下肢動脈の解剖 走行と略語の一覧

下肢動脈は、腹部大動脈から総腸骨動脈・外腸骨動脈・総大腿動脈・浅大腿動脈・膝窩動脈と名前を変え、膝の下で3本(下腿三分枝)に分かれて足へ届きます。下肢CTAで「どの区間の病変か」を正しく伝えられるように、研修医のハジメくんと一緒に、名前が変わる境目・大腿動脈の走行・略語を順に整理します。

先に結論

  1. 下肢動脈は総腸骨動脈(CIA)→外腸骨動脈(EIA)→総大腿動脈(CFA)→浅大腿動脈(SFA)→膝窩動脈→下腿三分枝(前脛骨・後脛骨・腓骨動脈)→足と、境目ごとに名前が変わる1本の流れ。
  2. 境目は鼠径靱帯(EIA→CFA)・内転筋裂孔(SFA→膝窩動脈)・前脛骨動脈の分岐(膝窩動脈→TPT)。大腿動脈は鼠径部で大腿静脈の外側・大腿神経の内側を通る。
  3. 下肢CTAでは区間の名前(略語)・長さ・狭窄の程度・側副血行路・run-offをそろえて書く。

目的から読む: 略語一覧 / 大腿動脈の走行 / 名前が変わる境目 / 下腿三分枝 / 下肢CTAの読影ポイント / 遺残坐骨動脈 / Fontaine分類

下肢動脈の解剖とは? 大動脈から足までの流れ

下肢動脈は、腹部大動脈から足先までつながる1本の流れで、境目を越えるたびに名前が変わります。まず全体の順番を覚えると、どの区間の話かが迷わなくなります。

ハジメハジメ(研修医)
先生、下肢CTAのレポートで「SFAに高度狭窄」と書いてあったんですが、大腿動脈ってどこからどこまでなんですか?足のつけ根から膝まで全部ですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
いい質問です。ハジメくん、川の名前を思い出してください。同じ水の流れでも、合流点や橋をこえると呼び名が変わりますね。下肢の動脈も同じで、どこで名前が変わるかを押さえるのがこつです。
図1 下肢動脈の名前の流れ 腹部大動脈から足背動脈・足底動脈までを1本の流れ図にし、名前が変わる境目(鼠径靱帯・内転筋裂孔・前脛骨動脈の分岐)と略語を添えた図です。
図1 下肢動脈の名前の流れ 腹部大動脈から足背動脈・足底動脈までを1本の流れ図にし、名前が変わる境目(鼠径靱帯・内転筋裂孔・前脛骨動脈の分岐)と略語を添えた図です。

下肢CTAの動脈の解剖

下肢CTA(VR像)では、腹部大動脈→総腸骨動脈→外腸骨動脈→大腿動脈→膝窩動脈→(3本に分かれる)→前脛骨動脈・腓骨動脈・後脛骨動脈→足、の順に名前が変わっていきます。

下肢閉塞性動脈硬化症(PAD: peripheral arterial disease)や急性下肢虚血では、下肢CTAが治療方針を決める大事な検査です。TASC IIは、病変の場所と狭窄・閉塞の長さで病変を分類します(Norgren 2007)。そのため、読影では病変がどの区間にあるかを正しい名前で書く必要があります。

下肢動脈の名前と略語一覧(EIA・CFA・SFA・ATA・TPT)

中枢側(上)から末梢側(下)の順に並べると次のとおりです。CFAは総大腿動脈、SFAは浅大腿動脈、ATAは前脛骨動脈、TPTは脛骨腓骨動脈幹の略です。

ハジメハジメ(研修医)
EIAとIIAって、どちらも腸骨動脈ですよね。足に行くのはIIAのほうですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
逆です。足へ向かう本幹は外腸骨動脈(EIA)です。内腸骨動脈(IIA)は骨盤の中の臓器や殿部の筋肉へ向かいます。「外=足へ・内=骨盤の中へ」と覚えてください。
日本語 英語 略語
腹部大動脈 abdominal aorta Ao
総腸骨動脈 common iliac artery CIA
外腸骨動脈 external iliac artery EIA
内腸骨動脈 internal iliac artery IIA
総大腿動脈 common femoral artery CFA
浅大腿動脈 superficial femoral artery SFA
大腿深動脈 deep femoral artery / profunda femoris artery DFA(PFA)
膝窩動脈 popliteal artery Pop.A
前脛骨動脈 anterior tibial artery ATA
脛骨腓骨動脈幹 tibioperoneal trunk TPT
後脛骨動脈 posterior tibial artery PTA
腓骨動脈 peroneal artery / fibular artery PeA
足背動脈 dorsalis pedis artery DPA

