神経の二次変性の代表にワーラー変性があります。
この、ワーラー変性(waller変性)とはどのような変性なのでしょうか?
また画像診断のポイントはどのようなところでしょうか?
今回は、ワーラー変性(waller変性)についてまとめました。
先に結論:ワーラー(Waller)変性のMRI
- ワーラー変性は、脳梗塞・出血・腫瘍・手術などで神経細胞や軸索が傷つくと、その先(末梢側)の神経線維が二次的に変性する現象です。新しい病変ではないので、見間違えないことが大切です
- 代表は、大脳皮質や内包の病変 → 同じ側の大脳脚・橋・延髄の錐体路に沿った変化、橋底部の病変 → 両側の中小脳脚の変化です
- 見え方は時期で変わり、発症から数日〜数週は拡散強調像で高信号(新たな梗塞と誤らない)、数か月以降はT2/FLAIRで高信号と萎縮として見えます
- ワーラー変性は元の病変(梗塞など)の結果として起こる変化で、症状は主に元の病変によるものです。気になる症状があれば医療機関に相談してください
ワーラー変性(waller変性)について
- 神経線維が損傷を受け、軸索の連続性が失われた時に生じる。
- 断裂部よりも末梢部の軸索及び髄鞘が変性することをWaller変性(wallerian degeneration)と呼ぶ。
- つまり、皮質脊髄路(錐体路)に障害を与える病巣では、その遠位部に変性を生じる。
- 慢性期脳梗塞の変化として知られている他、腫瘍、術後変化など神経細胞や軸索が障害された場合に起こりうる。MRIで白質路に沿った異常信号を示した23例の検討では、原因は脳梗塞が17例と最多で、腫瘍・出血後・脱髄でも梗塞と区別できない同様の変化がみられた(Kuhn 1988)。
- 名前は、神経を切ったあとの末梢側の変性を記載した19世紀の英国の生理学者Augustus Wallerに由来します。

MRIで代表的に描出されるWaller変性は次の2つ(ほかに脳梁、歯状核-赤核-オリーブ路、脊髄後索、辺縁系回路、視覚路などにも生じうる)。
- 錐体路のWaller変性(大脳皮質や内包などの血管性病変に関連)。
- 橋小脳路のWaller変性(橋底部の病変に関連)。
※皮質脊髄路:中心前回からの神経線維が内包後脚、大脳脚、橋縦束から延髄錐体を経由し、大部分は交叉した後、脊髄内を下行し前角細胞に終止する。
※橋小脳路:橋核神経線維が、橋横走線維、中小脳脚を経由して小脳皮質に至る。慢性期橋梗塞の検討では、橋腹内側の梗塞で両側中小脳脚の中央部に対称性のT2強調像高信号が、橋腹外側の梗塞で同側の中小脳脚に高信号がみられた。新たな梗塞や他疾患と誤らないよう注意する。
Waller変性の画像診断のポイントは?
- 脳血管障害の病巣と神経連絡を有する遠隔部の二次変性がMRIにより捉えられることがある。T2強調像での高信号変化は、どの障害部位からの二次変性であるかにより見える時期が異なる。
- 錐体路のWaller変性では、発症から約4週間まではT2強調像で変化に乏しく、4週頃から一旦低信号の帯となり、10〜14週以降は持続する高信号として認められる。数年の経過で同側の脳幹が萎縮する(Kuhn 1989)。
- それより以前の急性期、亜急性期脳梗塞に対してDWIのみで明らかな高信号を呈することがある。これを新たな脳梗塞として診断しないように注意。急性期脳梗塞133例の検討では、大脳脚の錐体路に拡散制限を示す早期のワーラー変性は心原性塞栓症で程度が強く、入院時のNIHSSが高い(神経症状が重い)例と関連していた。
つまり
- 大脳皮質・内包病変→大脳脚・延髄など錐体路に異常信号。
- 橋底部病変→中小脳脚に異常信号。
をそれぞれ生じるということです。
ワーラー変性の時期と画像所見(一覧)
| 時期(発症から) | 拡散強調像(DWI) | T2強調像・FLAIR |
|---|---|---|
| 数日〜数週 | 錐体路に沿って高信号のことがある | 変化に乏しい |
| 約4週〜 | 高信号は目立たなくなっていく | 一時的に低信号の帯 |
| 10〜14週以降 | ― | 持続する高信号 |
| 数年 | ― | 高信号+同側脳幹(大脳脚など)の萎縮 |
DWIの変化は数日単位の早い時期からとらえられることがあり(Chen 2017)、T2強調像の変化は連続MRIの検討(Kuhn 1989)にもとづきます。
動画で学ぶwaller変性(錐体路のWaller変性)
▶キー画像

