先に結論:アルツハイマー病の画像診断

  • アルツハイマー病は認知症の原因で最も多い病気で、脳にアミロイドβ(老人斑)とタウ(神経原線維変化)がたまり、もの忘れ(新しいことが覚えられない)から始まってゆっくり進みます
  • MRIでは海馬・側頭葉内側の萎縮(VSRADなどで評価)、脳血流SPECT・FDG-PETでは後部帯状回・楔前部・側頭頭頂葉の血流・代謝低下が特徴で、アミロイドPETでアミロイドの蓄積を確認できます
  • CTでも海馬の萎縮(海馬のまわりの髄液腔・側脳室下角の拡大)は評価でき、内側側頭葉萎縮の目視評価はCTとMRIでよく一致します
  • 早期の患者には抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ・ドナネマブ)が使えるようになり、投与中はARIA(脳のむくみ・微小出血)をMRIで確認します。MRIは治る認知症(慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症など)の除外にも重要です

※もの忘れが気になるときは、もの忘れ外来・神経内科・精神科を受診してください。

アルツハイマー病(AD:Alzheimer disease)

認知症の分類:変性性認知症(アルツハイマー型認知症、非アルツハイマー型(DLB・FTD・CBDなど)、ハンチントン病、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)、血管性認知症、その他の認知症(正常圧水頭症・感染症・代謝性など)

  • 認知症の原因疾患で最も多い。物忘れを主訴として発症する。
  • 変性性認知症ではADに次いでレビー小体型認知症(DLB)が多いとされる(順位は調査により異なる)。
  • 組織学的には老人斑(神経毒性を持つアミロイドβ蛋白でできる)、神経原線維変化(タウ蛋白が過剰にリン酸化されてできる)の2つが見られる。なかでも後者の神経原線維変化の方は、神経細胞脱落と正の相関を示し、認知症と相関するとされる。
  • つまり、ADのstageが上がる程、タウ蛋白の沈着は増大する。海馬から始まり、側頭葉→頭頂葉への沈着の広がりあり。
  • 記銘力障害(新しいことが覚えられない)で始まる

→やがて認知障害(見当識障害)と人格変化
→ついに高等感情が鈍麻し、意思疎通が不能になる。

  • 家族性AD、若年性ADなど多様な病態があり、臨床所見、経過、倫理的側面も考慮した遺伝子情報などを加味した視点が診断に不可欠。
  • 治療薬はコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンの3種類、アセチルコリンの濃度を高めて、神経伝達効率を高める)、NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)。さらに日本では2023年にレカネマブ、2024年にドナネマブ(アミロイドβに対する抗体薬)が、早期(MCI〜軽度認知症)のアルツハイマー病に承認された。投与前にアミロイドPETや髄液検査でアミロイドの蓄積を確認し、投与中は副作用であるARIA(脳浮腫・微小出血)をMRIで定期的に確認する。第3相試験(Clarity AD)では、レカネマブ群の12.6%に浮腫・滲出を伴うARIA(ARIA-E)、26.4%に点滴に伴う反応がみられた。ARIAの多くは無症状だが、APOE ε4保因者(特にホモ接合体)ではリスクが高く、抗凝固薬で出血のリスクが上がるとされる(Cummings 2023)。
アルツハイマー病と脳血管障害の関係
  • 潜在的なアルツハイマー病があり、それに脳血管障害が加わると、アルツハイマー病が顕在化することあり。
  • すでにアルツハイマー病を発症しており、それに脳血管障害が加わると、アルツハイマー病による認知症が悪化する。
  • つまり、アルツハイマー病に脳血管障害が加わると進行する。

ADの診断基準

  • 2011年にThe National Institute on Aging Alzheimer’s Association(NIA/AA)から提出された。その後2018年に研究用のATN分類(アミロイド・タウ・神経変性)が示され、2024年にはAlzheimer’s Associationの改訂基準で、アミロイドPET・髄液バイオマーカー・精度の高い血漿バイオマーカー(特にp-tau217)などのCore 1バイオマーカーの異常があればADと診断できるとする生物学的定義が示された。
  • ADには、「発症前」、「軽度認知機能障害(mild cognitive impairment:MCI)」、「認知症」を示す段階がある。
  • 複数のバイオマーカーにより診断確実度が評価される。
  • ADには病理的な一連のプロセスがあり、そのステージ毎に適切なバイオマーカーが選択されるべき。

▶バイオマーカー

  • 原因遺伝子変異(APP,PS-1/PS-2)、危険因子(APOE4)の検索
  • 脳脊髄液 Aβ42低下
  • 脳脊髄液 tau/p-tau増加
  • アミロイドPET陽性
  • FDG-PET代謝低下
  • MRIでの海馬近傍萎縮

画像所見のポイントは?

