先に結論:頭蓋骨転移
- 頭蓋骨転移の原発は乳癌・肺癌・前立腺癌・腎癌・甲状腺癌・悪性リンパ腫・骨髄腫などが多く、小児では神経芽腫が代表です
- CTでは骨を壊す溶骨性病変が多く、前立腺癌・乳癌の一部は骨硬化性になります。腎癌・甲状腺癌・肝細胞癌は膨らむように大きくなります
- 頭蓋骨転移は頭の骨(頭蓋冠・頭蓋底)への転移で、脳そのものへの転移(脳転移)とは別です。多くは無症状で、頭部MRIで偶然見つかることが多いです
- 頭蓋底(特に斜台)の転移は脳神経麻痺で見つかることがあり、脊索腫・軟骨肉腫・髄膜腫などとの区別にMRIの造影・DWIが役立ちます
頭蓋骨転移性腫瘍
- 原発巣としては乳癌が最も多く、頭部MRIで見つかった頭蓋骨転移175例の検討では乳癌55%、肺癌14%、前立腺癌6%、悪性リンパ腫5%であった4)。そのほか腎癌、肝細胞癌など。
- 小児では、神経芽細胞腫や肉腫からの転移が多い。
- 頭蓋底部へ転移すると下位脳神経症状を生じやすい。頭蓋底転移は乳癌・前立腺癌に多く、同側の脳神経障害が進行性に加わるのが特徴で、画像所見が正常でも否定はできないとされます。
- 斜台へ転移すると外転神経麻痺を来しやすく、脊索腫や軟骨肉腫との鑑別が問題となる。
- 頭蓋骨や眼窩骨への転移は髄膜腫との鑑別が困難な場合がある。
- 膨隆性に大きな腫瘤を形成するものは、腎癌、肝細胞癌。
- 鑑別としては、脊索腫、軟骨肉腫、形質細胞腫/多発性骨髄腫、骨血管腫、類上皮腫/類皮腫、線維性骨異形成、頭蓋骨浸潤を来した髄膜腫、頭蓋骨内髄膜腫、成人発症のLangerhans cell histiocytosis(LCH)、副甲状腺機能亢進症に伴うbrown tumor、骨髄炎、Paget病、その他の原発性骨腫瘍など。
頭蓋骨転移と脳転移の違い
- 頭蓋骨転移は骨(頭蓋冠・頭蓋底)にできる転移で、骨の破壊や骨の外(頭皮側)・内(硬膜側)への広がりが問題になります。
- 脳転移は脳の実質にできる転移で、造影MRIで脳の中に造影される結節が見られ、周りにむくみ(浮腫)を伴います。
- 頭蓋骨転移が内側に進むと硬膜に広がり、硬膜の肥厚・造影や、すぐ下の脳の圧迫、静脈洞の圧迫・閉塞を起こすことがあります。脳転移と見誤らないよう、病変の中心が骨か脳かを確認します。
頭蓋骨転移のMRIでの分類と症状
頭部MRIで見つかった頭蓋骨転移175例の検討では、次の3つの点で分類しています(Mitsuya 2011)4)。
- 場所:頭蓋冠(頭のてっぺん側の丸い骨)か、頭蓋底か
- 広がり:1つの骨に限局してはっきりした境界をもつ(限局型)か、縫合をこえて隣の骨に広がる(びまん型)か
- 浸潤:骨の中にとどまる(骨内型)か、頭皮側や硬膜側へ広がる(浸潤型)か
この検討では頭蓋冠の限局型・骨内型が27%と最も多く、患者の多くは無症状でしたが、局所の痛みや脳神経麻痺で生活の質が下がる例もありました。原発巣の診断から頭蓋骨転移の診断までの平均期間は、乳癌71か月、前立腺癌26か月、肺癌9か月、悪性リンパ腫4か月でした4)。
頭蓋骨転移の画像所見
▶CT所見
- 軟部濃度を伴った、境界不明瞭な、溶骨性病変として描出されることが多い。
- 前立腺癌や骨肉腫の場合は溶骨性転移より骨増殖性転移が優位である。
- 肺癌では溶骨性転移と骨増殖性転移が混在する。
▶MRI所見
- T1強調像で低信号(骨髄脂肪信号の欠如)、T2強調像、FLAIRでさまざまな信号。
- 造影T1強調像で増強効果を認める。
- MRIでは脂肪抑制併用の造影T1強調像を使うと、骨髄の脂肪と造影される病変の区別がつきやすくなる。
- DWIを用いると頭蓋骨転移の検出感度が向上し有用とされる。骨シンチを基準とした75例の検討では、頭蓋骨転移の検出感度はDWIで68.4〜71.1%、通常のMRIで42.1〜55.3%であり、特に乳癌ではDWIの感度が86.7〜93.3%と高かった。一方、前立腺癌の頭蓋骨転移はDWIでの感度が14.3%と低く、DWIだけで否定しないよう注意が必要である。
症例 60歳代女性 未治療の肺癌

引用:Radiopaedia(Osteolytic skull metastasis of lung cancer)
頭頂部付近の右側の頭蓋骨に、骨が打ち抜かれたように欠損した類円形の溶骨性病変が見られます。この症例では同様の溶骨性病変が頭蓋骨に多発していました。
頭蓋骨の骨肉腫など原発性骨腫瘍との区別