左大脳脚に萎縮及び異常な高信号を認めています。
ワーラー変性を疑う所見です。

そのやや尾側の橋の錐体路部分にも異常な高信号を認めています。
これもワーラー変性です。

この症例では、梗塞部位の皮質に沿ってT1強調像で高信号を認めています。
慢性期脳梗塞の変化であるlaminar necrosisを疑う所見です。
MRIで見える代表的な病巣遠隔部の二次変性
病巣遠隔部の2次変性は、Waller変性(順行性変性)だけではありません。
Waller変性を含め以下のものが重要です。
- 錐体路のワーラー変性←大脳皮質、内包の障害
- 橋小脳路のワーラー変性←橋底部の障害
- 視床の変性←大脳皮質の障害(中大脳動脈領域の塞栓性梗塞30例のうち14例で、1〜12か月後に同側視床のT2強調像高信号:Ogawa 1997)
- 交叉性小脳萎縮←広範なテント上(大脳)の障害(Uchino 2006)
- 下オリーブ核仮性肥大←歯状核や橋被蓋の病変といったGuillain-Mollaret三角(歯状核-赤核-オリーブ路)の関連障害(Uchino 2006, Chen 2017)
- 黒質の変性←同側の線条体梗塞(Uchino 2006)
- 視放線の変性←視覚路の障害(Chen 2017)
- 後頭葉(一次視覚野)の萎縮←視神経の障害(視神経炎後の経シナプス変性:Hsiao 2025)
- 乳頭体、脳弓、乳頭体視床路の変性、萎縮←海馬の障害(辺縁系回路:Chen 2017。海馬硬化症69例の26.1%で同側乳頭体の萎縮:Cho 2022)
参考)東京レントゲンカンファレンス:橋出血の既往→オリーブ核仮性肥大
ワーラー変性でよくある疑問(Q&A)
Q. ワーラー変性をわかりやすく言うと?
A. 神経の「根元(細胞体や軸索の途中)」が壊れると、そこから先の神経線維が栄養を断たれて後から壊れていく現象です。脳では、梗塞や出血の場所から離れた錐体路や中小脳脚に、遅れて信号変化が出ます。
Q. ワーラー変性で新しい症状は出ますか?
A. ワーラー変性は元の病変の結果で、症状の多くは元の病変によるものです。ただし、急性期脳梗塞133例の検討では、大脳脚の早期ワーラー変性が強い例ほど入院時の神経症状が重い傾向がありました(Zheng 2021)。
Q. laminar necrosis(層状壊死)との違いは?
A. laminar necrosisは梗塞を起こした皮質そのものの変化で、皮質に沿ってT1強調像で高信号になります。ワーラー変性は病変から離れた神経線維(白質路)の変化です。両者が同じ症例で一緒に見えることもあります。
参考文献
- Kuhn MJ, Mikulis DJ, Ayoub DM, et al. Wallerian degeneration after cerebral infarction: evaluation with sequential MR imaging. Radiology. 1989;172(1):179-82. PubMed
- Kuhn MJ, Johnson KA, Davis KR. Wallerian degeneration: evaluation with MR imaging. Radiology. 1988;168(1):199-202. PubMed
- Zheng X, Zhang Y, Man Y, et al. Clinical Features, Risk Factors, and Early Prognosis for Wallerian Degeneration in the Descending Pyramidal Tract after Acute Cerebral Infarction. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2021;30(2):105480. PubMed
- Shen Y, Jian W, Li J, et al. Bilateral wallerian degeneration of the middle cerebellar peduncles secondary to pontine infarction: A case series. J Neurol Sci. 2018;388:182-185. PubMed
- Chen YJ, Nabavizadeh SA, Vossough A, et al. Wallerian Degeneration Beyond the Corticospinal Tracts: Conventional and Advanced MRI Findings. J Neuroimaging. 2017;27(3):272-280. PubMed
- Uchino A, Sawada A, Takase Y, et al. Wallerian degeneration of the middle cerebellar peduncle after pontine infarction: MR imaging. Radiat Med. 2004;22(1):37-41. PubMed
- Ogawa T, Yoshida Y, Okudera T, et al. Secondary thalamic degeneration after cerebral infarction in the middle cerebral artery distribution: evaluation with MR imaging. Radiology. 1997;204(1):255-62. PubMed
- Uchino A, Takase Y, Nomiyama K, et al. Brainstem and cerebellar changes after cerebrovascular accidents: magnetic resonance imaging. Eur Radiol. 2006;16(3):592-7. PubMed
- Hsiao MN, Krupinsk JS, Froio NL, et al. Primary visual cortex impairment due to trans-synaptic degeneration after optic neuritis: A systematic review of neuroimaging studies. J Clin Neurosci. 2025;140:111492. PubMed
- Cho KH, Lee HJ, Lee DA, et al. Mammillary Body Atrophy in Temporal Lobe Epilepsy With Hippocampal Sclerosis. J Clin Neurol. 2022;18(6):635-641. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →


とっても覚えきれません。頭痛がします。