大腿動脈はどこを走る? 走行と位置の目印

「大腿動脈」は、ふつう総大腿動脈(CFA)と浅大腿動脈(SFA)をまとめた呼び名です。鼠径部では大腿静脈の外側・大腿神経の内側を通り、太ももの前内側を斜めに下って、膝の上で裏側へ回ります。

ハジメハジメ(研修医)
鼠径部のCTで、動脈と静脈が並んでいてどっちがどっちか迷いました。静脈のほうが外側でしたっけ?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
外側から神経・動脈・静脈の順です。静脈は動脈の内側にあります。造影の早い相なら動脈だけが白く、太くて楕円に近いほうが静脈、と手がかりも重ねて見てください。
図2 鼠径部の横断で見る大腿動脈 足のつけ根の高さの横断の模式図です。外側から大腿神経・総大腿動脈・大腿静脈の順に並び、静脈は動脈の内側にあります。画面の左は患者さんの右です。
図2 鼠径部の横断で見る大腿動脈 足のつけ根の高さの横断の模式図です。外側から大腿神経・総大腿動脈・大腿静脈の順に並び、静脈は動脈の内側にあります。画面の左は患者さんの右です。
場所 走行と目印
鼠径部(足のつけ根) 外腸骨動脈が鼠径靱帯の下をくぐって総大腿動脈になる。外側から大腿神経・大腿動脈・大腿静脈の順に並び、皮膚の上から拍動を触れる場所
大腿の上部 大腿三角(鼠径靱帯・縫工筋・長内転筋で囲まれる三角形)の中を下り、総大腿動脈が浅大腿動脈と大腿深動脈に分かれる。大腿深動脈は総大腿動脈の後ろ外側から出て、大腿の深部へ向かう
大腿の中部〜下部 浅大腿動脈は太ももの前内側を、縫工筋の下に隠れながら下り、内転筋管(ハンター管)に入る
膝の上 内転筋裂孔を抜けて太ももの裏側へ回り、膝窩動脈になる
図3 大腿の中部の横断と内転筋管 太ももの中ほどの横断の模式図です。浅大腿動脈と大腿静脈は縫工筋の下の内転筋管を通り、大腿深動脈は大腿骨の内側後ろの深部を下ります。
図3 大腿の中部の横断と内転筋管 太ももの中ほどの横断の模式図です。浅大腿動脈と大腿静脈は縫工筋の下の内転筋管を通り、大腿深動脈は大腿骨の内側後ろの深部を下ります。

名前が変わる境目は? CTでの目印

境目は鼠径靱帯・内転筋裂孔・前脛骨動脈の分岐の3か所が要です。CTでは鼠径靱帯が見えにくいので、外腸骨動脈から出る下腹壁動脈を目安にします。

ハジメハジメ(研修医)
EIAとCFAの境目は鼠径靱帯ですよね。CTで靱帯を探せばいいんですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこが落とし穴です。鼠径靱帯は薄い帯なので、CTではほとんど見えません。かわりに、外腸骨動脈から出る下腹壁動脈が弯曲していちばん下になる点を探します。そこが靱帯の高さに近いとされています。
血管 始まり 終わり(次の血管へ)
総腸骨動脈(CIA) 大動脈分岐部 内腸骨動脈と外腸骨動脈に分かれる所
外腸骨動脈(EIA) 総腸骨動脈の分岐部 鼠径靱帯の下(ここから総大腿動脈)
総大腿動脈(CFA) 鼠径靱帯の下 浅大腿動脈と大腿深動脈に分かれる所
浅大腿動脈(SFA) 総大腿動脈の分岐部 内転筋裂孔(ここから膝窩動脈)
膝窩動脈(Pop.A) 内転筋裂孔 前脛骨動脈を出す所
脛骨腓骨動脈幹(TPT) 前脛骨動脈の分岐部 後脛骨動脈と腓骨動脈に分かれる所
前脛骨動脈(ATA) 膝窩動脈 足関節の前(ここから足背動脈)

