. PubMed
  7. Oprescu N, McCormack FX, Byrnes S, et al. Clinical predictors of mortality and cause of death in lymphangioleiomyomatosis: a population-based registry. Lung. 2013;191(1):35-42. PubMed
  8. Grzegorek I, Drozdz K, Podhorska-Okolow M, et al. LAM cells biology and lymphangioleiomyomatosis. Folia Histochem Cytobiol. 2013;51(1):1-10. PubMed
  9. Schiavina M, Di Scioscio V, Contini P, et al. Pulmonary lymphangioleiomyomatosis in a karyotypically normal man without tuberous sclerosis complex. Am J Respir Crit Care Med. 2007;176(1):96-8. PubMed

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