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左側結腸の腸炎を見たら、症状にもよりますが、まず鑑別に挙げるべきは、虚血性腸炎です。

ただし、それ以外にもさまざまな疾患、病原菌が原因となり腸炎を起こします。

虚血性腸炎を中心に、左側結腸炎の鑑別診断についてまとめました。

左側結腸の腸炎の鑑別診断

左側結腸に好発する腸炎

  • 虚血性腸炎
  • 偽膜性腸炎
  • 潰瘍性大腸炎
  • アメーバ腸炎
  • 住血吸虫症
  • 淋菌
  • ヘルペスウイルス
  • クラミジア

※アメーバ腸炎は直腸−S状結腸や盲腸−上行結腸に好発。
※住血吸虫症はS状−下行結腸。
※淋菌、ヘルペスウイルス、クラミジアは直腸−S状結腸。

関連記事)右側結腸の腸炎の鑑別診断

虚血性腸炎(ischemic colitis)

  • 腸管壁の血流低下による低酸素状態と再灌流によってもたらされる腸管壁の組織障害。腸間膜血管の主幹に器質的閉塞を伴わないものとして定義される。
  • 突然発症の腹痛(疝痛発作)、嘔気、その後、下痢、血便(鮮血性の下血)が起こる。発症する時間帯は夕食後または夜間が多い。
  • 下行結腸-S状結腸といった左半結腸に多い。
  • ただし、透析患者では、小腸ー右半結腸に好発する。
  • 心疾患のある70歳以上の高齢者に多い。若年もあり。
  • 臨床背景として、出血性もしくは敗血症性ショック、低心拍出量の心不全、ジギタリス投与中があげられる。
  • 狭義の虚血性腸炎では、

血管側:DM、HT、DLといった動脈硬化や血栓、塞栓
腸管側:慢性便秘による腸管内圧の上昇

といった原因が挙げられる。

  • 症状が非常に特徴的であるため、CT撮影前に診断がほぼついていることが多い。
  • 臨床的重症度により、①一過性型、②狭窄型、③壊死型(虚血型)に分類される。

(①②:腸間の循環障害が比較的軽微なため腸管虚血が可逆的で狭義の虚血性腸炎。rectosigmoid junction(S状結腸近位),splenic flexure(脾彎曲部)などのwatershed areaに多い。脱水による低灌流が原因で虚血が生じる。高齢者では低灌流によって左側結腸で虚血変化が生じ、若年者では外傷による出血性ショックによって右結腸に虚血が生じる。

③:虚血性腸炎と虚血性小腸炎を含め、NOMIとして扱うこともある。症状が激烈で、短時間のうちに穿孔性腹膜炎へ進行することもある。)

虚血性腸炎の診断基準

  • 急激な腹痛と血便
  • 左側結腸に発生
  • 抗生剤が未使用(必須)
  • 培養、生検で細菌陰性(必須)
  • 特徴的内視鏡像
  • 特徴的X線像
  • 特徴的生検像

飯田三雄、他: 胃と腸. 28; 899-912. 1993

  • 治療は腸管安静を主体として保存的加療。絶食および補液を行い、腹痛その他の症状に関しては対症療法。

虚血性腸炎の画像診断

注腸造影
  • 拇指圧痕像(thumb printing)、慢性化すると狭窄や嚢形成(sacculation)

thumb printing

2005年放射線科診断専門医試験問題58より引用。

内視鏡
  • 浮腫、暗赤色の膨隆、膿苔を伴ったびらん、健常部との境界は明瞭。
CT所見
  • 腸管壁の浮腫性変化(特に粘膜下層)がみられる。周囲脂肪織濃度上昇は比較的軽度であることが多い。
  • 一過性型が最も多いが、高齢者や透析患者では虚血型を起こすことあり。腸管の炎症範囲や、残存虚血(造影効果)の有無の評価が重要。
症例 70歳代男性 数度の血便にて救急受診

ischemic colitis

左半結腸に広範な粘膜下層の肥厚を認めています。

虚血性腸炎を疑う所見です。

下行結腸の一部に、高吸収域があり、同部位からの出血が疑われます。

症例 60代女性 左下腹部痛、血便

ischemiccolitis ischemiccolitis1

下行結腸に粘膜下層の肥厚あり。

周囲脂肪織の濃度上昇も認めています。

虚血性腸炎を疑う所見です。

症例 75 歳の男性。突然の腹痛,下血。

ISCHEMIC COLITIS2005年放射線科診断専門医試験問題58より引用。

注腸透視にて拇指圧痕像(thumb printing)あり。CTにてS状結腸から直腸にかけて著明な粘膜下層の肥厚および周囲脂肪織濃度上昇を認めており、虚血性腸炎を疑う所見。

症例 60 歳代の男性。数日前から自覚した左腹部痛、下血

ischemic colitis1

2014年放射線科診断専門医試験問題50より引用。

下行結腸に全周性の粘膜下層の肥厚像あり。エピソードからも虚血性腸炎を疑う所見。

 

抗生物質起因性腸炎

抗生物質起因性腸炎の種類と好発部位

  • 偽膜性大腸炎:直腸、S状結腸〜下行結腸
  • 出血性腸炎:横行結腸〜上行結腸
  • MRSA腸炎:小腸

偽膜性腸炎

  • O-157腸炎と同様高度な壁肥厚を呈する。
  • 広域性抗生剤(VM以外のすべての抗生剤で認められる。セフェム系、リンコマイシン系など。抗癌剤、解熱鎮痛薬でも生じる。)
  • 抗生剤投与→腸管内の細菌がいなくなる→菌交代現象としてClostridium difficileが増殖→産生毒素(エントロトキシン、サイトトキシン)を産生する。
  • 院内感染の原因として重要。
  • 典型的には直腸(特にRs)、S状結腸から下行結腸に高度の壁肥厚が見られる。
  • 重症化とともに全大腸に及ぶ。
  • 水溶性下痢を認める。
  • 60歳以上の高齢者で、基礎疾患のある患者に多い。
  • 抗生剤投与後2−14日以内の発症が多い。中止後に発症することもある。
  • 大腸内視鏡で白色〜黄色の偽膜形成を認めれば診断は容易。

偽膜性腸炎のCT所見

  • 著明な結節状ひだ肥厚を呈したCT所見はアコーディオンサイン(経口造影剤が肥厚した結腸ひだ間にトラップされることによる)として知られるが、頻度は低く数%と言われる。
  • 1/3で腹水を伴う。
  • CT所見は非特異的だが、慢性期のCrohn病を除くすべての感染性腸炎、炎症性腸炎と比較して高度な肥厚(肥厚結腸壁は平均約10-15mm)とされる。
70歳代 男性

accordion sign

全結腸に広範な壁肥厚および周囲脂肪織濃度上昇あり。上行結腸を中心にひだが目立ち、いわゆるアコーディオンサインあり。

CDトキシン陽性であり、偽膜性腸炎の症例。

腹水を伴いやすい腸炎
  • O-157腸炎
  • 偽膜性腸炎
  • 好酸球性腸炎

の3つ。

腸管壁肥厚が強い傾向にある疾患
  • 偽膜性腸炎
  • O-157腸炎
  • 白血球減少性腸炎
  • Crohn病

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