CTでは鼠径靱帯そのものは見えにくいため、外腸骨動脈から下腹壁動脈・深腸骨回旋動脈が出るあたりを、外腸骨動脈と総大腿動脈の境目の目安にします。114例のCTAを調べた研究では、下腹壁動脈が弯曲して最も下になる点(最下点)が鼠径靱帯の高さに最もよく一致し、大腿骨頭の上から3分の1の高さもこれに近い位置でした。総大腿動脈の中点は、大腿骨頭の下4分の1付近にありました(Gopalakrishnan 2019)。カテーテル検査で総大腿動脈を穿刺するときの目安にもなる関係です。

正面から見た右下肢の動脈の解剖図(模式図)。骨格の上に、腹部大動脈から総腸骨動脈、内腸骨動脈と外腸骨動脈、鼠径靱帯の下で総大腿動脈、大腿深動脈と浅大腿動脈、内転筋裂孔から膝窩動脈、膝の下で前脛骨動脈と脛骨腓骨動脈幹、後脛骨動脈と腓骨動脈、足背動脈へ続く走行を略語つきで示す

右下肢の動脈の走行(正面から見た模式図):鼠径靱帯でEIAがCFAに、内転筋裂孔でSFAが膝窩動脈に名前を変え、膝の下で前脛骨動脈(ATA)と脛骨腓骨動脈幹(TPT)に分かれ、TPTから後脛骨動脈(PTA)と腓骨動脈(PeA)が出ます。

図4 外腸骨動脈と総大腿動脈の境目 正面から見た骨盤と大腿骨頭の模式図です。鼠径靱帯の高さは下腹壁動脈の最下点と大腿骨頭の上3分の1に近く、総大腿動脈の中点は骨頭の下4分の1付近です。
図4 外腸骨動脈と総大腿動脈の境目 正面から見た骨盤と大腿骨頭の模式図です。鼠径靱帯の高さは下腹壁動脈の最下点と大腿骨頭の上3分の1に近く、総大腿動脈の中点は骨頭の下4分の1付近です。

骨盤の動脈: 総腸骨動脈・内腸骨動脈・外腸骨動脈

腹部大動脈は第4腰椎の高さで左右の総腸骨動脈に分かれ、総腸骨動脈は骨盤の中へ向かう内腸骨動脈と、足へ向かう外腸骨動脈に分かれます。

  • 腹部大動脈:ふつう第4腰椎(L4)の高さ、臍のやや下で左右の総腸骨動脈(CIA)に分かれます。
  • 総腸骨動脈(CIA):大動脈分岐部から仙腸関節の前あたりまで下ります。
  • 内腸骨動脈(IIA):骨盤の中へ向かい、骨盤内臓器や殿部の筋肉(上殿動脈・下殿動脈など)を栄養します。外腸骨動脈が閉塞したときは、内腸骨動脈からの側副血行路が下肢への血流の通り道になることがあります。
  • 外腸骨動脈(EIA):総腸骨動脈から続いて骨盤の縁に沿って下り、下肢へ向かう本幹になります。