▶MRI所見

  • 病期によって、その様相は大きく異なる。
  • 嗅内野皮質、海馬、扁桃体萎縮→無名質の菲薄化、側頭頭頂葉皮質の萎縮、側頭頭頂葉から前頭葉に及ぶびまん性萎縮。
  • 病初期の診断は重要。他の皮質に比べて、嗅内野皮質、海馬、扁桃体萎縮が高度の場合にはADの可能性が示唆される。→VSRADを参考にする。
  • 若年発症例では、海馬傍回萎縮を指摘することが難しい。→SPECT、PETを積極的に施行する。(若年例では、楔前部、後部帯状回の血流、代謝低下が顕著。)若年発症例は海馬よりも側頭頭頂葉の萎縮が目立ち、高齢発症例は海馬の萎縮が目立つと報告されています(Frisoni 2005)。若年発症例では頭頂葉・後部帯状回・楔前部の灰白質減少も強くみられました(Ishii 2005)。

※海馬傍回(parahippocampal gyrus)とは海馬の周囲に存在する灰白質の大脳皮質領域。大脳内側面の脳回のひとつ。

症例 70代男性

alzheimer

症例 70歳代男性

alzheimerdiseasemri

症例 80歳代女性 物忘れ。HDSR 10点

alzheimerdisease

左優位に海馬および海馬傍回の萎縮あり。

CTでわかる海馬萎縮(アルツハイマー型認知症のCT所見)

MRIが撮れないときや救急・健診の頭部CTでも、海馬の萎縮はある程度読めます。
  • 海馬は側脳室下角(側頭角)のすぐ内側にあります。CTでは海馬そのものより、側脳室下角や脈絡裂(海馬のまわりの髄液腔)が広がっていないかを左右で比べると萎縮に気づきやすくなります
  • 内側側頭葉萎縮(MTA)の目視評価(Scheltensの方法)は、海馬と周囲の髄液腔を見て萎縮の程度を段階づけるもので、アルツハイマー病では対照より萎縮が強く、記憶検査の成績と相関し、全体の脳萎縮より早く現れるとされます(Scheltens 1992)
  • もの忘れ外来の30例では、64列CTとMRIの内側側頭葉萎縮の評価の一致度(κ値)が左0.88・右0.86と高く、CTもMRIと同程度の情報が得られました(Wattjes 2009)
  • ただし海馬の萎縮は加齢でも起こり、萎縮だけでアルツハイマー病とは決められません。CTは慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症・脳腫瘍など治療で改善しうる原因の除外にも役立ちます

軽度認知機能障害(Mild cognitive impairment:MCI)

  • 記憶障害で発症。それ以外の認知機能はほぼ正常。認知症の診断基準も満たさない。
  • 今後アルツハイマー病に進行する可能性がある高齢者群である。
  • 発症前のアルツハイマー病(症状なし)

→軽度認知機能を伴うアルツハイマー病
→アルツハイマー病による認知症。と進行する。

・PET、SPECTやMRIで診断する。特にアミロイドPETが注目されている。

 

あわせて読みたい:アミロイドPETとは?抗アミロイド抗体薬(レカネマブ・ドナネマブ)のARIA-E/ARIA-HとMRI監視・重症度

参考文献

  1. McKhann GM, Knopman DS, Chertkow H, et al. The diagnosis of dementia due to Alzheimer’s disease: recommendations from the National Institute on Aging-Alzheimer’s Association workgroups on diagnostic guidelines for Alzheimer’s disease. Alzheimers Dement. 2011;7(3):263-269. PubMed
  2. Jack CR, Andrews JS, Beach TG, et al. Revised criteria for diagnosis and staging of Alzheimer’s disease: Alzheimer’s Association Workgroup. Alzheimers Dement. 2024;20(8):5143-5169. PubMed
  3. van Dyck CH, Swanson CJ, Aisen P, et al. Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease. N Engl J Med. 2023;388(1):9-21. PubMed
  4. Sims JR, Zimmer JA, Evans CD, et al. Donanemab in Early Symptomatic Alzheimer Disease: The TRAILBLAZER-ALZ 2 Randomized Clinical Trial. JAMA. 2023;330(6):512-527. PubMed
  5. Jack CR, Bennett DA, Blennow K, et al. NIA-AA Research Framework: Toward a biological definition of Alzheimer’s disease. Alzheimers Dement. 2018;14(4):535-562. PubMed
  6. Cummings J, Apostolova L, Rabinovici GD, et al. Lecanemab: Appropriate Use Recommendations. J Prev Alzheimers Dis. 2023;10(3):362-377. PubMed
  7. Frisoni GB, Fox NC, Jack CR, et al. The clinical use of structural MRI in Alzheimer disease. Nat Rev Neurol. 2010;6(2):67-77. PubMed
  8. Scheltens P, Leys D, Barkhof F, et al. Atrophy of medial temporal lobes on MRI in “probable” Alzheimer’s disease and normal ageing: diagnostic value and neuropsychological correlates. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1992;55(10):967-72. PubMed
  9. Wattjes MP, Henneman WJ, van der Flier WM, et al. Diagnostic imaging of patients in a memory clinic: comparison of MR imaging and 64-detector row CT. Radiology. 2009;253(1):174-83. PubMed
  10. Frisoni GB, Testa C, Sabattoli F, et al. Structural correlates of early and late onset Alzheimer’s disease: voxel based morphometric study. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2005;76(1):112-4. PubMed
  11. Ishii K, Kawachi T, Sasaki H, et al. Voxel-based morphometric comparison between early- and late-onset mild Alzheimer’s disease and assessment of diagnostic performance of z score images. AJNR Am J Neuroradiol. 2005;26(2):333-40. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →