先に結論:冠動脈の番号(AHA分類)
- 冠動脈はAHA分類で#1〜#15の番号で呼ばれ、右冠動脈(RCA)が#1〜#4、左主幹部(LMT)が#5、左前下行枝(LAD)が#6〜#10、左回旋枝(LCX)が#11〜#15です
- RCAは#1(近位)・#2(中部)・#3(遠位)・#4(PD/AV)、LADは#6〜#8と対角枝#9・#10、LCXは#11・#13と鈍縁枝#12・後側壁枝#14・後下行枝#15です
- 冠動脈CTの報告や心臓カテーテルの記録はこの番号で書くため、どの番号がどの領域(前壁・側壁・下壁)を養うかとセットで覚えておきます
冠動脈の番号を最初に確認
- 1-4が右冠動脈(RCA)
- 5が左冠動脈主幹部(LMT:Left Main Trunk)
- 6-10が左冠動脈前下行枝(LAD)
- 11-15が左冠動脈回旋枝(LCX)
冠動脈の番号一覧(AHA分類)
| 番号 | 部位 | 略語 |
|---|---|---|
| #1 | 右冠動脈の付け根〜右室枝(RVB) | RCA |
| #2 | 右室枝〜鋭縁枝(AM) | RCA |
| #3 | 鋭縁枝〜後下行枝 | RCA |
| #4 | 房室結節枝・後下行枝 | 4AV・4PD |
| #5 | 左冠動脈主幹部 | LMT |
| #6 | 左主幹部〜1本目の中隔枝(SB) | LAD |
| #7 | 1本目の中隔枝〜第2対角枝 | LAD |
| #8 | 第2対角枝〜末梢 | LAD |
| #9 | 第1対角枝 | D1 |
| #10 | 第2対角枝 | D2 |
| #11 | 左主幹部〜鈍角枝(鈍縁枝) | LCX |
| #12 | 鈍角枝(鈍縁枝) | OM |
| #13 | 鈍角枝〜後側壁枝 | LCX |
| #14 | 後側壁枝 | PL |
| #15 | 後下行枝 | PD |
心臓を栄養する血管を冠動脈と言います。
冠動脈血管造影検査(CAG)や心臓ドックでもある冠動脈CTでは、この冠動脈のどこに狭窄やプラークがどの程度あるのかを見る検査です。
その際に、狭窄やプラークがどこにあるかを、冠動脈の解剖名や番号を使って表現します。冠動脈CTの報告では、部位に加えて重症度をそろえて伝えるCAD-RADS 2.0(2022年改訂)が使われます。患者ごとに最も強い狭窄で、CAD-RADS 0(プラーク・狭窄なし)から5(少なくとも1本が閉塞(total occlusion))に分類し、プラーク量をP1〜P4で付け加えます。
「この血管の解剖や番号がややこしいので心臓は嫌い」、
「心臓の血管には苦手意識がある」
という人は非常に多いのです。
今回は、そんな冠動脈の解剖・番号についてまとめました。
また各冠動脈それぞれについて、番号のつけ方も解説しました。
つけ方を理解することで覚えるのにも役立つと思います。
冠動脈の解剖は?番号は?
まず冠動脈には大きく、
- 左冠動脈(LCA:left coronary artery)
- 右冠動脈(RCA:right coronary artery)
に分かれます。

左冠動脈(LCA)はさらに
- 左前下行枝(LAD:Left Anterior Descending)
- 回旋枝(LCX:Left Circumflex)
に分かれます。

これを冠動脈だけ抜き出すとこのようになります。

さらに米国心臓協会(AHA:American Heart Association)では、冠動脈に1-15番の番号をつけて分類しています。
細かいところはこの後説明します。
するとちょっとややこしいですが、以下のようになります。

ここでの一番のポイントは、
- 1-4が右冠動脈(RCA)
- 5が左冠動脈主幹部(LMT:Left Main Trunk)
- 6-10が左冠動脈前下行枝(LAD)
- 11-15が左冠動脈回旋枝(LCX)
となります。
このように、
- 右冠動脈 (#1-4)
- 左前下行枝 (#6-10)
- 左回旋枝 (#11-15)
の順番に番号が付いていくということをまず覚えておきましょう。
各冠動脈のポイントは?
次に各冠動脈の番号のつけ方を簡単に説明します。
右冠動脈(RCA #1-4)について