大腿の動脈: 総大腿動脈・浅大腿動脈・大腿深動脈

総大腿動脈は鼠径部の短い区間で、すぐに浅大腿動脈と大腿深動脈に分かれます。足先へ向かう本幹は浅大腿動脈、大腿の筋肉を養うのが大腿深動脈です。

ハジメハジメ(研修医)
浅大腿動脈が長く閉塞していたら、膝から下にはもう血が届かないですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そう思いがちですが、閉塞の先の膝窩動脈が造影されていることはよくあります。迂回路を作っているのは何だと思いますか?
ハジメハジメ(研修医)
…すぐ隣の大腿深動脈ですか。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そのとおりです。大腿深動脈の枝が膝のまわりの動脈とつながって、閉塞した区間を迂回します。だから大腿深動脈が開いているかどうかは、レポートに書いてほしい所見です。
図5 浅大腿動脈の閉塞と大腿深動脈の側副路 正面から見た大腿の模式図です。浅大腿動脈が途中で閉塞しても、大腿深動脈の枝が膝のまわりの動脈とつながり、閉塞の先の膝窩動脈へ血を届けます。膝窩動脈は骨の後ろ(膝の裏)を通ります。
図5 浅大腿動脈の閉塞と大腿深動脈の側副路 正面から見た大腿の模式図です。浅大腿動脈が途中で閉塞しても、大腿深動脈の枝が膝のまわりの動脈とつながり、閉塞の先の膝窩動脈へ血を届けます。膝窩動脈は骨の後ろ(膝の裏)を通ります。

外腸骨動脈が鼠径靱帯の下を通った所から、名前が総大腿動脈(CFA)に変わります。大腿の動脈は、カテーテル治療(EVT)の穿刺部位としても大切です。

  • 総大腿動脈(CFA):鼠径部を走る短い血管で、すぐに浅・深の2本に分かれます。
  • 大腿深動脈(DFA: deep femoral artery / PFA: profunda femoris artery):大腿の深部へ向かい、大腿の筋肉を栄養します。浅大腿動脈が閉塞したときの大事な側副血行路になるので、下肢CTAでは開いているかを確かめます。
  • 浅大腿動脈(SFA):下肢へ向かう本幹です。大腿の前内側を下り、大腿の下部で内転筋管(ハンター管)という筋膜のトンネルを通ります。PADの病変は浅大腿動脈に多く、とくに内転筋管の部分では血管の壁にかかるずり応力が低いことが、病変が多い理由の一つと考えられています(Poredoš 2021)。

大腿動脈のバイパス(F-Fバイパス・FPバイパス)を受けた後のCTは、F-Fバイパス(大腿-大腿動脈バイパス)とはで術後の画像と合わせて見られます。

膝窩動脈と下腿三分枝(前脛骨・後脛骨・腓骨動脈)

膝窩動脈は膝の下でまず前脛骨動脈(ATA)を前へ出し、残りの脛骨腓骨動脈幹(TPT)が後脛骨動脈(PTA)と腓骨動脈(PeA)に分かれます。この3本を下腿三分枝と呼びます。

ハジメハジメ(研修医)
三分枝っていうから、膝窩動脈が1か所で3本に同時に分かれるんだと思っていました。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
名前にだまされやすい所です。分かれるのは2回です。1回目に前脛骨動脈が前へ、2回目にTPTが後脛骨動脈と腓骨動脈に分かれます。TPTの区間は短いので、どちら側の病変かを分けて書きます。
図6 膝の下で2回分かれる動脈 後ろから見た膝と下腿の模式図です。膝窩動脈はまず前脛骨動脈を前へ出し、短い脛骨腓骨動脈幹が後脛骨動脈と腓骨動脈に分かれます。
図6 膝の下で2回分かれる動脈 後ろから見た膝と下腿の模式図です。膝窩動脈はまず前脛骨動脈を前へ出し、短い脛骨腓骨動脈幹が後脛骨動脈と腓骨動脈に分かれます。

浅大腿動脈が内転筋裂孔(adductor hiatus)を抜けて膝の裏側に回ると、膝窩動脈(Pop.A: popliteal artery)になります。

  • 膝窩動脈(Pop.A):膝関節の後ろを下ります。膝の曲げ伸ばしで力がかかりやすい場所です。
  • 前脛骨動脈(ATA):膝窩動脈から最初に前へ分かれ、骨間膜を貫いて下腿の前面(前脛骨筋の深部)を下ります。
  • 脛骨腓骨動脈幹(TPT: tibioperoneal trunk):前脛骨動脈を出したあとの短い本幹で、すぐに次の2本に分かれます。
  • 後脛骨動脈(PTA):下腿の後面の内側を下り、内果(内くるぶし)の後ろを通ります。
  • 腓骨動脈(PeA: peroneal artery / fibular artery):下腿の後面の中央〜外側寄りを、腓骨の近くに沿って下ります。