- 頭蓋骨の骨肉腫はまれで、Paget病や過去の放射線治療の後に生じることがあります。骨を作る腫瘍のため、CTで腫瘍の中に骨の形成(石灰化)が見られるのが手がかりです。
- 転移、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫は似た溶骨性病変を作るため、他の部位の病変の有無、癌の既往を合わせて判断し、必要に応じて生検で確認します。
単発の頭蓋骨病変:転移と骨内静脈奇形を見分けるダイナミック造影MRI
頭蓋骨に1つだけ骨病変があると、転移と、骨血管腫とも呼ばれてきた骨内の静脈奇形(osseous venous malformation)の区別に迷うことがあります。乳癌・非小細胞肺癌の頭蓋骨転移31例と骨内静脈奇形16例を、拡散強調像とダイナミック造影MRI(DCE-MRI)で比べた検討では、転移のほうが血漿容積(Vp)、ピーク増強、最大増強までの時間(TME)がいずれも有意に高く、VpとTMEを組み合わせると両者をAUC 0.962で区別できました(Kurokawa 2022)。
同じ検討では、乳癌と非小細胞肺癌の転移の間でも、ADC値とピーク増強に差がありました(Kurokawa 2022)。
- 単発の頭蓋骨病変で、CTや通常のMRIで転移と静脈奇形の区別がつかないときは、DCE-MRIの追加が判断の助けになります。
- 症例数の限られた検討なので、癌の既往や他の部位の病変とあわせて判断します。
頭蓋骨転移でよくある疑問(Q&A)
Q. 頭蓋骨転移と脳転移は同じですか?
A. 違います。頭蓋骨転移は頭の骨への転移、脳転移は脳そのものへの転移です。ただし頭蓋骨転移が硬膜や脳の方へ広がることもあり、MRIで両方の関係を確認します。
Q. どんな症状が出ますか?
A. 多くは無症状ですが、頭のしこりや痛み、頭蓋底の転移では物が二重に見える・顔のしびれ・飲み込みにくさなどの脳神経の症状が出ることがあります1)4)。癌の治療中にこうした症状が出たら、主治医に相談してください。
Q. 頭蓋骨転移があると余命はどのくらいですか?
A. 原発の癌の種類や、ほかの臓器への転移の有無、全身の状態によって大きく異なり、頭蓋骨転移だけでは決まりません。治療の見通しは主治医に確認してください。
関連記事:頭蓋骨溶骨性腫瘍(Osteolytic lesion of skull)の鑑別診断(頭蓋骨が溶けていたとき)
あわせて読みたい:斜台から発生する(原発)腫瘍の鑑別診断は?
参考文献
- Laigle-Donadey F, Taillibert S, Martin-Duverneuil N, et al. Skull-base metastases. J Neurooncol. 2005;75(1):63-9. PubMed
- Khodarahmi I, Alizai H, Chalian M, et al. Imaging Spectrum of Calvarial Abnormalities. Radiographics. 2021;41(4):1144-1163. PubMed
- Nemeth AJ, Henson JW, Mullins ME, et al. Improved detection of skull metastasis with diffusion-weighted MR imaging. AJNR Am J Neuroradiol. 2007;28(6):1088-92. PubMed
- Mitsuya K, Nakasu Y, Horiguchi S, et al. Metastatic skull tumors: MRI features and a new conventional classification. J Neurooncol. 2011;104(1):239-45. PubMed
- Kurokawa R, Kurokawa M, Holmes A, et al. Skull metastases and osseous venous malformations: The role of diffusion-weighted and dynamic contrast-enhanced MRI. J Neuroimaging. 2022;32(6):1170-1176. PubMed
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