右冠動脈はAMという枝、つまり鋭縁枝が出るところまでを2等分して(表のように#1を右室枝(RVB)までとする定義もあり、施設や文献により異なります)、
- #1(proximal=近い)
- #2(middle=中間)
の2つに分けます。そして、このAMより遠いところを、
- #3(distal=遠い)
という風に名前をつけます。
ここからちょっとだけ難しいですが、その#3は左右の房室間溝と両側の心室間溝が交わる心十字と呼ばれる点から、複数の枝に分かれます。簡単に言うと、
- この複数に分かれるところから先が#4
となります。

図をみればわかりやすいと思います。
左前下行枝(LAD #6-10)について
まずこの左前下行枝は、左室の前壁や中隔を栄養する血管です。

その、
- 最初の中隔を栄養する大きな枝(第1中隔枝:SEP(1st major septal branch))を出すまでが#6
となります。

そして、その先を2等分して、
- #7(middle=中間)
- #8(apical =尖部)
と名前をつけます。

そして、左室の前壁を栄養するのが対角枝(diagonal branch)と呼ばれる血管で、これが#9、#10となります。
- 最初に出る第1対角枝(D1)が#9
- 次に出る第2対角枝(D2)が#10
と名前をつけます。
一つ一つ見ていくと意味がわかりますね。
左回旋枝(LCX #11-15)について

まず
- 鈍縁枝(OM)が分岐するまでが#11(proximal=近い)
- その先が#13(distal=遠い)
となります。

そして、
- 鈍縁枝(OM)自体が#12
となります。

そして、
- #13から分岐する後側壁枝(PL)が#14
となります。上の図を見ると#12、14は同じ方向を向いており、ともに左室の側壁を栄養する血管です。
ちょっと難しいPD
上の図を見ると、RCAの#4にも、LCXの#15にもPDという名前が付いているのがわかると思います。これは少しややこしいのですが、このPDはposterior descendingの略で、後下行枝と呼ばれます。
この後下行枝(PD)は、通常は右冠動脈(RCA)から分岐することが多いですが、人によっては、左冠動脈回旋枝(LCX)から分岐することもあるのです。

