菊池病とは

  • 菊池・藤本病、組織球性壊死性リンパ節炎とも呼ばれる。
  • アジア、特に日本に多い。
  • 主として若年女性(10-30歳代)や小児に発症する原因不明(なんらかの感染を契機として発症すると推測されている)の有痛性の頸部リンパ節腫大。
  • 前駆症状として扁桃腫大を伴う上気道症状の後、急速に頸部リンパ節腫大と白血球減少を認める。
  • 高熱とリンパ節腫脹のみで経過し、しばしば不明熱の原因となる。
  • 他症状としては、頭痛、倦怠感、上気道症状、口内炎、肝腫大、脾腫大、関節炎など。
  • 少数の症例に顎下部、腋窩部、鼠径部のリンパ節も腫大し、まれに一過性の皮膚発疹、肝・脾腫をきたすことがある全身性疾患である。また頸部のリンパ節腫大を伴わないこともある。
  • 頸部リンパ節腫脹は50-90%で見られ、レベルⅡ〜Ⅴに多い。
  • 診断はリンパ節生検(臨床経過からはStill病や悪性リンパ腫との鑑別が困難なことがある。)
  • ステロイドによる対症療法が勧められ、1-2ヶ月で治癒する良性経過をたどる予後良好な良性リンパ節疾患である。自然寛解と再燃を繰り返す。
  • 血液所見ではWBC低下、LDH上昇がみられる。CRPの上昇を伴う事も多い。
  • 他、フェリチン、IL-2 receptorが上昇することもある。

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リンパ節腫脹をきたす疾患の鑑別診断まとめ
頸部リンパ節腫脹、腫大、造影効果を有するものの鑑別診断

不明熱とは?

(2~3週間にわたり、≧38℃、一般検査で原因が特定できない)

感染症 28.7% 膠原病 19.0% 悪性腫瘍 14.4%
 結核 7.2%  成人Still病 8.5%  悪性リンパ腫 7.8%
 ウイルス 6.5%  PMR 3.3%  MDS 1.3%
 化膿性リンパ節炎 5.9% 血管炎 9.2% その他 15.7%
 感染性心内膜炎 3.3%  大動脈炎 5.9%  菊池病 3.9%
 特発性細菌性腹膜炎  ベーチェット 2.6%  キャッスルマン病 1.3%

(Iikuni et al Int Med 33. 67)

菊池病の画像所見

  • リンパ節腫大が上内深頚リンパ節、副神経リンパ節中心に多発する。レベルⅡ〜Ⅳに好発するがレベルⅡの発生頻度が最多。
  • 1つ1つが小さなリンパ節で癒合に乏しい傾向にある。
  • リンパ節周囲への炎症波及が80%以上の高頻度で見られる。
  • 壊死を反映して内部が不均一なもの(13-35mm大)と、均一に造影される(10mm以下)2パターンの報告あり。(小さなものは均一で、大きなものは壊死を伴う)参考)木村氏病は皮下に増強効果を示す病変を伴っていることが多い。
  • 画像上は必ずしも壊死を示す所見が確認されるわけではない。
症例 35歳男性 筋肉痛、発熱、リンパ節腫脹

kikuchi disease1

AJNR 18:1729-1732,1997より引用。

右頸部に一部内部壊死を伴うリンパ節腫大あり。周囲に脂肪織濃度上昇あり。

症例 37歳女性

kikuchi disease2

AJNR 18:1729-1732,1997より引用。

右頸部に一部内部壊死を伴うリンパ節腫大あり。周囲に脂肪織濃度上昇あり。

片側性複数のリンパ節腫大の鑑別診断

  • 片側性複数のリンパ節腫大の鑑別にバルトネラ・ヘンセラ菌(グラム陰性梶菌)による猫ひっかき病がある。
  • ネコによるひっかき傷や咬傷部位の所属リンパ節の有痛性腫脹。
  • 上肢の傷で同側の腋窩リンパ節腫大が生じ、頚部リンパ節も腫大することがある。リンパ節周囲に炎症の波及がある。

白血球減少症の鑑別診断

  • 粟粒結核、
  • ブルセラ症、
  • SLE、
  • 悪性リンパ腫、
  • 白血病・前白血病状態、
  • チフス(Salmonella typhi)、
  • 菊池病。

参考)
・画像診断2009年10月 頭頸部の感染症 自治医科大学 藤田晃史先生
・臨床画像2010年8月 頸動脈間隙 杏林大学 大原有紗先生

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