【頭部】症例5 解答編

【頭部】症例5

【症例】80歳代 男性
【主訴】頭部打撲
【現病歴】外出先で椅子から立ち上がる際に、つまづいて後方へ転倒し受傷。転倒時に意識はあった。
【既往歴】高血圧、不整脈、アルツハイマー病
【身体所見】BP 217/71、HR 96、JCS1-1、 難聴あり、顔色良好、右後頭部に擦過創あり。神経学的異常なし。

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両側前頭葉の脳表および脳溝に外傷性くも膜下出血を疑う高吸収域を認めています。

脳底部前頭葉においては脳溝だけではなく、脳内にも出血があるのかも知れないと思われる高吸収域を認めています。

ただし、この部位は頭蓋骨のアーチファクトによりこのように高吸収にみえることがあるので注意が必要です。

その場合、ぜひ確認して頂きたいのが、冠状断像です。

冠状断像で見ると、やはりアーチファクトなどではなく、脳表・脳溝に沿った高吸収の血腫を認めています。

左側では一部脳挫傷による脳内血腫を伴っていそうです。

ただし、基本は脳溝に沿った分布の血腫であり、外傷性くも膜下出血がメインであることがわかります。

骨折を疑う所見は認めていません。

診断:外傷性くも膜下出血+脳挫傷疑い

※症例4で見たように外傷性くも膜下出血のみの場合は経過が良好であることが多いですが、脳挫傷を合併した場合はときに重篤化します。

4時間後にフォローのCTが撮影されました。

すると左前頭葉脳底部で脳内出血が明瞭化し、サイズが増大、周囲に浮腫性変化を疑う低吸収域が出現しています。

また脳表・脳溝沿いの外傷性くも膜下出血所見も明瞭化しています。

ただし、その後のフォローCTでは血腫はさらに増大したり、脳ヘルニアを起こしたりということはありませんでしたので、このまま保存的に加療され退院となりました。

外傷による脳出血を認めた場合は、とにかく慎重なフォローのCT撮影が重要となります。

脳挫傷の好発部位

脳は髄液の中にぷかぷか浮いており、頭蓋骨に守られています。

しかし、外傷を受けた際に、脳が頭蓋骨にたたきつけられることがあります。

これによって脳実質内に出血を起こすことを脳挫傷といいます。

脳挫傷の好発部位は、上のように頭蓋骨に接しやすい部位となっています。

脳挫傷のCT画像所見

ですので、まずCTを読影する際は

  • 前頭葉底部や前頭極
  • 側頭葉下面や先端部

を中心に注意深く観察する必要があります。

とくに前頭葉底部は大脳半球の下端であり、かつ骨によるアーチファクトで見えにくい場合も多いので、今回のように冠状断像(や矢状断像)を組み合わせて見ていくことが非常に重要となります。

また、今回は一塊となった脳出血として認めましたが、脳挫傷は上のイラストのように、CTで高吸収の点状出血として認められることがあります。

時間が少し経過すると周囲に低吸収域の浮腫性変化を認めてきますので、低吸収の中に高吸収域が混在し、

  • ごま塩状(salt & pepper)

と呼ばれることがあります。

関連:脳挫傷とは?症状やCT画像、治療方法をわかりやすく解説!

その他所見:右優位に両側小脳半球に陳旧性脳梗塞あり。

【頭部】症例5の動画解説


お疲れ様でした。

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