ですので、
- 右冠動脈(RCA)から分岐する場合は、#4
- 左冠動脈回旋枝(LCX)から分岐する場合は、#15
となります。
細かい語句の日本語および英語は以下の通りです。
左前下行枝(LAD)
- D1(第一対角枝):First Diagonal Branch
- D2(第二対角枝):Second Diagonal Branch
- SEP(中隔枝):Septal Branch
左回旋枝(LCX)
- OM(鈍縁枝):Obtuse Marginal
- PD(後下行枝):Posterior Descending
- PL(後側壁枝):Posterior Lateral
右冠動脈(RCA)
- RVB(右室枝):Right Ventricular Branch
- AM(鋭角枝もしくは鋭縁枝):Acute Marginal branch
- PD(後下行枝):Posterior Descending
- AV(房室結節枝):Atrio-Ventricular
冠動脈の番号
- #1:RCA(右冠動脈)の付け根〜RVB(右室枝)
- #2:RVB(右室枝)〜AM(鋭縁枝)
- #3:AM(鋭縁枝)〜PD(後下行枝)
- #4:AV(房室結節枝)、PD(後下行枝)
- #5:LMT(左主幹部)
- #6:LMT(左主幹部)〜1本目のSB(中隔枝)
- #7:1本目のSB(中隔枝)〜D2(第2対角枝)
- #8:D2(第2対角枝)〜LAD(左前下行枝)の末梢
- #9:D1(第1対角枝)
- #10:D2(第2対角枝)
- #11:LMT(左主幹部)〜OM(鈍角枝)
- #12:OM(鈍角枝)
- #13:OM(鈍角枝)〜PL(後側壁枝)
- #14:PL(後側壁枝)
- #15:PD(後下行枝)
冠動脈の支配領域
どの冠動脈が心臓のどこを栄養しているか(支配領域)を知っておくと、心電図や心エコーの所見と結びつけやすくなります。一般的な右冠動脈優位型では、次のようになります。
| 冠動脈 | 主な支配領域 |
|---|---|
| 左前下行枝(LAD #6〜10) | 左室前壁、心室中隔の前方2/3、心尖部 |
| 左回旋枝(LCX #11〜15) | 左室側壁(後側壁) |
| 右冠動脈(RCA #1〜4) | 右室、左室下壁、心室中隔の後方1/3 |
後下行枝(PD)が右冠動脈から出るか左回旋枝から出るかで「右冠動脈優位型」「左冠動脈優位型」と呼び分けます。支配領域には個人差があるので、実際の画像で走行を確認することが大切です。
最後に
冠動脈を米国心臓協会(AHA:American Heart Association)による1-15番の番号の分類(AHA分類)に基づき、解説しました。
理解しながら覚えることにより、覚えやすくなると思います。
この記事が皆さんのお役に立てば幸いです。
冠動脈の番号でよくある疑問(Q&A)
Q. 後下行枝(#4PD)が右冠動脈から出る「右冠動脈優位型」はどれくらい多い?
A. 冠動脈CT 1223人の検討では右冠動脈優位91.7%、左冠動脈優位8%、両側優位(codominance)1.3%でした(Azour 2021)。カテーテル造影4000例の検討でも右優位85.5%、左優位9.7%、両側優位4.8%と、大部分が右優位です(Aricatt 2022)。つまり冠動脈の番号#15(LCXからの後下行枝)が出てこない人が多数派です。
Q. 冠動脈CTの報告書で、番号と一緒に出てくる「CAD-RADS」とは?
A. 冠動脈CTの結果を標準化して伝えるための分類で、患者ごとに最も強い狭窄で決め、プラークや狭窄がない0から、少なくとも1本が閉塞(total occlusion)している5まであります。2022年の2.0版ではプラーク量をP1〜P4で付記します(Cury 2022)。番号(#1〜#15)は「どこに」、CAD-RADSは「どれくらい」を表すと考えると整理しやすいです。
Q. 優位型の違いは病気と関係する?
A. 急性下壁梗塞265例と対照530例の比較では、右冠動脈優位が下壁梗塞の発症と関連していた(調整オッズ比2.4)との報告がありますが、さらなる検証が必要とされています(Wang 2019)。
関連記事:冠動脈CT(心臓CT)の見方|冠動脈の解剖と番号(AHA分類)、狭窄率の評価・ナプキンリングサイン・β遮断薬(セロケン)
参考文献
- Austen WG, Edwards JE, Frye RL, et al. A reporting system on patients evaluated for coronary artery disease. Circulation. 1975;51(4 Suppl):5-40. PubMed
- Cerqueira MD, Weissman NJ, Dilsizian V, et al. Standardized myocardial segmentation and nomenclature for tomographic imaging of the heart. Circulation. 2002;105(4):539-42. PubMed
- Cury RC, Leipsic J, Abbara S, et al. CAD-RADS™ 2.0 – 2022 Coronary Artery Disease-Reporting and Data System: An Expert Consensus Document of the Society of Cardiovascular Computed Tomography (SCCT), the American College of Cardiology (ACC), the American College of Radiology (ACR), and the North America Society of Cardiovascular Imaging (NASCI). J Cardiovasc Comput Tomogr. 2022;16(6):536-557. PubMed
- Leipsic J, Abbara S, Achenbach S, et al. SCCT guidelines for the interpretation and reporting of coronary CT angiography: a report of the Society of Cardiovascular Computed Tomography Guidelines Committee. J Cardiovasc Comput Tomogr. 2014;8(5):342-58. PubMed
- Azour L, Steinberger S, Toussie D, et al. Influence of coronary dominance on coronary artery calcification burden. Clin Imaging. 2021;77:283-286. PubMed
- Aricatt DP, Prabhu A, Avadhani R, et al. A study of coronary dominance and its clinical significance. Folia Morphol (Warsz). 2023;82(1):102-107. PubMed
- Cury RC, Leipsic J, Abbara S, et al. CAD-RADS™ 2.0 – 2022 Coronary Artery Disease – Reporting and Data System. J Am Coll Radiol. 2022;19(11):1185-1212. PubMed
- Wang L, Li J, Gao Y, et al. Association between coronary dominance and acute inferior myocardial infarction: a matched, case-control study. BMC Cardiovasc Disord. 2019;19(1):35. PubMed
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大変わかりやすいイラストありがとうございます。
コメントありがとうございます。喜んでいただけて嬉しいです。
こんにちわ。
AHA分類の分かりやすく美しい解説PDFを、ダウンロードさせて頂きました。
私のブログ(ココログ2012のECGブログ)で、虚血性心疾患の心電図解説に使用させて頂けませんでしょうか?出典を、記載させて頂きます。
(心電図の医師向けのお勉強用ブログです。246症例ほど、心電図解説を行っております)
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築島様
コメントいただきありがとうございます。
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