ATA・PTA・PeAの3本をまとめて下腿三分枝と呼びます。包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)では、これら下腿の動脈がどこまで開いているかが、バイパス術やEVTを考える材料になります(Conte 2019)。

若い人の運動時のふくらはぎの痛みで、膝窩動脈が筋肉に圧迫される病態は、膝窩動脈捕捉症候群の画像所見のポイントで画像と合わせて見られます。

図7 下腿の横断で見る3本の動脈 ふくらはぎの中ほどの横断の模式図です。前脛骨動脈は骨間膜の前、後脛骨動脈は後ろ内側、腓骨動脈は腓骨のすぐ近くを走ります。画面の左は患者さんの右です。
図7 下腿の横断で見る3本の動脈 ふくらはぎの中ほどの横断の模式図です。前脛骨動脈は骨間膜の前、後脛骨動脈は後ろ内側、腓骨動脈は腓骨のすぐ近くを走ります。画面の左は患者さんの右です。

前脛骨動脈は足関節の前を越えて足背動脈に、後脛骨動脈は内果の後ろを通って内側・外側足底動脈になります。

  • 足背動脈(DPA):前脛骨動脈が足関節の前面を越えて名前を変えたものです。足の甲を走り、第1・第2趾の間などへ向かいます。拍動を触れやすい血管です。
  • 足底動脈(plantar arteries):後脛骨動脈が内果の後ろを通ったあと、内側足底動脈と外側足底動脈に分かれ、足底動脈弓(plantar arch)をつくります。

足の潰瘍の治療では、どの動脈が足のどの領域を栄養しているか(angiosome)も、血行再建を考える手がかりの一つとして使われます。

下肢CTAの読影ポイント

下肢CTAでは、どの区間に・どのくらいの長さで・どの程度の狭窄かを書き、石灰化・側副血行路・run-off(末梢の流出路)を添えます。

ハジメハジメ(研修医)
石灰化が強い所は真っ白なので、内腔が細いのか太いのか、ぼくには分かりませんでした。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこは無理に言い切らないのが正解です。高度の石灰化は実際より太く見えて(ブルーミング)、内腔を見えにくくします。「石灰化が強く内腔の評価は難しい」と書くのも、大事な所見です。
マルオマルオ(技師)
撮る側からひとことです!下肢CTAは、造影剤が足先に届くのを追いかけて撮ります。テーブルが速すぎると造影剤を追い越して、下腿の動脈が写らないことがあるんです。足先まで見たいときは、依頼に「足部まで」と書いてもらえると助かります!
ごろ〜ごろ〜(指導医)
下腿の動脈が写っていないときは、閉塞と決める前に、撮るタイミングのずれも考えてくださいね(Fleischmann 2006)。
図8 下肢CTAレポートで書く6つの項目 区間の名前、病変の長さ(cm)、狭窄の程度、石灰化、側副血行路、run-off(下腿・足の流出路)を、上流から下流へ順に確かめる流れ図です。
図8 下肢CTAレポートで書く6つの項目 区間の名前、病変の長さ(cm)、狭窄の程度、石灰化、側副血行路、run-off(下腿・足の流出路)を、上流から下流へ順に確かめる流れ図です。
  • 書く項目:部位(区間の名前)、長さ、狭窄の程度、側副血行路の発達の有無と程度。
  • 狭窄の程度の表現:軽度・中等度・高度の狭窄、閉塞。
  • 広い範囲で内腔に凹凸があるときは「広狭不整」と表現します。
  • 病変の範囲はcmで測って書きます。
  • ごく短い範囲の狭窄は (ultra) short segment stenosis と表現します。
  • 石灰化:高度な石灰化はCTAで内腔の評価を妨げます(ブルーミングアーチファクト)。血管内治療でデバイスが通るかどうかにも影響します。
  • 側副血行路(コラテラル):閉塞の末梢側が、どの血管からの側副血行路で造影されているかを確かめます。
  • run-off:末梢の流出路(run-off)となる下腿三分枝〜足の動脈が開いているかは、血行再建の結果を左右します。

