腸アメーバ症
・赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)による消化器症状を主体とする感染症。
・発展途上国では多くの感染者が存在するが、先進国では男性同性愛者の性行為による感染例がみられる。
・男女比は10-20:1
・大腸に寄生し、糞便中に嚢子(cyst)を排池する。嚢子の経口摂取や性行為により感染する。好発部位は盲腸で、潰瘍を形成し、右下腹部痛や粘血便を伴う下痢などを生じる。
・性行為による感染では、直腸・肛門に好発する。
・診断は、糞便からのアメーバの検出か血清学的方法で行う。
・腹痛や消化器症状を示すことから、ほかの感染性腸炎や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、大腸癌との鑑別を要する。
・患者背景から本疾患を疑うことが重要である。
・アメーバの大腸壁への浸潤により腸管全層壊死を来したものを劇症型と分類する。アメーバ性大腸炎の3%に起こる。
アメーバ性腸炎の画像所見
・CT所見は、盲腸や直腸壁の肥厚がみられ、潰瘍や膿瘍を形成する。ただしこれも非特異的であり、盲腸では憩室炎や虫垂炎、直腸では炎症性腸疾患やほかの感染性腸炎との鑑別は難しい場合が多い。
・壁肥厚は盲腸>上行結腸>直腸>S状結腸の順に好発しやすい。肝膿瘍の有無も鑑別に役立つ。
・急性の経過で著明な壁肥厚や壁内ガスを認めた場合は、劇症型を示唆する。
症例 30歳代男性
盲腸に全周性の粘膜下層の肥厚あり。
回結腸静脈沿いに小リンパ節散見あり。