DSAと比べた20研究・957例のメタ解析では、下肢CTAによる50%以上の狭窄・閉塞の検出は感度95%・特異度96%でした。一方、区域ごとに見ると、過大評価が8%、過小評価が15%にみられました(Met 2009)。

遺残坐骨動脈(persistent sciatic artery)とは

遺残坐骨動脈は、胎児期に下肢を栄養していた坐骨動脈が残った、まれな変異です。内腸骨動脈から太ももの裏を下って膝窩動脈につながり、動脈瘤を合併しやすいことが知られています。

ハジメハジメ(研修医)
浅大腿動脈がすごく細いのに、膝窩動脈はしっかり造影されている人がいました。浅大腿動脈の閉塞で、側副路が発達しているんですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
その前に、内腸骨動脈から殿部へ太い血管が出ていないか、さかのぼって見てみましょう。太ももの裏を1本の太い動脈が下っていたら、遺残坐骨動脈かもしれません。
図9 正常と遺残坐骨動脈の比べ方 正常(左)は外腸骨動脈から太ももの前内側を浅大腿動脈が下り、遺残坐骨動脈(右)は内腸骨動脈から殿部と太ももの裏を下って膝窩動脈につながります。
図9 正常と遺残坐骨動脈の比べ方 正常(左)は外腸骨動脈から太ももの前内側を浅大腿動脈が下り、遺残坐骨動脈(右)は内腸骨動脈から殿部と太ももの裏を下って膝窩動脈につながります。

遺残坐骨動脈(PSA)は、胎児期に下肢を栄養していた坐骨動脈が、浅大腿動脈が発達した後も消えずに残った血管の変異です。内腸骨動脈から出て、大坐骨孔を通って太ももの裏側(坐骨神経に沿って)を下行し、膝窩動脈につながります。

  • 頻度は0.03〜0.06%と推定されるまれな変異です(van Hooft 2009)
  • 報告例をまとめた系統的レビュー(122人・159本)では、片側が70%、膝窩動脈まで連続する完全型が79%でした。動脈瘤が48%に見られ、8%で最終的に下肢切断が必要でした(van Hooft 2009)
  • 下肢CTAでは、内腸骨動脈から太い血管が殿部〜大腿後面を下り、膝窩動脈に続く様子として見えます。完全型では浅大腿動脈が細いことがあり、浅大腿動脈の閉塞と見誤らないよう、内腸骨動脈から追って確認します

Fontaine分類とは? 症状で見る下肢虚血の重さ

Fontaine分類は、下肢の慢性虚血を症状でⅠ〜Ⅳ度に分ける分類です。Ⅲ度・Ⅳ度にあたる重い段階は、いまは包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)として扱われます。ただし症状だけでは決めません(下の表のあとで説明します)。

Fontaine分類 症状
Ⅰ度 無症状、冷感、しびれ感
Ⅱ度 間欠性跛行、安静時無症状
Ⅲ度 安静時疼痛
Ⅳ度 潰瘍、壊死

包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)は、PADを背景に、虚血による安静時痛、壊疽、または2週間を超えて続く下肢の潰瘍を伴う病態です。症状だけで決めず、足趾血圧などの血行動態の検査で虚血を確かめます(Conte 2019)。2019年のGlobal Vascular Guidelinesは、創(Wound)・虚血(Ischemia)・足部感染(foot Infection)を評価するWIfI分類による病期評価と、解剖学的な病変の評価(GLASS)に基づいて血行再建を検討するよう勧めています(Conte 2019、Mills 2014)。症状・足の見た目・治療の違いは、閉塞性動脈硬化症(ASO)とTAOの違いでまとめて見られます。

下肢動脈の解剖でよくある疑問(Q&A)

Q. CFA・EIAは何の血管の略ですか?

CFAは総大腿動脈(common femoral artery)、EIAは外腸骨動脈(external iliac artery)です。鼠径靱帯より上がEIA、下がCFAです。

Q. 大腿動脈は太もものどこを通っていますか?

足のつけ根(鼠径部)では皮膚の近くを通り、拍動を触れることができます。そこから太ももの前の内側を斜めに下り、膝の少し上で太ももの裏側へ回って膝窩動脈になります。鼠径部の拍動するしこりは仮性動脈瘤などを、歩くと出て休むと治まるふくらはぎの痛み(間欠性跛行)は大腿膝窩動脈の狭窄・閉塞を考える手がかりになります。

Q. 前脛骨動脈・後脛骨動脈・腓骨動脈の違いは?

前脛骨動脈は膝窩動脈から最初に分かれてすねの前側を下り、足背動脈になります。後脛骨動脈はふくらはぎの内側を下って内くるぶしの後ろを通り、足底へ向かいます。腓骨動脈はふくらはぎの外側寄り(腓骨の近く)を下ります。後脛骨動脈と腓骨動脈は、脛骨腓骨動脈幹(TPT)から分かれます。

よくある勘違い

Q. 下腿三分枝は、膝窩動脈が1か所で3本に分かれる?

いいえ。まず前脛骨動脈が分かれ、その先の短い脛骨腓骨動脈幹(TPT)が後脛骨動脈と腓骨動脈に分かれます。分かれるのは2回です。

Q. CTで鼠径靱帯を探せば、EIAとCFAの境目がわかる?

鼠径靱帯はCTでは見えにくい構造です。下腹壁動脈が弯曲して最も下になる点や、大腿骨頭の上3分の1の高さを目安にします。

Q. 浅大腿動脈が細ければ、浅大腿動脈の閉塞?

多くはそうですが、遺残坐骨動脈の完全型でも浅大腿動脈が細くなります。内腸骨動脈から太ももの裏を下る太い血管がないか、さかのぼって確かめます。

今日のまとめ

  1. 下肢動脈はCIA→EIA→CFA→SFA→膝窩動脈→ATA/TPT(PTA・PeA)→足。名前は境目ごとに変わる。
  2. 境目の目安は下腹壁動脈の最下点(EIA→CFA)・内転筋裂孔(SFA→膝窩動脈)・前脛骨動脈の分岐。
  3. 下肢CTAは区間・長さ・程度・石灰化・側副血行路・run-offをそろえて書く。

参考文献

  1. 1) Norgren L, Hiatt WR, Dormandy JA, et al. Inter-Society Consensus for the Management of Peripheral Arterial Disease (TASC II). J Vasc Surg. 2007;45 Suppl S:S5-67. PubMed
  2. 2) Fleischmann D, Hallett RL, Rubin GD. CT angiography of peripheral arterial disease. J Vasc Interv Radiol. 2006;17(1):3-26. PubMed
  3. 3) Conte MS, Bradbury AW, Kolh P, et al. Global vascular guidelines on the management of chronic limb-threatening ischemia. J Vasc Surg. 2019;69(6S):3S-125S.e40. PubMed
  4. Mills JL, Conte MS, Armstrong DG, et al. The Society for Vascular Surgery Lower Extremity Threatened Limb Classification System: risk stratification based on wound, ischemia, and foot infection (WIfI). J Vasc Surg. 2014;59(1):220-234. PubMed
  5. Met R, Bipat S, Legemate DA, et al. Diagnostic performance of computed tomography angiography in peripheral arterial disease: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2009;301(4):415-24. PubMed
  6. van Hooft IM, Zeebregts CJ, van Sterkenburg SM, et al. The persistent sciatic artery. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2009;37(5):585-91. PubMed
  7. Gopalakrishnan PP, Manoharan P, Shekhar C, et al. Redefining the fluoroscopic landmarks for common femoral arterial puncture during cardiac catheterization: Femoral angiogram and computed tomography angiogram (FACT) study of common femoral artery anatomy. Catheter Cardiovasc Interv. 2019;94(3):367-375. PubMed
  8. Poredoš P, Cevc M, Blinc A. Characteristics of atherosclerosis in femoropopliteal artery and its clinical relevance. Atherosclerosis. 2021;335:31-40. PubMed

症例画像は各図の引用元のとおりです。

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